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『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


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第15話 初めての眷属召喚

【保有DP:0】


【ダンジョンランク:D】


【配下モンスター】


・スイ(ヒューマノイドスライム)×1


・ゴブリン×1


 スイの進化が終わってから数時間後、俺は討伐隊について整理していた。

 神官から奪った記憶によれば、次に来るのは本格的な討伐部隊だ。人数は五人から七人程度。全員が新人ということはなく、少なくとも数名はDランク相当の実力者になるらしい。


 今の戦力では厳しい。

 スイは強いが一人しかいない。

 ゴブリンもいるが戦力としては心許ない。

 何よりDPがゼロだ。

 ダンジョンが成長するたびに財布が空になるのはどういう仕様なのだろうか。

 そんなことを考えていると、近くでスイが冒険者の装備を眺めていた。

 人型になった影響なのか興味の対象が増えている。

 剣を持ち上げたり、防具を触ったり、神官の杖を不思議そうに見つめたりしていた。


「あるじ」


 突然、スイがこちらへ意識を向ける。


「これ、つかえる」


 そう言いながら神官の杖を持ち上げる。

 次の瞬間、杖の先に淡い光が灯った。

 俺は思わず表示を確認する。


【名称個体:スイ】

【魔力適性を確認】

【神聖属性:微弱】


 少し驚いた。

 人型になっただけではないらしい。

 吸収した人間たちの影響が残っているのかもしれない。

 それは今後の大きな武器になりそうだった。

 その時、入口付近に反応が現れる。

 冒険者ではない。

 人間より遥かに弱い反応だ。

 森の動物。

 鹿のような魔物が二匹、偶然ダンジョンへ迷い込んできたのだ。

 俺はすぐにスイへ命令する。

 数分後には狩りが終わっていた。


【魔獣を撃破】

【DP+8】

【保有DP:8】


 少ない。

 だが今は贅沢を言えない。

 さらに数時間後、もう一匹。


【魔獣を撃破】

【DP+7】

【保有DP:15】


 そこで新機能の画面が反応した。


【眷属召喚】

【必要DP:10】

【実行可能】


 俺はしばらく考える。

 本来なら50DPを貯めてゴブリンを増やすべきだろう。

 だが討伐隊が来るまで時間は少ない。

 未知の戦力を引けるなら試す価値はある。

 俺は実行を選択した。


【眷属召喚】

【DP-10】

【保有DP:5】


 魔法陣が現れる。

 光が集まり、一つの影が形成されていく。

 ゴブリンか。

 コボルトか。

 あるいはスライムか。

 そう思っていた俺の予想は外れた。


 現れた影は異様だった。


 小さな体にもかかわらず、周囲の光を吸い込むような漆黒。

 静かに広がる翼。

 闇の中に浮かぶ赤い双眸。

 猫ほどの大きさしかないはずなのに、その存在感だけは妙に強い。


【レア個体を確認】

【シャドウバット】


 一瞬、思考が止まった。

 そして表示を見直す。

 もう一度見直す。

 見間違いではない。


 レア個体。


 初回召喚で引き当てる確率など分からないが、少なくともありふれた結果ではないはずだ。

 俺はすぐに詳細を確認する。

 そこでさらに驚かされた。

 シャドウバットは戦闘能力こそ高くない。

 だが代わりに、広範囲の索敵と偵察に特化していた。


 暗闇での隠密行動。

 遠距離監視。

 視界共有。

 危険察知。


 どれも今のダンジョンに欠けていた能力ばかりだ。

 正直、ゴブリンが一体増えるより価値がある。

 討伐隊との戦いで重要なのは、必ずしも戦力の総量ではない。


 敵を先に見つけること。

 敵の構成を知ること。

 敵の動きを把握すること。

 その情報があるだけで、罠の精度も迎撃の成功率も大きく変わる。

 むしろ弱小ダンジョンである今だからこそ、索敵能力は何より重要だった。


 黒い蝙蝠は静かに羽を広げる。

 そして迷うことなくスイの肩へ止まった。

 スイは少し嬉しそうに頭を撫でている。

 どうやら相性は悪くないらしい。


 俺は試しに周囲の偵察を命じた。

 シャドウバットは鳴き声一つ上げず飛び立つ。

 その姿は驚くほど見えにくかった。

 森の影へ溶け込むように消え、数秒後には完全に見失う。

 だが次の瞬間、俺の意識に別の視界が流れ込んできた。


 木々の上空。

 獣道。

 茂みの奥。


 離れた場所の景色が次々と映し出される。

 俺は思わず息を呑んだ。


 これまで入口付近の反応を感知することしかできなかった俺にとって、その能力は革命的だった。


 森全体が手のひらの上に広がったような感覚。

 レア個体の名は伊達ではない。

 この一体だけで、ダンジョンの情報収集能力が別物になった。


 俺は新たな配下を見ながら考える。

 討伐隊は強い。

 正面から勝てる保証はない。

 だが情報があれば話は別だ。

 相手を知り、罠を張り、分断し、一人ずつ殺す。

 今までとやることは変わらない。

 ただ規模が大きくなるだけだ。

 そしてその時だった。

 シャドウバットの視界を通して、俺は森の外れに集まる武装集団を発見した。


 討伐隊は六人

 剣士

 盾役

 弓使い

 魔術師

 神官

 そして先頭に立つ一人の女剣士


 明らかに今までの冒険者とは格が違う。

 もしシャドウバットがいなければ、彼らがダンジョンへ接近するまで気付けなかっただろう。


 だが今は違う。

 敵はまだ遠い。

 迎撃準備の時間がある。

 その事実だけで、このレア個体を召喚した価値は十分すぎた。


【討伐隊を確認】


 予定より早い。

 俺は静かに情報を整理する。

 準備期間は終わった。


 次の戦いは、このダンジョンにとって初めての本格的な防衛戦になる。

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