第13話 条件達成
【保有DP:20】
【ダンジョンランク:D】
【配下モンスター】
・スイ(ヴェノムスライム)×1
・ゴブリン×1
第二階層へ続く階段を下りながら、戦士と神官は明らかに焦り始めていた。
仲間を失った直後にもかかわらず、ゴブリンは死体を抱えて逃げ続けている。追うべきではないと理解していても、ここで見失えば何も持ち帰れない。調査失敗どころか、自分たちも失踪者の一部になるかもしれない。
その不安が二人の判断を鈍らせていた。
俺は第二階層の入口付近で待機するスイへ意識を向ける。今の目的は勝つことではない。確実に一人ずつ減らすことだ。
焦る必要はない。
ここは俺のダンジョンであり、侵入者は出口へ向かうより奥へ進む方が簡単な状況に置かれている。
戦士が先頭。
神官が後方。
その隊列を確認した瞬間、スイが天井から滑り落ちた。
狙いは戦士。
毒液を纏った身体が肩口へ直撃し、鎧の隙間へ潜り込む。
「ぐあっ!?」
戦士は反射的に剣を振るうが遅い。進化したスイの毒は既に体内へ侵入している。
さらに足元には階段を伝って流れた毒液が広がっており、体勢を崩した戦士は膝をついたまま立ち上がれない。
「回復を!」
神官が叫ぶ。淡い光が戦士を包み、傷は塞がる。が、毒は消えない。神官もそれに気付いたのだろう。回復魔法を重ねながら表情を青ざめさせていく。
戦士の呼吸は荒くなり、握っていた剣が床へ落ちた。
そして数秒後、その身体は完全に動かなくなる。
【侵入者を撃破】
【DP+40】
【保有DP:60】
神官は立ち尽くしていた。
仲間の死を受け入れられないのか、必死に回復魔法を掛け続けている。
その様子を見ながら、俺は戦士の死体を確認する。
鎧の状態は比較的良い。武器も使えそうだ。ゴブリンへ与えれば多少は戦力になるだろう。資源化する前に回収する価値がある。そんなことを考えている間にも、神官は完全に孤立していた。周囲への警戒は薄れ、視線は戦士へ固定されている。
だから簡単だった。スイが背後へ回る。
神官が気付いた時には目の前まで迫っている。
「ま、待っ――」
最後まで言い切ることはできなかった。
紫色の身体が跳ねる。
首元へ絡み付き、毒が流れ込む。
神官は必死に引き剥がそうとするが、進化したスイの力は予想以上に強くなっていた。
抵抗は長く続かない。
やがて膝をつき、そのまま床へ倒れ込む。
【侵入者を撃破】
【DP+40】
【保有DP:100】
これで全滅。
第二階層に静寂が戻る。
俺はすぐに死体の確認へ移った。
神官の装備。
回復魔法の知識。
戦士の剣。
防具。
回収できるものは多く、特に記憶は重要だった。冒険者たちがどこから来たのか。ギルドがどこまで情報を掴んでいるのか。次は誰が来るのか。知れるなら知っておきたい。
【記憶取得可能】
迷わず実行し、大量の情報が流れ込む。
街の様子。
酒場での会話。
依頼書。
そして冒険者ギルド。
その中で気になる情報があった。失踪事件が予想以上に問題視され始めている。
調査隊。
探索者。
そして今回の三人ともなれば、短期間で行方不明者が増えすぎていた。
ギルド内部では既に正式討伐の話が進んでいる。
次は少人数ではない。
複数のDランク冒険者を含む討伐隊。本格的な掃討作戦になる。
少しまずいな...
時間はそれほど残されていない。
だが、こちらも得るものは得ている。
【条件達成】
【特殊個体生成機能が解放されました】
新たな表示が現れる。
さらに続く。
【名称個体『スイ』】
【ユニーク進化ルート解放】
俺は表示を見て少し考える。
討伐数。
戦闘実績。
進化回数。
どれを見ても普通のスライムではない。
システムが特別扱いするのも理解できた。
スイの未来は他の魔物とは違うらしい。
そして、その進化先を確認した瞬間、俺は思わず表示を見返した。
そこには今まで存在しなかった選択肢が並んでいたからだ。




