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『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


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35/80

第35話 資源

【保有DP:24】


【侵食率:3.2%】


 新人冒険者3人組は、第1階層の最奥部まで到達していた。

 監視画面の中で、3人は上機嫌に会話を続けている。


「思ったより当たりだったな」


「ああ、魔石も手に入ったし」


「新人向けって聞いてたけど、結構いいダンジョンかも」


 俺は静かにその様子を見ていた。

 改装は成功だった。

 宝箱は機能している。

 小部屋も機能している。

 蜘蛛糸による演出も悪くない。

 少なくとも冒険者を奥へ誘導する効果は十分に証明された。

 そして、それが確認できた以上――。

 もう用はない。


「確認は終わりましたね」


 リリスが言う。


「ああ」


 俺は頷いた。


「全員回収する」


 スイが嬉しそうに跳ねる。


『ぷるっ!』


 シャドウバットが翼を広げる。


『キィィッ』


 次の瞬間だった。

 天井付近に潜んでいたシャドウバットが急降下する。

 黒い影が剣士の視界を塞いだ。


「なっ――!?」


 反応した時には遅い。

 その隙を突いてスイが足元へ滑り込む。


『ぷるるっ!』


 紫色の身体が槍使いへ絡み付く。


「しまっ――」


 毒が流し込まれる。

 顔色が変わる。

 足が震える。

 戦闘経験の浅い新人では対処できない。

 魔術師が慌てて杖を構えた。

 しかしその腕へ白い糸が巻き付く。


「え?」


 振り向いた先にいたのはリリスだった。

 巨大な蜘蛛の下半身。

 人の上半身。

 赤い瞳。

 新人冒険者が相手にするには絶望的な存在だった。


「ば、化け物……」


 魔術師の声が震える。

 その時点で勝負は決まった。

 数分後。

 3人は床へ倒れていた。

 戦闘と呼ぶには一方的すぎる。

 女剣士たちのパーティと比べれば、話にもならなかった。


「終了です」


 リリスが報告する。

 俺は短く頷いた。


「捕食する」


 それだけだった。

 生かしておく理由はない。

 逃がす理由もない。

 資源は回収するためにある。

 倒れた3人の身体から黒い霧が立ち昇る。

 その霧は床を伝い、ゆっくりとコアへ流れ込んできた。


 捕食。

 ダンジョンマスターである俺の本質。

 肉体。

 魔力。

 魂の欠片。

 すべてを喰らい、自らの糧にする。


 新人冒険者たちの記憶も同時に流れ込んでくる。

 断片的な人生。

 冒険者登録の日。

 酒場で仲間を集めた日。

 初めて依頼を達成した日。

 小さな成功。

 小さな夢。


 だが――。


 価値はなかった。

 強者の戦闘技術はない。

 特別な知識もない。

 貴族の情報もない。

 世界の秘密もない。

 手に入ったのは平凡な記憶ばかりだった。


「なるほどな」


 俺は呟く。


「弱者は情報にならないか」


 女剣士を捕食した時は違った。

 戦闘技術。

 知識。

 経験。

 多くのものが手に入った。

 だが新人では話にならない。

 もちろん不満はなかった。

 今の俺に必要なのは知識ではない。

 資源だ。


【DPを獲得しました】

 +40DP ×3


「120DP……」


 現在保有DP。

 144。

 ゴブリンなど比較にならない。

 弱い。

 情報もない。

 だがDPだけは十分だった。


 つまり――。


 冒険者は優秀な資源ということだ。


「面白い」


 自然と笑みが浮かぶ。


 新人3人だけで120DP。

 これを繰り返せば成長速度は比較にならない。


 1000DP。

 10000DP。

 その先ですら見えてくる。


「ご主人様」


 リリスが声を掛ける。


「どう使いますか?」


 俺は少し考えた。

 そして答える。


「増やす」


「増やす?」


「ああ」


 スイ1人では足りない。

 リリス1人でも足りない。

 シャドウバットだけでも足りない。


 もっと必要だ。

 もっと大量に。

 もっと安価に。

 もっと使い潰せる戦力が。

 ダンジョンとは本来そういうものだ。


 1体の強者ではない。


 無数の魔物が侵入者を削り、追い詰め、喰らう場所。

 なら俺もそうする。


「次はモンスターを増やすぞ」


 その言葉にリリスが笑う。

 スイも嬉しそうに跳ねた。

 シャドウバットも鳴く。

 そして俺は改めて理解した。

 冒険者は敵ではない。

 獲物ですらない。

 資源だ。

 強くなるための材料。高みへ至るための糧。

 なら遠慮する理由などない。


 俺は全てを喰らう。


 もっと強くなるために。

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