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『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


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39/80

第39話 収穫

【保有DP:54】


【侵食率:3.2%】


【ダンジョンランク:D】


【配下モンスター】

・スイ(ヒューマノイドスライム)×1

・リリス(原初のアラクネ)×1

・シャドウバット×1

・ゴブリン×2

・ポイズンスライム×1

・洞窟ネズミ×2


 新人冒険者たちは逃げるゴブリンを追い掛けていた。


「待て!」


「逃がすな!」


 剣士が先頭を走る。

 足にはまだ毒が残っている。

 軽いものだ。

 だが確実に動きを鈍らせていた。

 それでも本人は気付いていない。

 新人だからだ。


 経験が足りない。


 だから追う。


 だから罠に掛かる。


 ここまでは想定通りだった。焦りを煽り、判断力を削れば足元への注意は薄れる。

 先頭のゴブリンが角を曲がった。

 剣士も続く。

 その瞬間。


 床が消えた。


「え?」


 間抜けな声だった。

 次の瞬間には落下していた。


 ドガッ!


 鈍い音。


 悲鳴。


「ぎゃあああああっ!!」


 落とし穴。

 深くはない。

 だが十分だ。

 脚は折れたらしい。

 立ち上がれない。


 新人パーティーの前衛が一瞬で戦闘不能になった。


 前衛を穴に落とし、後衛を救助へ向かわせる。連携を逆手に取るための配置だ。


「大丈夫か!?」


 弓使いが叫ぶ。

 魔術師も慌てて駆け寄る。


 その隙。


 天井から紫色の影が落ちた。


 スイだ。


 人型となったスイは音もなく降下する。

 着地。

 そして伸びる。

 腕が。

 いや、身体そのものが。

 粘液の鞭が魔術師の首へ巻き付いた。


「なっ――」


 引く。

 一瞬だった。

 魔術師の身体が宙へ浮く。

 そのまま暗闇へ消える。


「うわああああっ!」


 悲鳴。

 短い。

 数秒後には静かになった。


 孤立した後衛から狩る。反撃手段を減らせば後は崩れるだけだ。


 俺はDP表示を見る。



【冒険者を捕食】


【DP+41】


【保有DP:95】



 良い。

 やはり新人でもそれなりのDPになる。


 記憶も流れ込んできた。

 だが大したものはない。

 新人の知識だ。

 今となっては価値が低い。


 俺は即座に整理を終える。

 弓使いの顔色が変わった。


「逃げるぞ!」


 正しい判断だった。

 新人としては百点だ。

 だが遅い。


 既にダンジョンの中に入り過ぎている。

 洞窟ネズミが走る。

 視線を誘導する。

 ゴブリンが姿を見せる。

 逃げる。

 追わせる。

 単純だ。

 だが効果的だった。

 冷静さを失っていた。


 見える獲物を用意し続ければ、人は安全な退路より目の前の脅威を追ってしまう。


「くそっ!」


 弓使いが矢を放つ。

 命中。


 ゴブリンが倒れる。


「ギャッ!」


 死んだ。


 だが問題ない。

 十分働いた。

 むしろ期待以上だ。


 囮の役目は果たした。ここで足を止めさせれば十分だ。


 その隙をスイは見逃さない。

 床を滑る。

 一瞬で距離を詰める。

 弓使いが振り向く。


 遅い。


 紫色の腕が胸を貫いた。


「がっ……」


 口から血が溢れる。

 そのまま身体が取り込まれていく。



【冒険者を捕食】


【DP+38】


【保有DP:133】



 残るは一人。

 落とし穴の底にいる剣士だった。

 脚は折れている。

 逃げられない。

 戦えない。


 生き残る方法もない。

 剣士はようやく理解したらしい。

 青ざめた顔で周囲を見回す。


「なんなんだよ……」


 返事はない。

 あるわけがない。

 俺はダンジョンだ。

 侵入者へ説明する義務などない。


 ここまで来れば狩りは終盤だ。逃げ道も仲間も残していない。


 スイが穴の縁へ立つ。

 見下ろす。

 剣士が震える。


「やめろ……」


 スイは首を傾げた。


「ごはん?」


 そして飛び降りた。

 悲鳴。

 数秒。

 それで終わりだった。



【冒険者を捕食】


【DP+42】


【保有DP:175】



 新人三人。


 全滅。


 こちらの損害はゴブリン二体。

 十分すぎる結果だった。

 俺は戦場を見渡す。


 血。


 悲鳴。


 恐怖。


 そして捕食。


 全てが予定通りだった。

 以前ならスイ一体に頼るしかなかった。

 だが今回は違う。


 ゴブリンが誘導した。


 ポイズンスライムが足を止めた。


 洞窟ネズミが視線を逸らした。


 そしてスイが仕留めた。


 誰か一人の力ではない。

 ダンジョン全体で殺したのだ。

 その事実に満足する。


「あるじ」


 スイが戻ってくる。

 少し嬉しそうだった。

 俺は頷いた。


「ああ。よくやった」


 そして視線をゴブリンの死体へ向ける。

 いや。

 死体ではない。

 既にDPへ還元されている。


 失ったのは二体。

 だが人間から得たDPは121。


 十分黒字だった。

 むしろ安い。

 思った以上に安い。


 配下を失ったのに、何も感じない。

 悲しみはない。

 怒りもない。

 必要な損失だった。

 ただそれだけだ。


 ゴブリンは駒だ。


 優秀な駒だ。

 ならば増やせばいい。


 もっと。


 もっと大量に。

 もっと効率よく。

 俺は管理画面を開く。



【保有DP:175】



 数字を見て自然と笑みが浮かんだ。

 次は何を増やそうか。


 ゴブリンか。


 ポイズンスライムか。


 それとも別の何かか。

 考えるだけで楽しい。

 どうやら俺は、人間だった頃には戻れないらしい。


 だが構わない。

 今の俺はダンジョンマスターだ。

 侵入者を資源へ変え。

 配下を増やし。

 ダンジョンを育てる。


 そのためなら何人死のうが関係ない。


 俺は次の投資先を考えながら、静かに管理画面を眺め続けた。

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