魔綿を求めて
私たちは指名依頼の合間にオーダーメイド防具を作ってもらうために、大阪にある泉州へと移動しました。
大阪に住んでいても枚方の私は泉州に行ったことがありません。
大阪で泉州というのは大阪南部にある。(堺市、高石市、泉大津市、和泉市、忠岡町、岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町)の13市町からなる泉州地域を指します。
枚方は北河内地域に入ります。
「ここが泉大津市ですか」
「ヒデオさんもきたことがないのですか?」
「はい。こちらはあまり来る機会がありませんでした。昔に母の祖母が岸和田出身だと聞いて、どんなところだろうと思ったことはありますが、来たことはないんです。いつかは岸和田祭りにも来たいと思っていたのですが、こんな歳になってしまいました」
人は何かをしたいと思った時には遅いのかも知れません。
ですが、機会があるからこそ、こうしてやってくることもできます。
仕事を変えて冒険者になったことは私にとっては良かったのかも知れませんね。
「壮大ですね」
畑一面に広がる木綿の栽培地なのですね。
「木綿栽培の歴史は木綿の種が中国から輸入された室町・安土桃山時代から始まり、江戸時代に掛けて木綿の栽培が盛んになったそうです。そして、今では魔力が溜まってダンジョンに」
そう、綺麗な綿たちがウニョウニョと動いています。
B級の試験を受けたときにトレントと言われる木の魔物と戦ったことはありますが、植物の魔物は動物系の魔物と違って異質な雰囲気を放っているように感じます。
動けない生命が動いて暴れる。
それは一種の恐怖な光景です。
お花が好きな人たちからすれば、彼らがこうして生きているのは喜ばしいと思えるのでしょうか? それとも静かに綺麗に咲き誇る花をお世話してあげることが幸せなのでしょうか?
「取れる素材が高級だからこそ放置してしまう。人間のエゴが織り交ぜっているのでしょうね」
「そうかもしれません。私たちもこのダンジョンに来た理由は自分たちの装備を強化するためなので」
「強い魔物を倒すために、強い魔力を含む素材がいる。そのためには強いダンジョンが必要になる。どちらが先かという話ではありますが、とても難しくて私では答えが出せません」
「そうですね。ただ、今の私たちには必要な素材です」
「はい!」
私は鬼切丸さんを構えました。
ここで綿のボスを倒す必要はありません。
魔物を倒してドロップしてくれるのを待つだけです。
「ミズモチさん。魔物を倒す必要はありますが多くを傷つけないで戦う必要があります。魔法はカオリさんの《闇》魔法を中心に、ミズモチさんは水魔法のカッターで伐採するだけでお願いします。私も鬼切丸さんの刈り取ります」
「わかりました」
A級ダンジョンで根を張る植物系の魔物は厄介な存在だと思います。
どこから攻撃してくるのかわからないのです。
ですから、極力私は防御に徹して、二人足元に意識を向けます。
地面からの襲撃が怖いと思ったからです。
「ブラックホール!」
蜘蛛のように上から襲われることがないので、結界を必要としないのですね。
どうやら地面からの攻撃がないようなので、何か注意を惹きつけることで、カオリさんの攻撃を簡単に当たりやすくしたいですね。
「カオリさん。私が木綿たちの気を引きます」
「お願いします」
私はミズモチさんにカオリさんの護衛を任せて、距離をとりました。
夕暮れどきで、薄暗い今の時間に終わらせたいので、私は今の時間でも一番注目を集める方法を取ることにしました。
「木綿さんたち。第二の太陽です! こちら見てください」
全身を発光させて、私自身が太陽になれば、植物である彼らは私に注目せずにはいられないはずです。
「さぁ、私のカッコイイポーズをご覧ください!」
全身の装備を白いタイツだけになった私は、全力で発光します。
「スーパーアベライトです!」
ディスコで踊ったことはありませんが、黄昏フィーバーと行きましょう!
「今の私は輝いています! いつもよりも」
「綿の皆さんを一気に吸収します。魔石は断捨離で魔力に変えていきます。ミズモチさん。ドロップした木綿の回収をお願いしますね」
「ブル〜!」
私の輝きで綿たちが攻撃をこちらに集中させたところを狙って、カオリさんがブラックホールで吸収を始めました。
どうやら上手くいったようですね。
植物系の魔物は燃やしてしまえば、簡単に倒せてしまうかもしれません。
ですが、Aランク魔物になれば一体一体が危険度が増しているので、不意打ちでも回収を急いだ方が良いでしょう。
昼間のうちはドロップ率が低いと聞いてこの時間に来ましたが、私としてはこの時間の方が活躍できるかもしれませんね。
「ヒデオさん。十分な量を回収できました」
「わかりました! それでは最終です!」
私は鬼切丸を収納して抜刀術を試しました。
根を触手のように飛ばしてくることはあっても、動いて襲ってくることはありません。攻撃と言っても、根をムチのようにするのと、綿をフワフワと飛ばして爆弾のようにしてくる攻撃だけです。
動きさえわかってしまえば、怖くはありません。
「刀に《光》を……」
私は一度試したかった溜め攻撃を行います。
「ヒデオさん!」
「ブル〜!」
二人の声が聞こえると同時に、鬼切丸さんを引き抜いて横一文字で光を飛ばしました。
光が飛んだ範囲全ての綿が刈られて、綺麗に飛びました。
その光景は幻想的で、夕日と綿の不思議な景色が広がりました。




