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『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


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46/80

第46話 侵入者

【保有DP:93】


【侵食率:3.5%】


【ダンジョンランク:D】


【配下モンスター】


・スイ(ヒューマノイドスライム)×1

・リリス(原初のアラクネ)×1

・シャドウバット×1

・ゴブリン×11

・ポイズンスライム×3

・洞窟ネズミ×6


 侵略当日。


 俺たちは夜明けと共に行動を開始した。


 もちろん俺自身が移動するわけではない。ダンジョンコアである以上、身体を持っていても本体はここにある。だから今回も配下を通して戦うことになる。


 もっとも、不便だとは思わなかった。

 シャドウバットの視界共有がある。

 スイとリリスとの意識接続もある。


 戦場全体を把握できる今の俺は、むしろ普通の人間より広い視野を持っていると言っていい。

 森の中を進む軍勢を見ながら、俺は最後に作戦を確認する。


 先頭はゴブリン部隊。


 その後方にポイズンスライム。


 本命はスイとリリスだ。


 敵軍と正面から消耗戦をするつもりはない。ゴブリンたちが敵を引き付けている間に、本隊がコアへ到達する。それが今回の作戦だった。


 やがて見慣れた洞窟が見えてくる。


 シャドウバットが発見した、もう一つのダンジョン。


 入口には二体のゴブリンが立っていた。

 見張りだろう。

 だが反応が遅い。

 こちらを発見した時には既に距離が近すぎた。


「ギッ?」


 間の抜けた声を上げた次の瞬間、先頭のゴブリンが棍棒を振り下ろす。


 鈍い音が響き、敵ゴブリンの頭蓋が砕けた。

 もう一体は慌てて洞窟内へ逃げ込もうとする。

 だが、その肩へ洞窟ネズミが飛び付いた。


 悲鳴。


 転倒。


 そして複数のゴブリンが群がる。

 数秒後には動かなくなっていた。

 あっさりしたものだった。

 俺はその様子を見ながら思う。


 やはり弱い。


 少なくとも入口警備の質は、こちらの方が上らしい。


 軍勢はそのまま洞窟内へ侵入する。

 薄暗い通路。

 湿った空気。

 構造は既に把握済みだ。

 迷うことはない。

 だが侵入から数分後、ようやく相手側も異変に気付いたらしい。

 奥の方から慌ただしい足音が響いてくる。


 ゴブリンだ。


 十体以上。


 さらに奥からも続々と集まってくる。

 その光景を見て、俺は少し感心した。

 数だけは本当に多い。

 まともな訓練もしていないのに、よくこれだけ集めたものだ。


 もっとも、それだけだった。


 敵ゴブリンたちは統率もなく突撃してくる。

 武器を振り回しながら叫び、ただ目の前の敵へ飛び掛かる。


 一方でこちらのゴブリンたちは違った。


 先頭が受け止める。

 左右へ散る。

 後続が横から殴る。


 たったそれだけのことだが、戦況は一方的だった。

 棍棒が振り下ろされる。

 敵が倒れる。

 そこへ別の個体が追撃する。

 数は相手が上だ。

 だが混乱している。

 戦い方を知らない。

 訓練施設の成果は予想以上だった。


「へぇ」


 思わず感心する。

 ゴブリンでも鍛えればここまで変わるらしい。


 戦闘が激化する中、スイとリリスは予定通り主戦場を迂回していた。

 敵ゴブリンの大半は前線へ集まっている。

 ならば後方は手薄になる。

 当然の話だ。


 リリスが糸を使って天井付近を移動し、その下をスイが滑るように進む。

 誰にも見つからない。

 誰も気付かない。

 まるで影だった。

 そのまま二人は最深部へ近付いていく。


 そして。


 シャドウバットの視界が目的地を捉えた。


 赤く輝くダンジョンコア。


 その前に立つ緑髪の少女。


 彼女はようやく状況を理解したらしく、青ざめた顔で通路の奥を見つめていた。

 肩は小刻みに震え、握り締めた拳にも力が入っていない。

 逃げ場のない最深部で、自分のダンジョンへ迫る足音を聞き続けていたのだろう。


「どうして……?」


 震える声が聞こえる。


 その声には困惑だけではなく、怯えが滲んでいた。


「どうして攻めてくるの……?」


 今にも泣き出しそうな表情だった。


 視線は通路の闇へ向けられているが、その瞳は明らかに恐怖に揺れている。


 自分が狙われる側になるなど考えたこともなかったのかもしれない。


 あるいは、ダンジョン同士が争う現実を理解していても、それが今日、自分の身に降りかかるとは思っていなかったのだろう。


 逆に聞きたい。


 なぜ攻められないと思ったのか。


 弱い者が狙われる。

 価値のあるものが奪われる。

 生き残るために相手を踏み台にする。

 それは残酷でも何でもない。


 ただの現実だ。


 少なくとも俺はそうして生き残ってきた。


 恐怖に顔を歪める少女と、その姿を冷静に観察する俺。そこにある温度差はあまりにも大きかった。


 そして今。


 スイとリリスが、少女のいる最深部へ足を踏み入れた。

 静まり返った空間に、侵入者の足音だけが響く。


 少女の身体がびくりと震える。


 一方で俺は、目の前のダンジョンコアをどう奪うか、それだけを考えていた。

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