2話 この子誰の子元気な子.6
2026/03/23 加筆修正致しました。
角付き幼女を捕まえたら、リシュエルからの、突っ込み紛いのアナウンス。
「何だよ今のアナウンス……恐ろし過ぎて、酔いが醒めたじゃん」
「うむぅっ、中々力が強いのであるっ」
「放すのぢゃっ! ムキムキ嫌なのぢゃあああああああああっ! 熱苦しいのぢゃあっ!」
「うぅっ、寒っ。何で俺半裸なの? いつ服脱いだっけ? いかんいかんっ」
必死になって、村長の胸板から逃げ出そうとしている、角付き幼女を横目に、いそいそと服を着て、公然猥褻罪回避完了っ!
「そんじゃあ……どうするかねぇ」
二本の見事なドリル角。黒のドレスを着て、黒い尻尾の生えた、のぢゃのぢゃ煩いこの幼女を、どうするか。
「ええいっ、放せと言っとるの……」
その角付き幼女のお腹から、ゴキュルルルルルゴゴゴッと、人間のモノとは思えない爆音が、響いて来る。
「のぢゃぁ」
「むっ? 抵抗が、無くなったのであるぞ」
「そりゃぁ、今の腹の音だと、相当空腹なんだろうさ。そのままで待っててくれ」
鉄板の上の、残りの肉をお皿に乗せて、再度角付き幼女の元へ向かう。
「可哀想だから、お肉をあげましょその口にっと。おーい、口開けれーっ」
「のぢゃぁぁぁ……っ、肉っ!?」
「ほいハラミっ」
「あむっ……もぢゃもぢゃぁぁぁっ」
「うわぁ、泣きながら食べてるよ」
とても居た堪れない気持ちに、なって来るんだけど、どうしたら良いだろうか。
「何をボーッと呆けておるかやっ! もっと肉を寄こすのぢゃっ!」
あっ、さっきの無しで。直ぐに泣き止んで、肉寄越せと命令して来るぐらいには、この角付き幼女、精神が図太くていらっしゃる。
「んじゃ次はお野菜で」
「あむっ、もぢゃもぢゃ。草だと腹が膨れぬのぢゃっ! 早よ肉を寄こすのぢゃっ!」
「へいへい。んじゃ次は、秘伝のタレにこうして付けて、ほい野菜」
「もぢゃもぢゃ……肉を寄こすのぢゃっ!」
と言ってる割には、野菜を口に近付けると、ちゃんと食べるんだよな。
「のぢゃぁぁぁっ。矢張り生肉より、しっかり焼いた肉なのぢゃあ」
「生肉ねぇ……人語を解する、人喰い魔物なのに、ヤケに弱く無いか?」
「こっ、この我をっ、そこいらの魔物と同列視するなぞっ、魔王の目は飾りなのかやっ!」
ほうほう、魔物では無いと。
確かに、見た目は人寄りだけど、異世界初心者な俺じゃあ、判断付かないわ。
「ドリル角に、鱗付きの尻尾か……分からん。ほれっ、野菜を盛り盛り食べなさいな」
「肉を寄越せと言うとろうにっ!」
「肉一枚に対して、野菜を盛りっと食べる事が、胃もたれ防止に最適なんだ」
三十半ばの歳になると、肉だけじゃあ直ぐ胸焼け、胃もたれ、腹痛になるからな。
「まおーさまっ、わたしもてつだいたいっ!」
「お肉持って来たよっ。その子にあげて良い?」
「んっ? おーっ、さっきは有り難うな。お陰でこうして、捕まえる事が出来たわ」
この角付き幼女の被害者になりかけた、猫耳幼女と虎耳少女が、山盛りの肉を皿に乗せ、すんごい笑顔で近付いて来た。
「その肉、自分達で焼いたのか?」
「ミルンちゃんが、やいてくれたっ」
「凄い勢いで、残りの肉を焼いてたよ」
「……俺が焼いて無いからか。ドゥシャさんに抱っこされながら焼くとか、器用だわぁ」
鉄板の方に目を向けると、ドゥシャさんとミルンのダブルコンボで、次々と焼肉の山が積み上がり、一体誰が食べるのか。
「ケモ耳達も、腹がいっぱいだろうに。残ったら、明日の分にすれば良いか……」
「何をしておるっ! 早よう我に、肉を食わせるのぢゃっ! 草はもう要らぬのぢゃっ!」
「っと、そうだったな。二人共。そいつに肉を、食べさせてやってくれ」
「やったあっ!」
「ほらっ、魔王様の許可も出たし、お口をあーんしてね。いっぱい食べさせてあげるっ!」
「ふむ……喰い損ねた生肉共かや。まあ良い、早う肉を食わせよ。あーんもじゅっ!?」
うんうん、とても和やかな光景だ。
角付き幼女の小さな口に、これでもかと肉を詰め込む猫耳幼女とか、ほっこりするぞ。
「ほら、まだおくちに、はいるでしょっ」
「もじゅっ、むーっ!?」
「私もあーんしたいっ! ほら早くっ、ちゃんと噛んでごっくんしてっ!」
「もじゅんぐっ! 待つのぢゃ御主らっ! 我を殺す気かなのかやじゅもっ!?」
猫耳幼女に負けじと、虎耳少女も肉を詰め込み、角付き幼女の頬っぺたが、リスの様にパンパンに膨れている。
「おとうさんっ! ミルンももってきたのっ!」
そこに現れた、肉に煩い犬耳幼女ミルン。
