最終話
意識を取り戻すと私は白鬼乙女さんとミズモチさんをお腹の上に乗せたまま寝ていました。
ただ、全裸でスライディングして出てきたはずですが、私たちの上には温かいコートがかけられています。
「二人とも起きてください。そろそろ家に帰りましょう」
「ううん。まだ眠いのじゃ」
《ミズモチさんがプルプルしています》
ご近所ダンジョンさんの攻略を果たしたことで、全員が力尽きて眠ってしまいました。
「やっと起きましたね」
「えっ?」
声をかけられて見てみれば、カオリさんが私たちを見下ろしていました。
「カオリさん!」
「お迎えに来ました」
「どうして? 帰ってくるってわかったんですか?」
「何もわかっていません。毎日、ヒデオさんが帰ってこないかと迎えに来ていただけです」
「えっ? 毎日?」
カオリさんの言葉に私は1日しか経っていないと思っていました。
「一週間です。ヒデオさんがご近所ダンジョンに入られて、一週間が経ちました。何度、扉を開けて助けに行きたかったかわかりますか?」
「そんなに経っていたのですか?」
カオリさんの瞳にはたくさんの涙が浮かんでいます。
私は白鬼乙女さんをそっとコートで包んで、ミズモチさんをその上に置きます。
「お帰りなさい! ヒデオさん」
全裸の私にカオリさんが抱きつきました。
どうやらコートはかけてくれただけで、服は着ていないようです。
「はい。ただいま帰りました。カオリさん」
「どうして全裸なんですか、もう。ムードも何もないじゃないですか?」
泣き笑いと言葉が浮かびそうなカオリさんの言葉に、私も自分の姿が全裸なこと照れ笑いをします。
しかし、視界を下に向けても人外である特徴は何もなくなっていました。
人外化している時は、肌は赤くなって酒呑童子さんのようでした。
ですが、今の私は普通の肌に戻って、一片の毛も生えておりません。
「全てを出し尽くして、なんとか生きて戻ることができました」
「ふふ、そうですね。本当にお帰りなさい」
私はカオリさんが用意してくれていたコートを着て、白鬼乙女さんとミズモチさんを抱き上げました。
車の運転は、長さんがしてくれました。
「長さん!!!」
「阿部君お帰り。奥さんを一人で危険な場所に行かすわけにはいかないからね。護衛をさせてもらったよ」
「ただいま帰りました!!! ありがとうございます」
「いいさ。君の帰還を待っていたのは私だけじゃない」
長さんは家に帰るのではなく、冒険者ギルドへと車を向けてくれました。
「阿部さん! お帰りなさい!」
そう言って私を一番に迎えてくれたのは、湊静香さんでした。
「静香さん!」
「阿部さんが危険な場所に挑戦してるって聞いて、居ても立ってもいられなくて! 怪我はしていませんか? 私が治せるなら手伝います!」
「ありがとうございます。私は大丈夫なのですが、この二人を見てあげてくれますか?」
私は白鬼乙女さんとミズモチさんを静香さんに見せました。
この一年で静香さんも冒険者業を休みながらも続けて素晴らしいヒーラーに成られたのですね。
「私に任せてください」
二人を任せて、私は立ち上がります。
「師匠。お帰りなさい」
「タツヒコ君。ただいまです」
「阿部先輩お帰りなさい」
「高良君、ただいまです」
「もう、なんでウチを置いていくん! どうせなら誘ってくれてもええやん」
そう言って私を抱きしめてくれたのはハルカさんでした。
「ハルカさん!!! 私には妻がいるので!!!」
「わかっとるわ! それでも死にかけたヒデオさんが悪い!」
皆さんに迎えられて、全裸にコート一枚の私は冒険者ギルドの中へと招き入れられました。
いつものインフィメーションでは、ユイさんとカリンさんが立っています。
「お帰りなさい。阿部さん」
「カリンさん。ただいま帰りました」
私の言葉にユイさんの瞳から涙が溢れます。
クールで真面目な印象のユイさんが泣かれるとは思いませんでした。
「ヒデオさん。よく無事に戻られました」
「無事に戻ってくることができました」
「本当にやり遂げてしまうなんて、本当にあなたはすごい人です」
たくさんの人に祝福されて、たくさんの人にお帰りと言っていただけました。
顔を見せた後は、長さんが自宅まで送り届けてくれて、静香さんが白鬼乙女さんとミズモチさんの傷を治して魔力を注いでくれました。
そんなこともできるようになっていたんですね。
「改めて、おかえりなさい。あなた」
そう言って玄関で私を迎えてくれる、カオリ。
「おう、お帰りなのじゃヒデオ!」
《ミズモチさんがプルプルしています》
家族が私を迎えてくれる。
こんなにも幸せなことだったのですね。
「はい。皆さんありがとうございます。カオリ。白鬼乙女さん。ミズモチさん」
私は手のひらサイズになったミズモチさんを抱き上げて顔の高さまで持ち上げます。
「やっぱり家がいいですね。ただいまです」
私は三人に迎えてもらって、帰ってくることができました。
これからは皆さんと共に幸せな家庭を築いていきます。
おしまい
どうも作者のイコです。
これまで、《道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました》にお付き合いいただきましてありがとうございました。
本編はこれにて完結となります。
書籍、コミカライズ発売中です。
「皆さん阿部秀雄です。私の冒険に最後までお付き合いいただきありがとうございました。多くの経験を皆さんと共にさせていただけたこと心から感謝します。ですが、まだまだ私の冒険は終わらないそうです。今度は書籍でお会いしましょう!」
《ミズモチさんがプルプルしています》
「あっ、ミズモチさんも、またねと言っております。どうぞ、皆さんまた会いましょう」
以上!!!
どうぞ他作品も多く投稿しておりますので、読んでいただければ作者が喜びます。
《道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました》の応援をよろしくお願いします(๑>◡<๑)




