第18話 切り札
【保有DP:125】
【ダンジョンランク:D】
【配下モンスター】
・スイ(ヒューマノイドスライム)×1
・ゴブリン×1
・シャドウバット×1
魔術師を失った討伐隊は三人になった。
普通なら撤退を考える状況だ。
だが女剣士は違った。
彼女は立ち止まり、ここまでの戦闘を整理している。
神官が死んだ場所。
魔術師が消えた場所。
シャドウバットが姿を見せた位置。
罠の配置。
通路の構造。
その全てを繋ぎ合わせるように視線を動かしていた。
嫌な予感がした。
こういう相手は厄介だ。
感情ではなく情報で動く。
そして厄介な予感は当たるものらしい。
「盾役」
「はい」
「前を見なくていい」
女剣士が言った。
「壁を見ろ」
盾役が驚いた顔をする。
「壁ですか?」
「敵は壁と天井を利用する」
「前は弓使いが見る」
その瞬間、俺は理解した。
まずい。
こいつは戦場を理解し始めている。
討伐隊は隊列を変更した。
弓使いが前方警戒。
盾役が左右警戒。
女剣士が後方警戒。
死角を潰している。
今までのような奇襲は通らない。
それでも今の俺にはこれしかない。
俺はスイへ命令を送った。
狙え。
スイが壁へ溶け込む。
静かに移動する。
そして盾役の背後へ回ろうとした瞬間――
「そこだ!」
矢が飛んだ。
鋭い一撃。
スイの肩を貫き紫色の液体が飛び散った。
「っ!」
スイが後退する。
初めてだった。
人型になってから初めてまともに攻撃を受けた。
討伐隊はすぐに動く。
弓使いが追撃。
盾役が前進。
女剣士が包囲位置を作る。
想像以上に連携が速い。
スイは逃げる。
だが今度は追われる側だった。
俺はすぐにシャドウバットへ指示を出す。
視界妨害。
しかし。
「邪魔だ」
女剣士の剣が閃く。
黒い翼が宙を舞った。
シャドウバットが床へ落ちる。
致命傷ではない。
だが戦闘不能だ。
監視役を失った。
状況が一気に悪化する。
さらに盾役がゴブリンを発見した。
「いたぞ!」
一撃。
本当に一撃だった。
ゴブリンは盾に叩き潰される。
【配下喪失】
頭の中へ表示が流れる。
まずい...
討伐隊は止まらない。
まっすぐ奥へ進み始める。
コアを目指して。
最短距離で。
俺は舌打ちしたくなった。
今までの冒険者なら...
恐怖した。
混乱した。
だがこいつらは違う。
目的を見失わない。
だから強い。
数分後。
討伐隊は第二階層の奥へ到達する。
そして。
「見つけた」
女剣士が呟いた。
視線の先。
そこには俺のコアがあった。
距離は二十メートルほど。
近い。
近すぎる。
ここまで接近されたのは初めてだった。
スイが立ち塞がる。
だが傷を負っている。
盾役も健在。
弓使いも生きている。
勝率は高くない。
このまま戦えば負ける。
その事実を俺は冷静に認識した。
だから選ぶ。
温存なんて考えている場合じゃない。
【眷属召喚】
新しい画面が開く。
【10DP召喚】
・一般眷属
【50DP召喚】
・上級眷属確立上昇
【100DP召喚】
・レア以上出現率上昇
100DP召喚は運要素がある。
だから今まで使わなかった。
必要な戦力を確実に得るなら通常召喚の方が優秀だからだ。
だが今は違う。
欲しいのは逆転の一手。
この状況をひっくり返す切り札だった。
【100DP召喚】
【DP-100】
【保有DP:25】
巨大な魔法陣が展開される。
第二階層全体を覆うほどの光。
討伐隊も足を止めた。
「何だ……?」
弓使いが息を呑む。
女剣士も表情を変える。
そして魔法陣の中央から、一つの影がゆっくりと姿を現した。
【レア個体確定】
【上位眷属を抽選中】
【――――】
表示が乱れる。
今まで見たことがない反応だった。
嫌な予感と期待が同時に膨らむ。
やがて光が弾けた。
現れた存在を見た瞬間。
討伐隊も。
スイも。
そして俺自身も言葉を失った。




