酒呑童子ダンジョン 2
熊童子さんは素早く動くことを得意としているようです。
鉤爪の攻撃もスピードと器用さで左右上下から襲いかかってくるので危険ではありますが、それだけなのです。
単調な攻撃手段と器用な曲芸のような舞は見慣れてしまえば、それほど大した脅威にはなりません。
私は鬼人化していることもあり、相手の動きがはっきりと見えているので、ゆっくりと落ち着いた対処が行えています。
それに対して、熊童子さんは次第に焦りを見せ始めて、動きが雑になっています。
もしかしたら誘いかもしれないと思って私は手札の一つである結界を使って、熊童子さんの右手の攻撃を塞いだ瞬間に、鬼切丸さんで《回天》にてカウンターを決めました。
「グハッ! なっ、なんだその武器!イテェー! 痛すぎだろ!」
鬼切丸さんは鬼を斬るために用意されたような武器です。
そのため、鬼の体をしている熊童子さんの体を一撃で、致命傷と言える攻撃を与えることができました。
速さによってところどころ、私も擦り傷は負いましたが、必殺の一撃は私の方が有利だったようです。
「くっガハッ、くそ。俺はここまでか、茨木童子の兄貴が独立してどっかのハゲに討たれたと聞いた時は俺にもチャンスがあるかもって思ってたのによ」
苦しむ青鬼、熊童子さんを一刀両断しました。
魔物である熊童子さんは、魔石になり後には鉤爪がドロップしました。
「ミズモチさん、武器と魔石の回収をお願いします」
「ブル〜」
ブルブルと震えながら何かを言いたそうにしていますが、気持ちは伝わってきます。戦いを終えてよくやったと褒めていただきました。
相性と言えば、いいのか受けの私と攻めの熊童子さんは、私の方が相性が良かったようです。
「茨木童子が独立して居ないと言われていましたね」
「そういえば、私は大阪の茨木でオーガと戦ったことがあるのですが、その時の鬼が茨木童子だと言われていたような気がします」
「そういえば、ヒデオさんからそんな話を聞いたことがあるように思います」
私はハルカさんにあった頃に戦った鬼のことを思い出しました。
あの時はDランクのダンジョンでしたから倒すことができましたが、もしかしたらあのダンジョンが成長していれば、かなりの強敵を生み出していたのかもしれませんね。
「さて、次ですね」
私たちは酒呑童子が祀られている神社を目指しています。
その道中にただずむ鬼たちはどうやら、私たちを通さないための関門のような相手なのかもしれません。
「やぁやぁ我こそは虎熊童子である」
獣に近い巨大な体に角が生えた鬼が大きな声で我々の行手を阻んております。
先ほどの熊童子さんは、まだ人の形に近くありましたが、今度は獣の方が面積を占めているように思います。
「ブルブル」
私が出ていこうとすると、ミズモチさん行手を阻みました。
「今度はミズモチさんが戦うということでしょうか?」
「どうやらそのようです。私の戦いを見て闘争心に火がついたようですね」
ミズモチさんは虎熊童子さんの前に立って体を同じだけ巨大化させました。
「くくく、どうした? 我と力比べでもしたのいか?」
獣の見た目をした虎熊童子さんは力自慢のようです。
素手でミズモチさんに触れて抱きしめて潰すように力を込めました。
ミズモチさんは大きくなる膨張力で反発しながら、体から生み出す毒液によって虎熊童子に反撃しています。
潰す力と膨れる力。
虎熊同時の体は、ミズモチさんの毒液によって次第に溶け始めました。
どうやらここでも相性がミズモチさんの方が良かったようです。
「くくく、我はまだ終わりではないぞ! 鬼火!」
腕の力を失った虎熊同時の周りに、紫の炎が生まれてミズモチさんを襲います。
しかし、これにもミズモチさんは水の壁を作り出して対抗してしまいました。
最後は氷の刃が虎熊童子の胸を貫いて決着です。
「さすがです。ミズモチさん」
「ミズモチさんは本当に強いですね。誰がスライムを最弱なんて言ったのか知りませんが、今のミズモチさんを見てバカにする人はいないでしょうね」
カオリさんからも褒められたミズモチさんは上機嫌で、虎熊童子さんが落とした魔石を取り込んで進んでいきます。
どうやら、私の戦いだけでなく自分が戦ったことに興奮しておられるようです。
相手も強かったので、ミズモチさんは本気で戦いました。
それが楽しかったようです。
私にもその気持ちがわかってしまうので、ミズモチさんに仲間だと言われるのがこそばゆいですね。
「大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。順序よく四天王を倒せたことは喜ばしいですが、気を引き締めていきましょう」
「そうですね」
私たちがしばらく歩いて茶色鬼が大きな2本の斧を持ち、鎧と兜を装備して武芸者の姿で待っておられました。
「ここまでよくきたな。貴様らを敵として歓迎しよう」
「お二人同時に戦うことはないのでしょうか?」
星熊童子さんの後に、すでに金童子さんの姿も見えました。
金色に輝く槍をもって私たちを小高い丘から見下ろしておられます。
「ない! 我が敗れた時は、兄者が相手する。それだけよ」
「わかりました。それでは私がお相手いたします」
ミズモチさんには、カオリさんの護衛と金童子への注意をお願いしました。




