ご近所ダンジョンさん 終
魔石が砕ける寸前で、何か暖かな物に包み込まれる。
「ご主人」
ミズモチさん? 私は声も出せないで手にも力が入りません。
魔石が砕ければ、魔物は死ぬ。
それは冒険者をしていれば常識的な話です。
そして、人外になった私も魔石が砕ければ、死にます。
そう、死ぬと思った瞬間にミズモチさんを感じて、砕けると思われた魔石が修復されていく感覚を味わいます。
うっすらと目を開けると、ミズモチさんが私の胸に、そして、私を見下ろす白鬼乙女さんの姿が見えました。
「ミズモチさん? 白鬼乙女さん?」
「ご主人!!! ご主人は僕が守るからね!」
ハッキリとした声で、ミズモチさんが告げてくれています。
意識を取り戻してわかりましたが、私のレベルが上がっています。
ミズモチさんは、だからハッキリ話せるようになったのですね。
よかったです。
「呑気なことを考えている顔をしておるのじゃ」
白鬼乙女さんの呆れたような声が聞こえます。
「どうして?」
「お主は成したのじゃよ。S級ダンジョン白夜叉姫を倒したんじゃ。あの外側は溶けて無くなってしもうたが、妾は残っておる。だから、お主にテイムされるために来てやったというのに、お主の方が死にそうではないか」
「はは、申し訳ありません」
ミズモチさんが私の魔石を包み込んで、傷を修復しながら魔力を注いでくれています。その横で、白鬼乙女さんもミズモチさんに魔力を注いでいました。
二人で協力して私を助けようとしてくれていたのですね。
ミズモチさんと白鬼乙女さんが協力して私を助けてくれるって、なんだか嬉しいですね。
なんとか、意識を取り戻せた頃には、ミズモチさんの体は手のひらサイズまで小さくなり、白鬼乙女さんの容姿も子供のように小さくなってしまいました。
「何を?」
「ごめんなさい」
「えっ?」
「ボクの体を半分あげたんだ。体の中にあったアイテムも全部使っちゃった」
「それはどういう?」
私はいつも見ているミズモチさんの体を覗き込みました。
黒くて可愛い胡麻饅頭のようなミズモチさん。
そんなミズモチさんはいつもならダンジョン内の魔力を吸収して元の姿に戻りますが、大きくなりません。
「まんじゅうは、お主に力を差し出す代わりに、己の命を半分削ったということじゃ。お主とまんじゅうは一心同体になったということじゃな」
「えええ!!! ミズモチさんは大丈夫なのですか?」
「うん。大丈夫。だけど、もうすぐ話せなくなるんだ」
「えっ?」
「力の半分をご主人にあげたから、また弱くなっちゃった」
黒いミズモチさんは、次第に色を失って白くなっていきます。
まるで出会った時のような姿に戻っていきます。
《ミズモチさんはプルプルしています》
それは久しぶりに聞く念話さんの声でした。
「うむ。レベルが初期に戻ったようじゃな。生きていることが不思議なほどじゃが、お主との結びつきが強かったために生き残ることができたのじゃろう」
説明をしてくれていた白鬼乙女さんも次第に小さくなって、五歳ぐらいの女の子になってしまいました。
ストンと座り込んでしまった。
「はは、ワシも力を使いすぎたようじゃ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
ミズモチさんが、白鬼乙女さんが私を生かして弱ってしまったところで、地響きが起きました。
「そろそろじゃな」
「えっ?」
「ボスであり、ダンジョンコアとして両方の機能を持っておった妾が倒されたことで、ダンジョンの崩壊が始まったのじゃ」
「それってこのまま動けなければ、みんな死んでしまうのでは?」
「そうじゃな。じゃが、妾はもう動けぬ。そこのまんじゅうも無理じゃろ」
ミズモチさんを見て《ミズモチさんはプルプルしています》念話さんの声で、ミズモチさんも動けない
「ならば私が踏ん張るしかありませんね」
「先に言うておくが、お主の体も普通ではない。人外化はしておるが、魔石の損傷はお主が思っておるよりも甚大な被害じゃ。二度と鬼人化はできぬかもしれぬ」
白鬼乙女さんの言葉に、私は笑って立ち上がりました。
ミズモチさんを肩に乗せて、白鬼乙女さんを抱き上げます。
「元々私は人間ですから、鬼人化など必要ないんですよ」
目はクラクラとして、立っているのがやっとなのが自分でも理解できます。
服もアイテムも全てが無くなって、ミズモチさんも白鬼乙女さんも満身創痍です。
それでも、三人で帰ることができる。
そのためなら、体のしんどさなど忘れてやります。
「仕方ないのう。チュッ」
「なっ何を!」
「妾に残された最後の魔力じゃ。お主にくれてやろう。もう意識は保てぬ。あとは託すぞ」
そう言って白鬼乙女さんは意識を失いました。
死んではいない。
そう思いたいですね。
走るので、ミズモチさんを肩から抱き上げた白鬼乙女さんの上に移動してもらって、私は二人を抱えて走り始めました。
美しかった草原は地響きで地面は割れて、走るのも一苦労です。
ガシャドクロさんと戦った一階は、地下ほどの損傷はありませんが次第に全て崩れ去ってしまうことでしょう。
いつも入ってきていた洞窟の光が見えて、私は二人を連れて生還を果たしました。
「やっ、やりました!!! もう一ミリも走りれません!!!」
私が全裸スライディングを決めて外へ飛び出すと、白鬼乙女さんのダンジョンが完全に崩壊して洞窟の入り口は無くなってしまいました。




