そこはまだ雪国ではありません
東京駅から青森までは、はやぶさに乗って三時間ほどかかります。
飛行機だと一時間で行けるのですが、結局待ち時間や移動などを考えれば、安くてゆったりできる新幹線の方が私は好きだと思います。
新幹線が東北地方に入る際にトンネルをいくつか抜けますが、そこまだ雪国ではありませんでした。
新青森駅に到着した私は奥羽本線に乗り換えて、約40分ほど揺られて到着しました。
弘前市は、青森市、八戸市に次ぐ大きな町で、昔は弘前城という綺麗な城下町もあり、とても綺麗な街並みが広がっています。
まだ寒さが訪れるには早く穏やかな雰囲気が続いています。
街並みを歩いていると洋館が並んでいるのが見れます。
明治に建てられた銀行などもあり、とても綺麗な雰囲気と城下町としての昔の建物が整えられています。
「ミズモチさん、とても綺麗ですね」
「ヒデヴュ〜」
「あちらは教会がありますね」
大きくて綺麗な教会が立派な建物になっていますね。
「城下町もなんだか落ち着いた雰囲気ですね」
弘前の美しい街並みを一通り見た私たは拠点とする。
弘前プラザホテルへとやってまいりまいた。
綺麗なビジネスホテルで、ミズモチさんと泊まるには十分な広さのあるホテルでした。
「ふぅ、一先ずは落ち着きましたね。今日は移動で疲れてしまったので鬼ダンジョンに行くのは明日にしましょう」
鬼ダンジョンは、鬼屋敷と言われる古いお屋敷がダンジョンになっているそうです。
そして、その近くにある鬼神社にも、白鬼乙女さんの手がかりがないかも調査に行きたいと思っています。
鬼神社までは、バスが出ているということで山道を走り30分ほどで到着するそうです。
ここまでくるのに新青森までは三時間、弘前にくるのにさらに一時間。
そして、そこから観光をしたので、すっかり夕方になってしまいました。
「ふぅ、とても良いところですが、家ではないというだけで少し興奮するのと疲れがありますね」
旅行先の喜びはあるのですが、やっぱり慣れた場所ではないのでちょっとゆっくりしたいです。
そこで、津軽三味線居酒屋というお店を予約させてもらいました。
魔物のスライムを連れて行っても良いかと聞くと、暴れなければ問題ないと言っていただきました。
「ミズモチさん。本日は、青森の地酒を楽しみながら郷土料理をいただきましょう」
事前にお店には全種類を食べたいことを伝えました。
メニュー表を見ていて私が気になったのは……。
・こまい
・イカメンチ
・たら玉
・ハタハタ丸干し
・牛タンつくね
・十三湖シジミバター
・特大ホッケ
・貝焼きみそ
なんでしょうか食べたことがないものばかりなので、味の想像ができません。
ただ、特大ホッケは大好物です。
特大ホッケだけでも、お酒が進みますね。
「うわ〜、雰囲気がありますね」
お店の中に入ると、津軽三味線の弾き手さんが店の奥におられて私はカウンターに通していただきました。
「おきゃくさ、何すっぺ?」
「あっ! あの予約した阿部です」
「ああ! おきゃくさんね。東京からやんね? ふふ、ホンマに全種類食べるん?」
「はい。お願いできますか? それとオススメの地酒があれば全部飲みたいのですが?」
「ええよ。弘前のお酒は美味しいから楽しんでって」
女将さんは接しやすい人で、すぐにお通しの枝豆とお酒を持ってきてくれました。
「これ、ご当地で取れた黒石豆腐。美味しいから食べてみ。それともずくに、豆腐のジャコサラダ」
そう言ってスピードメニューをどんどん持ってきてくれます。
テンポよくやってくるメニューに私は、ミズモチさんをカウンターに座っていただき、小皿に小分けしていきます。
「へぇ〜、その子がスライムねぇ?」
「はい。スライムのミズモチさんです」
「めんこくてええねぇ」
手のひらサイズのミズモチさんなので、他のお客様からは私の体で見えていませんが、お皿を運んできてくれる女将さんにだけミズモチさんの姿が見えています。
「そろそろ津軽三味線の演奏が始まるよ」
女将さんが二本目のお酒を持ってきてくれて、演奏が始まります。
太棹と言われる津軽独特の三味線で演奏される楽曲は、どれも迫力があってお腹にガツンと響くような音が胸を掴まれるような気がします。
プルプルと震えながら、食事を楽しんでいたミズモチさんが、ビリビリといつも以上に小刻みに震えているので、音の振動がすごいのでしょうね。
「はい。津軽オムレツに、巨大ホッケだよ」
美味しい食事に、迫力ある演奏。
なんとも不思議な空間の中でそれでいてミズモチさんを見ている楽しさもあり、これはハマってしまいそうな良さがありますね。
「この時期に人が来るのは珍しいね」
「時期?」
「そうそう、もう少し寒くなったら裸祭りとかもあって、人が集まるからね」
裸祭りはネットで調べると出てきました。
男性たちが雪山で裸になって神輿を担いでおられるのです。
「しばらくは、何度か行き来すると思うので、また来させていただきます」
「はは、いつでもおいで」
結局地酒を六杯ほどいただき、その間にミズモチさんが、シジミのラーメンを閉めにして食事を終えました。
どれもとても美味しくて、また期待ですね。




