酒呑童子ダンジョン 4
四天王を倒したことで、やっと頂上へ向かって歩みを進めます。
美しい容姿をした少年が、神社の鳥居の前で私たちを出迎えてくれました。
「ようこそ酒呑童子ダンジョンへ」
魔物であるのか、人であるのか、妖の類で酒呑童子が化けているのか? 私は警戒心を強めながらも流暢に話をする少年に答えました。
「あなたが酒呑童子さんでしょうか? 私は阿部秀雄、こちら妻の阿部薫。そして相棒のミズモチさんです。どうぞよろしくお願いします」
私が挨拶をして頭を下げると、美しい容姿をした少年はキョトンした顔をしてニッコリと笑ってくれました。
「嫌やなぁ〜そないに丁寧に挨拶されては、騙そういう気も失せるわ〜。やめやめ、よろしい。それではあんたらには本当の姿を見せましょ。その前に」
「その前に?」
「こっちへいらっしゃい」
美しい童子に連れられて、山を登っていけば見晴らしの良い場所へ連れて来ていただきました。
「わたしはこの景色が好きや」
「だから、ここを住処になさったんですか?」
「それは知らん。結局はわたしらに歴史などあらへん。魔力によって生み出された作り物の存在どす。歴史があると勘違いしとる者もおるが、結局は、魔力によって生み出され、魔力がなくなれば消滅するそれだけの存在や。ここを出て自分の城を持とうとしても、そこに集まる魔力が少なければ、結局ダメになってしまう」
茨木童子さんのことを言われているのでしょうか? 私がお会いした時はDランクのダンジョンで、茨木童子さん自体はCランクの魔物として扱われていました。
今、目の前にいる酒呑童子さんのような理性的な振る舞いはなく、黒く大きいだけの鬼だったと今なら思います。
「ここはええ。魔力も豊富にあって景色も綺麗や。ただ、飯や酒がない。だからそれを手に入れるために動いただけや」
人を騙して襲うと言われる大江山の酒呑童子ダンジョンさんは、ランクこそ高くはありますがそれほどの大きな被害は出ていません。
これに関しては白鬼乙女さんも同じです。
高ランクと言われながらも、高ランクのダンジョンはダンジョンブレイクを起こしたことは日本ではありません。
海外では都市を破壊したダンジョンブレイクもあるそうですが、日本では低ランクダンジョンが魔物を溢れさせてダンジョンブレイクを起こすのがほとんどです。
災害として扱われており、冒険者の緊急招集がかけられます。
「私も多くの魔物さんたちと話をして、悲しい思いもたくさんしました」
黒鬼ダンジョンで話をして、立ち退きができない黒鬼さんたちの現状。
彼らは魔力の濃度が濃いところでしか生きられない。
それもどうやって生まれたのか、なぜここにいるのかすらわからない。
ただ、生まれ殺されるのを待つ日々など、なんと悲しいのか?
「ですが、相容れないと言うことだけはわかっているのです。どちらかが滅ぶのか、どちらかに従うのか……。いつか強力なダンジョンがブレイクして人々を脅かすようになってしまえば、恐ろしい結末を迎えてしまいますから」
「そうか……」
私は、覚悟を決めてしまったんです。
自分にできる限界まで魔物を攻略してダンジョンを解放する。
一番最初にミズモチさんと約束しました。
ミズモチさんを強くすると。
そして、白鬼乙女さんとも約束しました。
白鬼乙女さんを解放すると。
スキルはそんな私の思いに応えてくれるように力を授けてくれています。
本来のレベルであれば、危機察知さんが完全にブラックを表示している相手に私が勝てるはずがありません。
ですが、ボスキラーやジャイアントキリング。
それにこれまで培ってきた経験とスキルが酒呑童子さんの解放に助力してくれるはずです。
「ならば、やるとしよう」
私たちは美しい容姿をした童子から距離を取れば、その体は巨大な一匹の赤鬼へと姿を変えられました。
どこから出したのか、肩には担がれた金棒が鬼の象徴にも見えますね。
「我が名は酒呑童子。鬼たちの頭領にして無類の強さを誇る者。挑まれたケンカだ。引くわけにはいかねぇ〜キッチリ落とし前つけさせてやりましょうや」
酒呑童子さんの名乗りに応えるように私は一歩踏み出しました。
カオリさんが不安そうにこちらを見ています。
スキルの察知を手に入れたカオリさんも相手の恐ろしさを理解しておられるのでしょう。
ですが、私も挑んだからには言わなければいけません。
「私の名は阿部秀雄。ある高貴なお方を救うため自らを研鑽してこの地にやってきた。噂に聞いた酒呑童子様に挑ませていただきます。相棒のミズモチさんと共に」
「ブルブル!」
「変身!」
白鬼乙女さん以外では、ここまで流暢に会話ができた魔物は黒鬼さんぐらいだったように思います。それだけ酒呑童子さんは強いことがわかります。
「くくく、坊主よ。来るがいい」
「私はお坊さんではありませんが、確かに、鬼を退治するお坊さんだと思われても仕方ないですね。いいでしょう。まいります」
ミズモチさんに乗らせていただき、私は鬼切丸で切り込みました。




