後始末
《side長さん》
「さて、それでは話し合いといきましょうかね」
私は取り残された阿部君の婚約者である矢場沢薫さんの両親と亀津を見る。
阿部君には言っていなかったが、亀津は第二課が目をつけている人物で、色々と裏と繋がりのある人物なのだ。
しかも、こちらの情報を掴んで上手く回避をする人物だった。
そのため今回の突入劇は、誘拐という証拠を掴むことができたので、家宅捜索が行える。
「クソが、こっちはなんの得もねぇじゃねぇか!」
「わっ、私たちはどうなるんですか?!」
「そっ、そうだ! 私たちの借金は!」
「ウルセェよ! こっちはお前らみたいな負債を抱え込まされたんだ! きっちり絞ってやるからな」
「「ヒッ!」」
怯える二人を尻目に私は亀津を見る。
「まぁまぁ亀津さん。ちょっと聞きたいんですけどね。あんた、阿部君のことを知っていたんじゃないですか?」
私は一つの疑問を抱えていました。
いくら阿部君の婚約者さんが若くて綺麗な方でも、3億という大金を稼ぐのは容易なことではありません。
では、どこからその3億円を引っ張り出すのか?
そう考えて導き出されるのは、婚約者さんを人質にして阿部君からお金を引き出すことでした。
危ない橋ではありますが、阿部君の性格まで調査していれば、お人好しな彼のことです。3億ぐらいは出していたことでしょう。
「わっ、私は亀津さんに借金を帳消しにしてやるから、代わりに娘を差し出せと言われただけです!」
ここにきて、母親が叫び声を上げる。
「チッ! テメェは黙ってろよ!」
「やはりですか、随分と危ない橋を渡ろうとしていたようだ」
失敗すれば、阿部君の怒りを買って殺される恐れもある。
「ふん、こっちは出資していた企業を奪われた恨みがあるんでね」
「出資していた会社?」
「そうだ。俺はブラック会社の出資者でね。あそこの課長と部長には随分と金を流した。まぁ、こちらも儲けさせてはもらったけどね。日本に入ってくるダンジョン産のヤバいアイテムを横流ししてもらっていたのによ」
ここまで自白するということは、その辺の証拠は出てこないのでしょうね。
「どうして会社が取られることになったのか調べてわかったわけよ。最近、メキメキと稼いでいる冒険者様のことをな」
「ほうぅ〜」
私が仲間を食い物にしようとしている者を放っておくと思っているのでしょうか?
「だから、結婚することを聞いて、相手の両親を調べた。そしたらこいつらクズは借金はしてるわ、悪人だわ。それらを俺様が買い取って動かしたってわけだ。クズなこいつらは俺の思惑通りに動いて娘を差し出した。まぁ、実際には何も起きてねぇ。ここで話したことになんの証拠もねぇがな」
勝ち誇ったように私は近づいて臭い息を吐く。
「ハァ〜、亀津さん」
「なんだよ。あんたは警察でもねぇんだろ? もうどうすることも出来ねぇぜ」
「お前は、バカだねぇ。自白ありがとさん」
「はっ?」
「突入!」
今まで話していたことは全て仲間が聞いていた。
第二課の者たちに突入を指示する。
「警察ってのはね。やめてもどこかで繋がっているもんなんだよ。ましてや、私は定年になる前の歳だ」
「はっ?」
私の言葉通りに警察が亀津の屋敷へと雪崩れ込んでくる。
阿部君たちは屋敷を出てくれただろうか?
「お前! 騙したのか!」
「いやいや、最初から冒険者であることは話したでしょう? 嘘は何一つありませんよ」
第二課が屋敷に入って、亀津を取り押さえる。
「えっ? これで私たち助かる?」
「やった! やったんだ!」
ご両親が何か勘違いをされておられる。
「はは、何を喜んでいられるんで?」
「えっ? だって、借金した相手が犯罪者だろ? 捕まったんだ。私たちは助かるだろ?」
「まさか、あんたたちは何も助かりませんよ。元に戻るだけだ。借金は元の借主に返してもらう。そして、揉め事も揉めている相手に還る。旦那さん。あんたは自分の借金を返していく人生に戻るだけだ。ただ、これまで娘として育てた子との縁は切れるがね」
「なっ! そっそんなわけが」
「あるですよ。あんたは自分の問題を娘を売ることで解決しようとした。亀津に借金を押し付けられても、自分が死ぬことで娘を差し出さないという選択もできたはずだ。それが親ってもんでしょうが」
私の言葉に旦那さんは項垂れる。
今後は、娘さんに近づかないようにストーカー法の接近禁止令を使わせてもらうように手配しておく。
近づくだけで警察に捕まり回数が増えれば悪質扱いになるだろう。
「それとあんたは、様々な余罪があるようだね」
「ハァ? 私は何もないわよ。借金だって、無理やり押し付けられて」
「はいはい。そういうのはいいから。結婚詐欺に、後妻業、殺人の疑いもある。これからの人生は刑務所の中で一生を終えてもらうから」
「なっ!」
火をつけたタバコが一口つけただけで、燃えてしまって勿体無いことをした。
「あんたらは最悪な親だ」
私は腑が煮え繰り返るほどの怒りを感じていた。
「私はね。あんたらみたいな奴らが一等嫌いなんですわ。ごめんなさいよ」
阿部君ほどではないが、私は殺気を二人に向ける。
自分が法の元で生きる人間でなければ、殺してしまいたいほどだ。
「阿部君と矢場沢君を守るためなら、たとえ血の繋がりがあるあんたらでも許しはしません。最初から、自分たちの浅はかさを悔い改めて、阿部君に頭をついて泣きつくしかあんたらに救いはなかった。こんな子供を傷付ける最悪なやり方で終わるなんて後味が悪いが、絶対に許さないからな」
二人は私の殺気に話すことも出来ないまま連行されていった。
ハァ、まだまだ自分にも怒りを覚える若さがあったんだね。
「長さん。ご苦労様です」
「マリアさん。後のことはお願いします」
「お任せください。阿部さんと矢場沢さんには一切の非が及ばないようにいたします」
親父の方は、余罪はそれほど出ないかもしれないが、一生を後悔するように生きさせることはできたかな?
「救えないねぇ〜」
私は二本目のタバコに火をつけた。




