3話 犬耳ミルンと角付き幼女.2
2026/08/03 加筆修正
ミルンが角付き幼女を引っ張る度に、角付き幼女は力を込めて、俺の頭にしがみ付く。そこで問題だ。今の状況を脱する為に、しなければならない事は、一体何でしょうか?
「答えはっ、これだああああああっ!」
「のぢゃっ?」
勢い良く立ち上がり、背中を丸めて前傾姿勢からの、角付き幼女の頭をしっかり掴み、ベッドに向かって────脳天砕き。
「のぢゅっふっ!?」
「うっしゃああああああっ! 首っ、頭が解放されたああああああっ!」
間違いなく技が決まった。そう確信したのにも関わらず、ミルンが不満顔のままだ。
「お父さんっ、まだなのっ!」
「何がって……あぁ、角か」
「何故我を投げたのぢゃっ! 呆けておらぬでっ、早よ助けるのぢゃあっ!」
「面白い光景だ……」
角付き幼女の頭に生えた、立派なドリル角。それが上手い感じにベッドに刺さり、俺の脳天砕きを防いだ様だ。
「手を使わない、倒立みたいだわぁ」
「馬鹿にしておるかやっ!?」
「今なら良い所に、顔面があるのっ」
「なっ、卑怯ぢゃぞこの獣っ! 戦うならば正々堂々と勝負するのぢゃっ!」
「勝負? コレは狩りなの……」
角付き幼女さんや、魔物を狩って暮らして来た、肉食系ミルンに対して、正々堂々なんて言葉が、通じる訳ないんだ。
「むぐぐぐっ、抜けぬのぢゃっ!」
「むふふっ。ミルンの居場所に座った事、じっくりと後悔させてやるの」
このままだと角付き幼女が、ミルンの無限サンドバッグにされてしまうか。
「にしても、これが龍ねぇ……見えねぇ」
「間違いなく、龍ですね」
「っ……院長影さん。頼むから急に現れんの、止めて欲しいんだけどっ」
「これは失礼を」
元、王都の孤児院長の、影さん。
超が付く程の、美人エルフ。
うん、どう聞いても偽名だよね? でもね、名前を聞いても教えてくれないと思うんだ。勿論、年齢も知りません。
「スキルで鑑定したのか?」
「それも御座いますが……いえ、そうですね」
「んっ?」
「彼女は龍。それも、この近くの川の由来となった、魔龍と云われる存在です」
院長影さんは、この角付きの事を知ってるのかねぇ。今絶対、はぐらかしたよな。
「昨日見かけた際は、まさかとは思いましたが……(まさか封印を、解かれるとは)」
「今なんて?」
「何でも御座いません。それで、流さんは彼女を、どうなさるおつもりで?」
「どうって言われてもなぁ」
あの角付き幼女が、魔龍の川の由来となったって言ってるけど、今現在、ミルン専用サンドバッグにされてるぞ?
「しゅしゅっ! ボディがガラ空きなのっ!」
「のぢゅっ!? のぢゅっ!? ぐふぇっ!?」
「……アレが、龍?」
俺のイメージと、かけ離れ過ぎている。龍、竜、ドラゴンと言えば、異世界において無類の強さを誇る、最強種のイメージなんだけど。
「ボディっ! ボディっ! 顔面っ!」
「止めぬぶっ!? 話を聞くのぢゅっ!?」
「えっと、院長影さん……アレが、龍?」
「……の筈ですが」
自身なくなってるじゃん。
そんな事を思いながら、この一方的な状況を、いつ止めようかと悩んでいたら、角付き幼女の様子が変わった。
「お前が泣くまで止めないのっ!」
「止めよと……」
「んっ、ミルンっ!!」
「言うとろうがあああああああああっ!!」
角付き幼女か放ったそれは──威圧。それも、俺が使う威圧よりも遥かにレベルの高い、下手したらこれだけで、人を殺せると思う程の、殺意の圧。
「ぬぅぅぅっ」
ミルンの尻尾が、一瞬にして丸まったんだけど、これはアレだ。ミルンに殺意を向けた、コイツが悪い。
「おいゴラァ……なに人の"娘"に、要らんもんぶちかましてんだおい……今の"威圧"だよなぁ」
「のぢゃっ!?」
俺は全力の威圧を放つと、角付き幼女の威圧とぶつかり、せめぎ合うも、ゆっくりと俺の"殺意"が角付き幼女に向かっていく。それ程に許し難い蛮行だ。
「ただの喧嘩なら良いけどよぉ、今のお前のソレは、喧嘩の域を超えてるよなぁ」
「まっ、魔王の娘ぢゃと……この獣がかや」
「そうだが、何か? 取り敢えず、その威圧を解かないとだ。消し炭にすんぞ……」
「まっ、まま魔王が先に解くのぢゃ! そっそれに、御主はガワは人種であろうっ! 獣が娘なぞっ、可笑しい事なのぢゃ!」
「中身も人だっての。それに────」
話を続けようとしたが、今まで丸まっていたミルンが急に動き出し、ベッドに刺さっていた角付き幼女を引っこ抜いて──ぶん投げた。
「ミルンはっ、お父さんの娘だああああああああああああ────っ!!」
「のぢゃあああああああああっ!?」
「今の言葉は許さないっ!!」
何だっけ今の技名。あっそうそう、ジャイアントスイングだわ。すげぇ速さで外まで飛んで行ったなぁ。
「ミルン……怒りで威圧を弾いたのか? 角付き幼女追いかけて、行っちゃった……ねぇ、院長影さん。どうしよう?」
「止めるしかないでしょう」
「今のミルン、止まるかな?」
「それが、父親の役目ですよ」
暴走ケモ耳娘を止める事が父親の役目って、止まってくれると嬉しいなぁ。




