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《近々コミカライズ発売予定》道にスライムが捨てられていたから連れて帰りました  作者: イコ


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幸せにします

 カオリさんと亀津さんの屋敷を飛び出した我々は、弁護士のマリアさんに出迎えられました。


「大丈夫ですか、阿部さん」

「はい。わざわざご足労いただきありがとうございます」

「いえ、問題ありません。それよりも長さんは?」

「まだ、屋敷の中で私たちの代わりに話し合いをしてくれています」

「そうですか。でしたら、後の話は法律的なこともありますので、私が請け負います。お二人は大変だったと思いますので、ゆっくりと休んでください」

「ありがとうございます」


 私たちはマリアさんにお礼を告げて歩き出しました。


 歩いていると、カオリさんが私の腕を強く掴みました。


「ヒデオさん。少しだけお話をしてもいいですか?」

「はい」


 私たちは人気のない公園に入り、ベンチに座ります。

 自販機で飲み物を購入して手渡すと、カオリさんの手は震えていました。


 夜も更けて、最近は朝晩が少しだけ涼しくなりました。


 秋の到来がもうすぐ訪れます。


 月が丸く見え始めているので、お月見の季節でしょうか?


「助けに来てくれてありがとうございます」

「いえ、むしろ大事になってしまったので、本当によかったのか……」


 長さんだけでなく、マリアさんにも来てもらって、カオリさんと、両親との決別までさせてしまいました。


「でも、どうしてお義父さんもあそこに?」


 お堅い感じを受ける人でした。

 私にも働くことが男の勤めだと言われいたような人でした。

 カオリさんを裏切るような人ではないように思えていました。


「……父は、心の弱い人なんです。母と距離を取る際にも時間がかかりました。自分が仕事に失敗して迷惑をかけたからだと思っていたんです」

「えっ?」

「宗教関連のことは自分が上手くやっていれば、母も機嫌が良く過ごせていたのに、自分が仕事を頑張って借金を返せば母が戻ってくると信じていたようです」

「それは流石に」

「ふふ、変ですよね。裏切られた相手を好きだって。私にもわかりません。ですが、父はそういう人でした。だから、今回も母が戻ってきてくれて、母が言うことならと聞いたんだと思います」


 家庭の事情はわかりませんが、裏切られても愛せるお義父さんは、他に縋るものがなかったのでしょうか?


「ヒデオさんが渡してくれた母の資料を読みましたよね?」


 テレスさんから受け取った資料を私も目を通しました。

 そこにはお義母さんの犯罪履歴が書かれていました。


「これから私は犯罪者の娘です。今回のことで明るみに出ると思いますので」

「……」


 何を言えばいいのか、慰めることも違うように思いました。


「ヒデオさん」

「はい」

「別れましょうか」

「えっ?」

「多分、これから結婚しても多くの迷惑をかけます。両親の不名誉を私は背負っていかなければいけません。それは私が背負う責任です。ヒデオさんは前に一緒に歩もうと言ってくださいました。だけど、やっぱりヒデオさんが背負う必要はありません」


 カオリさんのお義母さんは多くの犯罪が明るみに出れば、テレビなどにも報道されるかもしれません。

 もちろん、ユイさんやマリアさんによって規制はかかるでしょうが、それでもカオリさんの元へ取材に来る人も出てくるかもしれません。


「カオリさん」

「はい」


 顔を俯かせて、私のことを見てくれません。


「一緒に背負わせてはくれませんか?」

「えっ?」

「前にもどんな困難が待ち受けていようと一緒にいたいと伝えました。今回、一番傷ついたのは誰でもないカオリさんです。ご両親に裏切られ、悲しい思いをした。そんなあなたを放っておけるわけがない」


 私がたどり着いた時、カオリさんは泣いていました。

 だけど、私が来てからは涙を我慢しておられました。


 だから、私はそっと彼女の頭を胸へと導きます。


「今は泣いていいんだと思います。思いきり泣いて、全部吐き出して。これからくる未来のことなど、来てから考えてしまえばいい。あなたは誰よりも優しくて葛藤もあることでしょう。それも全て一緒に背負わせてほしいのです」


 私の言葉が届いたのか、カオリさんはそれ以上何も語ることなく涙を流した。

 

 ただじっと声を押し殺して涙を流すカオリさんは気丈な女性です。


 そして、お義父さんを弱いと言ったように、カオリさんの心もきっと弱っていたのでしょうね。

 弱いからこそ、誰にも頼ることなく気丈に強くあろうと、ギャルメイクをして自分を守る武装をしていたのですね。


 しばらくカオリさんが涙を流す間、私はじっと彼女の背中を摩って落ち着くのを待ちました。


 ミズモチさんは、私たちを隠すようにドーム状になって周りから隠してくれました。


 その気遣いに暖かさを感じてしまいます。


「ごめんなさい。もう、大丈夫です」

「あの、よかったら使ってください」


 ミズモチさんが出してくれたタオルと、ウェットティッシュを手渡します。


「ふふ、準備がいいんですね」

「冒険者ですから。数日は外で過ごせるセットは常にミズモチさんに預けてあります」

「ふふ、ありがとうございます。ハァー、バカだな。ねぇ、ヒデオさん。私はもう離れられませんよ?」

「もちろんです。ずっと一緒にいてください」

「どんなことがあっても、私から離れてはあげません。覚悟してくれますか?」

「覚悟なんていりません。こちらこそ離れたくありません」


 カオリさんが今までにないほど私に甘えてくれます。


 凄く可愛いです。


「もう! 我慢しません。ヒデオさん。結婚しましょう。私があなたを幸せにします!」

「えええ! それは私のセリフでは?」

「いいえ、私がヒデオさんもミズモチさんも幸せにします」


 カオリさんに宣言されて思いっきり抱きしめられました。

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