土蜘蛛ダンジョン 3
私たちは西折さんに言われた通り、二週間という時間ができたので、土蜘蛛ダンジョンを本格的に攻略することにしました。
すでに一週間かけて、カオリさんが、桜門と東門に住んでいた土蜘蛛の排除と糸の採取を行なってくださいました。
レベルは二つ上がって7になられ、私は経験値と魔力が体内に溜まっていくのを感じています。
レベルが上がってきたからでしょうか? レベルアップの兆候がわかってきたような気がするのです。
ですから、土蜘蛛を倒すことで私はレベルが上がる。
そんな確信を持って私たちは本殿がある北門付近へ足を踏み入れました。
本殿を中心に張り巡らされる雲の巣は張り巡らされて一度入れば、抜けられないと思わせるほどに密集しております。
全てが土蜘蛛ボスのテリトリーであることを示しています。
「カオリさん」
「わかっています。私ではレベル不足です」
事前に北門に向かう際に危険かどうかを判断して一緒に入るのか決めました。
やはり土蜘蛛は危険な相手です。
危機察知さんも本殿エリナに近づいた瞬間に、反応をブラックにして警告しています。どんな相手が待っているのかわかりませんがSクラスの魔物が現れるのは覚悟しなければいけません。
ここまで戦ってきた土蜘蛛は理性を持たない獣タイプの蜘蛛でした。
ですから、酒呑童子さんのような理性的な戦いができるとは思えません。
「ミズモチさん。カオリさんを外まで護衛してあげてください」
「ブル〜」
ミズモチさんにカオリさんをダンジョンの外まで送っていただき、私は近くの土蜘蛛たちで準備運動を始めることにしました。
ここまでカオリさんの《闇》魔法で随分と私は楽をさせてもらいました。
遠距離から敵を倒すことで戦えていたので、ですが、土蜘蛛ボスがどれだけ危険なのかわからない以上はカオリさんを連れて行くことはできません。
指名依頼ですから、土蜘蛛の討伐は行います。
「ブル〜」
「ありがとうございます。ミズモチさん」
私が10体目の土蜘蛛を倒していると、カオリさんを護衛してくれたミズモチさんが戻ってきました。緊張しているのがわかります。
これまでもAランクのダンジョンはボスだけが異常な強さを発揮する経験を何度も何度もしてきました。
カンガルーでも、黒鬼さんでも、そして酒呑童子さんに至っては勝てるとは思えもしませんでした。
土蜘蛛ボスは酒呑童子さんに並ぶ有名な魔物なので、気持ちを落ち着けなければ向かうことはできません。
「ブル〜」
「すいません、ミズモチさん。カオリさんがいなくなったので、虚勢を張ることができなくなりました。男とは悲しいものですね。惚れた女性がいるだけで冷静に、いいところを見せようと思ってしまう。ですが、戦いはいつまで経っても緊張と恐怖がついてきます。耐性を持っているはずなのに、私の心が弱いのだと思います」
ミズモチさんが私の背中から肩に乗って頭をすり寄せてくれました。
「ブル〜」
「はい。ありがとうございます。そうですね。私にはミズモチさんがいます」
いつもミズモチさんには勇気づけてもらってばかりですね。
「ミズモチさん。土蜘蛛を倒しましょう!」
「ブル〜!」
「変身!」
私は鬼人化を行いました。
すると、先ほどまであった緊張や恐怖が嘘のようになくなり、すぐにでも戦いたいという気持ちが湧いてきます。
初めの頃は変身しても、それほど変化はありませんでした。
ですが、最近は鬼人化とともに戦闘を好む傾向があります。
カオリさんが近くにいません。
ですから、必ず理性を持って帰ってこなければいけないのです。
「いきます!」
「ブル〜」
北門から本殿、そこから連なる木々に張り巡らされた蜘蛛の巣。
全てが土蜘蛛の魔力を感じます。
「土蜘蛛はどこにいるのでしょうか?」
無闇に蜘蛛の糸を切って、状況を悪化させるわけにはいきません。
「ミズモチさん。毒霧をお願いできますか」
蜘蛛の糸が張り巡らされているせいで、空が見えないほどです。
ですから、ミズモチさんの毒が空間に充満できるのではないかと判断しました。
しばらく状況を見ていましたが、土蜘蛛に動きがありません。
どうやら上位の魔物になると、ある程度の毒耐性を持つものも現れるようですね。
「キシャあああああ!!!」
毒で死ぬことはないようですが、密集してどこにいるのかわからない土蜘蛛ボスの声がテリトリー内で反響して聞こえてきます。
ズドーン!!!
不意に影が落ちてきて、目の前に巨大な魔物が出現しました。
全身が灰色の体毛に包まれた、蜘蛛の下半身と、筋肉が盛り上がる灰色の鬼が上半という見たこともない魔物が現れました。
「なっ!」
アラクネという魔物を聞いたことがありますが、アラクネは美しい女性の上半身と、下半身が蜘蛛だと聞きました。
ですが、土蜘蛛は上半身裸の男鬼で、下半身が蜘蛛という意味のわからない姿をしております。
「鬼!」
「キシャああああああ!!!!!」
どうやら話はできないようです。
大きく両手を広げたと思えば、全身から糸が放出されました!
私は咄嗟に結界を張って防ぎます。
ですが、結界を作っても360度全方位が糸で埋め尽くされてしまいました。




