第4話 手始めは作業台
「ここにしましょう!」
火山マップに足を踏み入れ、しばらく歩き、
ヴィクトリアは適当な場所で荷物を下ろした。
「いい場所ですね。景色も綺麗ですし、温泉もありますし」
ティーシャがぐるりと見回す。
そこは小高い丘になっていて、
地熱で温められた地下水が、
周辺に湯だまりを沢山作っていた。
傾斜を下ると、
平野で羊たちが草を食んでいる。
「じゃあ早速、家を作るわよ!」
「ヴィクトリア様、まずは『作業台』です」
「作業台?」
腕まくりをしたヴィクトリアに、ティーシャが説明を加えた。
「何をするにも、作業台がないと始まりません。家を建造するには、何千点もの備品や建材が必要です。作業用の万能テーブルがなければ、木を加工することもできませんよ?」
「むう」
「釘と金槌くらい、リュックに入っているんでしょう?」
「魔法でシャラランと──」
「できません」
ティーシャは笑顔で否定した。
♢ ♢ ♢
「案外大変ね」
ヴィクトリアは落ちていた木切れを集め、
釘で打ち付けた。
「いい感じです。脚ができたので、次は天板ですね」
ティーシャは口に釘を咥えながら、彼女をサポートする。
はじめての大工仕事は腕にきた。
釘というものは、打ち付けるたびに曲がりに曲がり、
何度もトライしていくうちに、
十本以上の釘を無駄にしてしまった。
「はぁはぁ……、釘を発明した人は、わたくしに断罪されるべきね」
「口調が悪役になってますよ」
それでも、徐々に形になっていく。
三十分経ち、
ようやく作業台が完成した。
「できたわ! どうかしら!」
「いいと思います」
【木製の作業台】
次の作業が行える。
・つるはしの作成
・弓の作成
『鑑定スキル』で表示されたステータスボードには、何が作成できるか、詳しく解説されていた。
使い勝手はまずまずだろう。
だけど、初めての大工仕事だ。
これでいい。
ティーシャが隣で頷く。
「心配になってきたわ」
ヴィクトリアが金槌をしまいながらぼやいた。
「こんな調子で、本当に自宅ができるのかしら」
「でき上がる前に、ボクたちが干からびますか」
「物騒なこと言わないで頂戴」
ティーシャは楽しそうに笑った。
「大丈夫ですよ、ヴィクトリアさま。キャンプ場で自宅がなくて死ぬ人はいません」
♢ ♢ ♢
「──こいつは、旨そうな肉だ」
木の陰から、低い声がした。
ヴィクトリアとティーシャは振り返る。
作業台でつるはしと弓を作成し、次の作業に移ろうとしたとき、
早速〝お客さま〟がやってきた。
「あらあら、牛のモンスターさんね。ごめんなさい、ヴィクトリアの温泉郷はまだ完成していないの」
彼女が胸の位置で両手を合わせた。
「魔王軍の……手先!」
ティーシャが汗を垂らして、威嚇の姿勢をとる。
相手は、どうみても敵だった。
魔力も高そう。
よだれを垂らし、デカイ斧を持ち、
ギンギンに決まった目で、モンスターはこちらを見つめている。
「ヴィクトリアさま、危険です!」
「ぐへへ。火山帯に拠点をピン留めするとは愚かな」
モンスターは、
武器を光らせながら、ゆらりと前へ出てきた。
「ここは、泣く子も黙る火山マップだぜ? 灼熱環境に適応した、レベル五十以上のモンスターのたまり場だ」
(──まさか!)
ティーシャは告げられた言葉に、ぽっかりと口を開けた。
(レベル五十だって……!)
レベル五十といえば、王国の上級騎士でも討伐に苦労する。
ティーシャは慌てて『鑑定スキル』を発動させた。
【火山帯のミノタウロス】
レベル:52
体力:3,211
魔力:443
スキル:斧
「ぐへへ。しかもよ。お前たちの足元にある湯だまりは、タダの湯じゃねぇ。猛毒だ。戦闘で足を滑らせたが最後、体中に毒が回り、一瞬でお陀仏ってわけよ」
「なんてこと!」
「さあ、どうする? 戦って肉になるか、戦わずに肉になるか。好きな方を選べ!」




