1話 やらかし男の後始末.3
皆様、ご無沙汰しておりました。初めての方もおりますので、改めまして、流と申します。宜しくお願い致します。
さて今回は、以前ご紹介させて頂きましたこちらの物件が何と! この度! 改装特価でのご紹介となりますーはい拍手!!
まず、見て下さいこの外観。
屋根は崩れかけ、外壁は剥がれ、基礎が斜めになっていたこの屋敷がー! 台風が来ても豪雨が来ても壊れそうに無い立派な屋根となっており、外壁はヒビや剥がれが一切無く、茶色の塗装が施されて見た目も良く、一番酷かった斜めの基礎は地面にから真っ直ぐに建っています! 次は、中をご案内致しましょう!
頑丈な正面扉を開け中へ入ると、何という事でしょう。エントランスの天井から灯の光が反射してそのタイル張りの床が輝きを放ち、歩くのを躊躇う程の清潔感。これは滑り易い事間違い無しで転び放題ですね。
「おとうさん、またへんになった」
ミルンさん、変では無いです。いつもこんな感じでしょう。ほら、次に行きますよ。
次はお風呂場。
ゆっくりと長風呂をするのを躊躇う像が撤去され、替わりにミルン像が設置されており、その像の口から清潔なお湯が大浴場に張られていきます。これは流さんも大喜びだ!!
「ミルンのぞう? なんで?」
ミルンが疑問を感じる程そっくりな良い趣味の像ですね。部屋に飾りたいぐらい素晴らしい造形美です。ミルンの垂れた犬耳とふわふわな髪、くりっとしたお目々が見事に表現され、職人の愛を感じます。
「僭越ながら私が石を削り、作成させて頂きました」
ドゥシャさん、俺の寝室にも一つ頼むよ。
これは素晴らしい像だからね。
「流さん、先程から一体何をしているのですか?」
影さんあと少し、あと少しなんだ!
各部屋を覗くと、何と壁が打ち抜かれており、引き篭もり真っ青の状態で、個室が五部屋、大部屋が一部屋とプライベートと家族の団欒を考えられた造りとなっております。又、部屋に備え付けられていた豚野郎の剥製は裏口に設置され、防犯対策もバッチリ。
そして何より、触ると糞尿が爆散するあの浄化槽も改修され、安定して綺麗な水が出せるこの環境。
さあ、如何でしたでしょうか。
こちらの物件。
前回は無料でご案内させて頂きましたが、流石に今回は無料ではございません。
ですが皆様納得のプライス!
さあ、いきますよー、いきますよー!
ななんと! この屋敷が! ななんと!
「俺が住むので売れませんでしたー!!」
「おとうさん! へんなおかおだめ!」
「旦那様、ミルン御嬢様の像を正面にも設置する許可を頂きたく存じます」
「何のやりとりなのでしょうか…」
屋敷が綺麗になり過ぎてて俺の脳内がついて来なくてバクっただけだ。それとドゥシャさん、許可しない訳がないだろ直ぐ設置するんだ! 最優先事項です!
※
ボロ屋敷が立派な屋敷になったのは良い事だけど、ドゥシャさんに聞いても掃除しただけと言い、影さんに聞いてもお手伝いしただけと言って結局どうやったのか教えてくれませんでしたよ気になるなぁ。
因みに一階は大部屋、二階が小部屋と別れており、大部屋に居るケモ耳っ子達の様子を見に行くと、村長を枕に皆んなが寝ていたけど何でレネアも一緒に寝てるんだよ護衛さん。
メオだけ村長の顔に覆い被さるように寝ており村長の寝息が聴こえないけど胸が動いているので生きてはいるだろう…メオを起こさない様に抱え、村長の腹の上に移動させた。
「影さんとドゥシャさんも休んでてくれ。ご飯作ったら呼ぶから寝ててもいいぞ」
そう言うと二人とも流石に疲れていたのか、お言葉に甘えますと言って二階の部屋へと向かって行った…疲れない訳ないわな。
「ミルンも寝とくか?」
「おとうさんとりょうりする!」
分かった、じゃあ一緒にご飯を作るか。
ミルンとお料理楽しみだなー厨房はどうなっているのか…うん、分かってたけどやっぱり厨房も凄い綺麗になってるよね。こんなに広かったかな? 十人は余裕で調理できるスペースあるよ。
「包丁も、鉄製の鍋も用意されているな。こんなん元からあったかなぁ?」
「おとうさん、なにつるくの?」
そうだったな、何作ろうか。
お肉ばっかりだとケモ耳っ子達の身体に悪いだろうから、野菜を食べさせたいけど…。
「ロールキャベツにしようかなぁ」
「ろーるきゃべつ? おにく?」
お肉もちゃんとあるからな、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だぞミルン。
まずは、鍋に水を入れ火を着けて、肉のタレと少量の香辛料を入れ沸騰しないように見ながら、豚野郎を細長くスライスして塩を少量塗り込み、葉野菜を水で洗ってから巻く。
ミルンの出番だよ、この葉野菜と豚野郎を一緒に巻き巻きするんだ、こんな風に巻き巻きとね。
「まきまきおやさい、まきまきおにくー!」
そうそう、巻き巻きしまくるのです。
結構な量作らないといけないから頑張れミルン!
「わかったおとうさん! まきまきおにくー!」
一人五個としてもミルン、ミウちゃん、メオ、ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカス、モンゴリ君に、村長、影さんとドゥシャさん、そして俺か。
余裕を見て七十個ぐらい作るかな。
俺も、巻き巻きお野菜巻き巻きお肉巻き巻きお野菜巻き巻きお肉巻き巻きお野菜巻き巻きお肉巻き巻きお野菜巻き巻きお肉巻き巻きお野菜巻き巻きお肉巻き巻きお野菜巻き巻きお肉って結構辛いなこの数!?
ミルンは涎垂らしながら一心不乱に巻き巻きしてるしゾーンに入ってないかこれ?
それじゃあ巻き巻きしたら鍋に投入して煮込む! 灰汁を取りつつ煮込み、灰汁を取りつつ煮込み、ちょっとミルンに味見をさせて、まだ染み込んで無い? ならば煮込んで煮込んで煮込み続ける!! 煮込む際には崩れない様に紐の代わりに細く切った肉の筋で巻いておこう。
味見をして、うん染み込んでる一口噛むとスープと肉汁が溢れ出し、一見味が濃いかと思いきや葉野菜がそれを包込みまろやかな味わいに早変わりで旨んめぇ。
それじゃあ、皆んなを呼んでご飯にしようか。
ミルンお手伝い有難うな。
「まきまきおやさい!! まきまきおにく!!」
ミルン? もう巻き巻きしなくて大丈夫だから戻って来なさいミルン! なっなにぃ! 巻くスピードが更に上がるだと!?
尻尾がブワッと広がったまま、ミルンの巻き巻きは俺がミルンをモフるまで続いたよモフモフ。