オーダーメイド装備
私たちは、冒険者ギルドからご紹介いただいた土蜘蛛ダンジョンで取れた糸を使って装備を作ってくれる職人さんに会いに行きました。
京都で、西陣織の職人をされていた方だそうです。
「すみません。失礼します」
私が声をかけると一人の女性が姿を見せました。
「は〜い。どちらさんですか?」
「冒険者ギルドの紹介で、こちらなら土蜘蛛の糸で装備を作っていただけると聞いてきました。阿部秀雄と妻の阿部薫です」
私たちが頭を下げると、女性は「あぁ」と声を発して「少々お待ちください」と店内の椅子へと通してくださいました。
「すいません。旦那は仕事中で、少しだけお待ちください」
お茶と和菓子を出していただき、しばらく離れでゆっくりとさせてもらいました。
今回も土蜘蛛ダンジョンで取れた糸は、昨日に一億円で売れた物と同じ量が取れました。
「すいません。お待たせしました」
店内から出てきたのは、冬の寒さなど関係ないサムエ姿にハチマキを巻いた男性でした。年齢的には同い歳ぐらいでしょうか?
「初めまして、私はA級冒険者の阿部秀雄と申します。こっちは妻の薫です」
私はアプリを開いて、A級であることを示した。
「これはどうも、私は西折制空と申します。接客をしていたのが、妻の澪です」
「西折さんが職人さんなのでしょうか?」
「はい。私が冒険者ギルドと契約している者になります」
「職人さんと会うのは、初めてですので、勝手が分からず、すいません」
「いえいえ、まずは仕事の説明をしていきましょうか」
奥へと通された私たちは土蜘蛛ダンジョンで取ってきた糸をミズモチさんに出してもらって、テーブルへと置きました。
「ほう、これは凄い。土蜘蛛ダンジョンの最高級品質ですね。しかも傷みも全くないのは珍しい」
カオリさんの闇魔法で吸収するように採取したのは、素晴らしい成果のようです。
西折さんも感心されております。
「まずは、私についての説明をさせていただきます。私も冒険者ギルドで魔物を倒した際に、糸職人というジョブを獲得しました。糸職人はその名の通り、糸を加工することに特化したジョブで、糸を使った戦い方もできるのですが、そちらを鍛えるよりも装備を作成した方が多くの人たちの役に立てると判断して今の職業につきました」
西折さんは、もともと京都がお住まいではなかったそうなのですが、糸職人を発現させて、西陣織に魅せられて京都に修行にこられたそうです。
最近になって独り立ちをなされたそうです。
年齢は私と同い年でした。
「なるほど、ブラックスパイダーシルクを使った全身タイツを使っておられたのですね。確かにそれならば防御力は楔帷子よりも遥に丈夫ですね」
私は自身が着ていた白いタイツを見せると、納得してくださいました。
西陣織は、本来着物などの華やかで緻密に織り込まれた紋様の美しさを表します。
現在私とカオリさんは革の胸当てなどを使っていますが、着物の装備に変えた方が全ての防御力を上げられることを伝えられました。
「つまり、土蜘蛛の糸を使って、着物の装備を織っていただけるということでしょうか?」
「そうなります。上下一対の仕上がりになりますので、今の装備よりも総合力は上げられることをお約束できます。それに魔石などがあれば、耐性付与などもできますよ」
「耐性付与?」
オーダーメイド装備を作るのは初めてなので、知らないことが知れてとても面白いです。
私は、ミズモチさんの魔力補給用において置いた魔石を全てテーブルに出してもらいました。
「これは凄いですね。私も見たことがない魔石もたくさんあります」
「全国津々浦々で集めた魔石です」
「Aランク冒険者様と言われていましたね」
「はい!」
「土蜘蛛ダンジョンの系以外に糸を獲得することはできますか?」
「糸ですか?」
「はい。魔綿をとってきてはいただけませんか?」
「マメン?」
私がカオリさんを見れば、冒険者ギルドのアプリを開いて、私に見せてくれました。それは綿花が魔物化して、木綿に魔力的な要素が含まれたものだと記されています。
「こちらのマメンが必要なのですか?」
「はい。マメンはこの間までBランクダンジョンだったのですが、ランクが上昇してAランクになってから普通の冒険者では採取が難しくなってしまって」
「それはどこで採取できるのですか?」
「大阪の泉州です」
現在指名依頼を請け負っています。
それを放り出して自分たちの装備を作るために動いて良いのでしょうか?
「ヒデオさん。問題ないと思います」
「えっ?」
「指名依頼であっても、土蜘蛛ダンジョンを調査したところ、昨日の魔物討伐でダンジョンブレイクは防げたと思います。そのため装備を充実させて、命の危険を下げる方が大切です」
「カオリさんがいうのであれば」
土蜘蛛ダンジョンのダンジョンブレイクを懸念しての調査でしたが、確かに昨日、一昨日と大量に土蜘蛛は討伐できたので、一旦は落ち着けたと思います。
「わかりました。西折さん。その依頼受けさせていただきます」
「ありがとうございます!」
私たちは、指名依頼の期限を確認して明日は、泉州へ向かうことにしました。




