剣術指南 終
カオリさんのご両親や、テレスさんとの問題を全て解決できた私は自分の問題を解決するために動き出すことにしました。
私にとって一番の問題は白鬼乙女さんです。
彼女を解放する。
そのためには必要なのは強さを手に入れることです。
白鬼乙女さんが授けてくれた鬼切丸さんを使えるようになる。
東郷師匠のおかげで剣術の基礎を学ぶことはできました。
ですが、剣術を学んだことで強く成れたのかと聞かれると、そう思えませんでした。
九月も後半になり、私の剣術はある程度の形を維持できるようになりました。
スキルの力とは凄い物ですね。
最初は違和感と流れを掴むことが難しいと感じていました。
ですが、マンティスを相手にしてもそれほど脅威に感じることはなくなり、鬼切丸で対峙すれば、負ける気がしません。
「うむ、なるほどのう」
私はマンティスダンジョンでの物足りなさを感じました。
ですが、それはマンティスとの相性が良いのか、私が成長しているのかわかりません。
そして、もう一つは柳流杖術を習得しているからでしょうか?
結局、雷は私にできませんでした。
代わりに柳流杖術の応用した攻撃は威力を上げることができるのです。
「君はこれまで杖を主流をやってきた。それに慣れた体付きをしておるのじゃろうな。本来であれば剣術は長年の修練が必要になるが、基礎動作も数日でできるようになってしまった。それもスキルの力じゃったな」
「はい」
「ならば、ワシが君に型を教え、君のレベルが上がればスキルとして習得できるかもしれんな」
「そっ、そんなズルをしてもいいんですか?」
「ズルというのかわからんが君が、これまでレベルを上げるのにズルをしたのかね?」
「いえ、いつも必死でした」
初めてご近所ダンジョンでゴブリンに会って殺されそうになった時から戦いは必死です。
ミズモチさんが支えてくれてなんとかここまでやってこれました。
「ふむ。ならば、もしかしたら阿部君は極限状態でこそ力を発揮する人なのかもしれないね」
「極限状態?」
「うむ。命の危機を感じなければ想像を超える力を出せないということじゃな」
そういうと徐に飾られている真剣を手にかけた東郷師匠は私に一本を投げ渡しました。
「抜きなさい」
「えっ!」
「互いに真剣で戦うことで学べるのかもしれん。その前に我が東郷流活人剣は殺す剣にあらず。魔物を断ち切る剣ではあるが、後の先をとることを信条としておる」
後の先、だからこそ円のような構えて相手の攻撃を受け流す技があるんですね。
「殺すためではなく、必死に生き残る。そして、相手を生かす。それを伝えてしんぜよう」
東郷師匠の思いに応えるために、私は真剣を手に取り立ち上がりました。
今日は八千代さんが居られないので、審判としてミズモチさんに間に入って頂きます。
「ミズモチさん。私の手元が狂った際には、師匠を守ってください」
「ヒデヴュ〜!」
ミズモチさんに承知して頂きましたので、私は真剣を抜き放ちました。
鬼切丸さんを抜くのと違って、凄く重く感じます。
「構え!」
東郷師匠と向き合って互いに正眼から、下段へと下ろしていく。
二人ともが円の構えになり、ジリジリと歩み寄る中でビリビリとした空気が張り詰めます。
「ヤァっ!」
「はっ!」
互いに一歩踏み出した瞬間。
東郷師匠は下段から、私は横薙ぎで剣を振るう。
下段から切り上がっていると思っていた東郷師匠の剣は私の横薙ぎの剣を流して私の首筋へと刃が迫ってきます。それは止まるような速度ではなかったため、私は咄嗟に刀から手を離して後に倒れるように逃げました。
「ほう、避けるか、よくぞ避けたのう」
「しっ、師匠?」
「危機的状況でしか学べないのであれば、死を覚悟してもらう。阿部君、君は命をやり取りをしているダンジョンに潜っている。だが、どこかで自分は死なないと思うようになっていないかね?」
「えっ?」
「だからこそ、危機感が薄れて身につける能力を低下させてしまっている。ならば死を感じてもらって覚えてもらう」
私は唾を飲み込みました。
「次の一撃は私に取って、人生を賭けた一撃を放つことを誓おう。それは君の命を刈り取る威力を込める。君が逃げるのか、それを受けるのか、または返すのか、自分で選びなさい」
刀を握って、東郷師匠の言葉応えるのか、私は悩みどうすればいいのかわからなくなってしまいます。
「行くぞ」
ゆらりと東郷師匠の体が流れるように揺れ始めました。
「ヒデヴュ〜!!!」
私が呆然としていると、ミズモチさんが鳴き声を上げました。
そうですね。
私は東郷師匠に答えなければいけません。
そして、私が何をしたとしても東郷師匠が、そしてミズモチさんが守ってくれる。それが今までの私たちです。
私は立ち上がって円の構えを取りました。
一番最初に教えてもらった構えですが、これが一番しっくりきます。
「東郷流活人剣、奥義《流水》」
ゆらゆらと揺らめいていた東郷師匠の体が液体のように私の体へ向かって流れ始めました。
それは私が一番見てきたミズモチさんのようで、二人の体が交差しました。
交差した体は、私の刀を折り。
東郷師匠の膝を折りました。




