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『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


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38/80

第38話 初陣

【保有DP:54】


【侵食率:3.2%】


【ダンジョンランク:D】


【配下モンスター】


・スイ(ヒューマノイドスライム)×1

・リリス(原初のアラクネ)×1

・シャドウバット×1

・ゴブリン×3

・ポイズンスライム×1

・洞窟ネズミ×2


 新人冒険者三人がダンジョンへ近付いていた。


 剣士。

 弓使い。

 魔術師。


 典型的な新人パーティーだ。

 装備も安物。

 歩き方も未熟。

 女剣士の討伐隊とは比べるまでもない。


 正直、スイだけで終わる相手だった。

 だが今回は違う。

 目的は討伐ではない。

 実験だ。

 訓練の成果を確認する。

 使える駒かどうか見極める。

 そのための初陣だった。


「スイは待機だ」


「わかった」


 少し不満そうだった。

 だが従う。

 リリスも静かに壁際へ下がる。

 今回の主役ではない。

 新人冒険者たちは何も知らず第一階層へ入ってきた。

 ひんやりと湿った空気が肌にまとわりつく。

 岩壁からは水滴がぽたり、ぽたりと落ち、薄暗い通路に反響していた。


「普通のダンジョンだな」


「失踪者が出てるって聞いたけど」


「噂だろ」


 笑いながら進む。

 警戒心が薄い。

 実に新人らしい。

 先頭の剣士が通路を進む。

 靴底が湿った地面を踏むたび、ぺちゃりと小さな音が響く。

 その直後。

 足元から小さな影が飛び出した。


「うおっ!?」


 洞窟ネズミだ。

 攻撃ではない。

 ただ横切っただけ。

 だが新人には十分だった。

 耳元をかすめるような素早い足音に、一瞬だけ視線が逸れる。


 その隙。


 通路脇へ潜んでいたポイズンスライムが飛び出した。

 ぶより、と粘つく音を立てながら剣士の足へ絡み付く。


「なっ!?」


 剣士の足へ張り付く。

 毒そのものは弱い。

 だが新人には脅威だ。

 鼻をつく刺激臭が立ち上り、剣士の顔が引きつった。


「離れろ!」


 弓使いが叫ぶ。

 慌てて剣で叩き落とす。

 ぐしゃり、と嫌な感触と音が通路に響いた。

 その時には隊列が崩れていた。

 俺は少し感心した。

 訓練の成果が出ている。

 単体では雑魚だが、連携すると違う。

 そこへゴブリンたちが現れた。


 暗がりの奥から荒い息遣いが聞こえ、湿った獣臭が流れてくる。


「ギャッ!」


「ゴブッ!」


 三体同時。

 訓練前なら突撃して終わりだっただろう。

 だが今は違う。


 二体が前へ出る。

 一体が回り込む。

 新人剣士が対応に追われた。


「くそっ!」


 棍棒が風を切る。

 ぶん、と鈍い音を立てて振り下ろされた一撃を、剣士は慌てて受け止めた。

 金属と木がぶつかり、甲高い衝突音が狭い通路に響く。

 威力は低い。

 だが数がある。

 弓使いも援護へ回る。

 弦が鳴り、矢が空気を裂いて飛ぶ。

 魔術師は詠唱を始める。


 新人たちは完全にゴブリンへ意識を向けていた。

 そこで俺は理解する。


 使える。


 十分に使える。

 新人相手なら戦力になる。

 もちろん限界もあった。

 魔術師の火球が飛ぶ。

 熱風を伴った赤い光が薄暗い通路を照らした。

 直撃。

 ゴブリン一体が吹き飛ばされた。


「ギャアッ!」


 断末魔が響き、焦げた肉の臭いが広がる。

 壁へ叩き付けられる。

 動かない。

 死んだ。


 だが俺は何も感じなかった。

 悲しみもない。

 怒りもない。

 期待通りだったからだ。

 新人三人を相手に一体で時間を稼いだ。

 十分仕事をした。

 むしろ優秀だ。


「なるほど」


 損失一。

 だが敵は消耗した。

 剣士は毒を受けている。

 魔術師は魔力を消費した。

 弓使いも矢を使った。

 収支は悪くない。


 残った二体のゴブリンも下がる。

 無理に戦わない。

 訓練で覚えた行動だった。


 新人たちは追い掛ける。

 当然だ。

 逃げる雑魚を見逃す理由がない。

 足音が通路に反響し、焦り混じりの呼吸が湿った空気を震わせる。


 そして、その先にあるものも知らない。

 俺は静かに笑った。


 落とし穴。


 そしてスイ。

 ようやく出番だ。

 雑魚が削る。

 罠が削る。

 最後に強者が狩る。

 理想通りの流れだった。


 新人冒険者たちは気付いていない。

 自分たちが戦っている相手がゴブリンではないことを。

 このダンジョンそのものと戦っていることを。

 冷たく淀んだ空気、闇に潜む気配、通路そのものが牙を剥いていることを。


 その事実にまだ誰も気付いていなかった。

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