第17話 狩る者と狩られる者
【保有DP:65】
【ダンジョンランク:D】
【配下モンスター】
・スイ(ヒューマノイドスライム)×1
・ゴブリン×1
・シャドウバット×1
神官を失った討伐隊は、その場で隊形を組み直していた。
先頭に盾役。
中央に魔術師と弓使い。
最後尾に女剣士。
互いの距離は近く、死角も極力潰している。
新人冒険者なら恐慌状態になっていただろう。
だが彼らは違った。
損害を受けても冷静に立て直している。
だからこそ厄介だ。
「報告通りじゃないな」
盾役が低く呟く。
「少なくとも通常のダンジョンではありません」
魔術師が周囲を警戒しながら答えた。
「神官を一瞬で引きずり込んだ魔物も異常です」
「魔物だけじゃない」
女剣士が言う。
全員の視線が集まる。
「何かが指揮している」
その言葉に空気が変わった。
俺は少しだけ感心する。
ここまでで気付くか。
優秀だな。
「ダンジョンマスターか?」
盾役が聞く。
「おそらく」
女剣士は断言しなかったが表情は確信に近い。
「魔物が強いんじゃない」
「戦い方が人間に近すぎる」
正解だった。
先に殺したい。
俺はシャドウバットを飛ばす。
小さな黒い影が天井付近を移動する。
弓使いが即座に反応した。
「上!」
矢が放たれる。
シャドウバットは回避。
だがそれで十分だった。
全員の視線が上を向く。
その一瞬。
スイが動いた。
壁から伸びた腕が盾役の足首へ絡み付く。
「っ!?」
盾役が引き倒される。
しかし討伐隊は早かった。
「魔術師!」
女剣士が叫ぶ。
火球が飛ぶ。
スイは即座に腕を切り離して後退した。
直撃こそ避けたが、完全な奇襲失敗だったのに俺は少し驚く。
今までなら一人死んでいた。
連携が良い。
想像以上に良い。
「壁だ!」
女剣士が叫ぶ。
「壁も天井も全部敵だと思え!」
討伐隊は移動を始める。
しかも速度が速い。
留まらない。
警戒しながらも進む。
なるほど。
受け身にならないか。
正しい判断だ。
その時、シャドウバットが新たな情報を伝えてきた。
魔術師が少しだけ足を引きずっている。
どうやら森を移動した際の怪我が残っているらしい。
小さい。
本当に小さい隙だ。
討伐隊が狭い通路へ入る。
前衛と後衛が縦に並ぶ。
その瞬間。
俺はゴブリンへ命令を出した。
飛び出せ。
ゴブリンが横穴から飛び出す。
「敵!」
盾役が反応し剣が振り下ろされる。
ゴブリンは一撃で吹き飛んだ。
最初から捨て駒だ。
重要なのはその後。
全員の意識がゴブリンへ向いた。
一秒にも満たない時間。
だが十分だった。
スイが魔術師の背後から現れる。
細い腕が首へ絡み付く。
「なっ――」
魔術師が声を上げる。
そのまま壁の中へ引きずり込まれた。
悲鳴。
絶叫。
そして沈黙。
全てが終わるまで五秒も掛からなかった。
討伐隊は追わない。
追えない。
追えば隊列が崩れる。
それを理解しているからだ。
だが理解していても、仲間が消える光景は精神を削る。
【侵入者を撃破】
【DP+60】
【保有DP:125】
残り三人。
女剣士。
盾役。
弓使い。
そして気付く。
「狙われているのは後衛だ」
女剣士が静かに言う。
「役割を理解して殺している」
誰も反論しない。
「間違いない」
女剣士は剣を握り直した。
「ダンジョンマスターがいる」
その声には恐怖よりも警戒が混じっていた。
ついに敵はこちらをただの魔物ではなく、一人の知性体として認識した。なら次からはもっと厄介になる。
だが構わない。
こちらも新しい戦力を手に入れる準備ができている。
俺は125DPを確認しながら、新たに解放された眷属召喚へ意識を向けた。