角付き幼女が肉を咀嚼し、飲み込んだ瞬間に、わんこ蕎麦の如くお代わりをする。
「……子供の容赦無さって、怖えぇぇぇ」
「ほらっ、早く飲み込んでっ」
「おかわりあるよっ」
「にくついかっ、にくついかっ」
「魔王助けっ、もぢゅもぢゅっぷはっ!」
三体一の、肉弾戦。
ミルン、猫耳幼女、虎耳少女達の、可愛い尻尾が揺れてるから、楽しいのだろう。
側から見たら……うん、拷問だわ。
「待つのぢゃ御主らぶっ、もぢゅんぐっ。止めるのぢゃぶっ、んぐっ。止めてたもぶじゅ……ぼふうっ!?」
「やばっ、三人共ストップストップっ!?」
「すとっぷって、なあに?」
「このこ、ねちゃったよ」
「ほら起きてっ! お肉まだまだあるよっ! ほらっ、あーんして、あーんっ!」
「虎耳少女が止まらないっ!?」
急いで虎耳少女を引き剥がし、角付き幼女の状態を確認する。
「息は……してるか。喉には詰まって無さそうだけど、完全に意識飛んでるな」
「おねむ?」
「まだお肉残ってるのにっ」
「ミャーイ、やりすぎだよ」
虎耳少女の名前は、ミャーイって言うのか。ネコ科の名前っぽくて、凄く可愛いなぁ……って、今はそんな事考えてる場合じゃ無いわ。
「村長、もう放しても良いぞ……村長?」
「ぐぅぅぅ、ぐぅぅぅ、ごごっ──」
角付き幼女を、抱き締めたまま、村長が……爆睡をかましてやがるわ。
「酒樽一気飲みなんて、するからだろうに。ミルンはまだ、焼肉食べるのか?」
「まだまだいけますっ」
「肉の山、いつの間にか無くなってるし……また焼くとしますかね」
ケモ耳達の胃袋、丈夫過ぎだろう。幾ら食べてもケロッとしてて、羨ましい。
「あの酒、もう一杯だけ、飲みたいなぁ」
そうして、楽しい肉祭りは終わり、村長から角付き幼女を引っぺがし、親方衆が建てた小屋へと寝かし付け、俺も爆睡した。
ミルン? ドゥシャさんが、屋敷に連れて帰ったな。まだ男子禁制ですから。
「もう喰えぬのぢゃああああああっ!?」
「ぐがっ、何っ!?」
「やめてたもれっ! やめてたもれえええええええええええええっ!」
「っ、朝……か?」
そう言えば、小屋で寝たんだっけ? 親方特性のガラス窓から、良い感じに、光が差し込んでくるわぁ。
「にしても、煩いな」
「のぢゃっ……ここは何処かやっ!」
「おはようさん、角付き幼女」
角付き幼女は、部屋の中をぐるっと見回し、俺と目を合わせて直ぐに、後退りをする。
まるでこっちが、不審者みたいじゃん。
「後ろには、壁しか無いぞ?」
「ここは何処なのぢゃっ。我をどうする気かや……答えぬとっ、いかな魔王と言えど、容赦はせぬぞっ」
「俺、おはようって言ったよな? 起きたら先ずは、返す言葉があるだろ?」
「うひっ……」
満面の笑みで、教育します。
この角付き幼女……親とか何処に居るんだ? まさかこいつ、一人きりとかじゃないよな。
「おっ、おはよう御座いますなのぢゃ……」
「はい、良く言えました」
「我、子供扱いされておらんだか?」
何処からどう見ても、幼女だろうに。喋り方はどことなく、お婆ちゃん臭いけどな。
そんな事を思っていたら、デジャビュだろうか。角付き幼女の腹から、ゴキュルルルルルゴドンッと、ヤバい音が聞こえて来た。
「お前の腹、工事でもしてんの?」
「腹が減ったのぢゃぁ。おかしいのぅ……昨日たらふく、肉を喰ろうた筈ぢゃが」
「それって……」
昨日、ケモ耳っ子達に食わされ過ぎて、ケボった事を忘れてる? 記憶飛んだ?
「んーっと、色々と聞く前に、朝食にするか。今何時かは知らんけど。多分朝だろ」
「喰わせてくれるのかや?」
「ちょい待てよ。"空間収納"から、昨日残った肉と、パンを出してっと」
パンの真ん中に、切れ目を入れて、焼肉を挟み込んで、秘伝のタレをかければ、完成っ。
「ほれっ、これやるから、ケモ耳っ子達を襲うなよ。次襲ってんの見たら……」
「襲わぬのぢゃ。本来我は、生肉は好かぬ。約束するのぢゃあむっ。もぎゅもぎゅ」
「頂きますも言えんのか」
にしても、二本のドリル角、格好良いな。
ドリルは男のロマンっ! なーんて事を言いたくなる程、良い感じにドリルなんだよ。
「……その角、触って良いか?」
「のぢゃっ? 別に構わぬのぢゃ」
「マジで? そんじゃあ、遠慮無く……」
うん、刺さるわコレ。
先っぽが尖ってて、その下にドリルだから、こんなんで刺されたら、一発で死ねるぞ。
『おとうさんのにおいは、ここっ!』
「んっ? 今のは、ミルンの声か?」
『なんでテントにいないのっ!』
その言葉と共に、ドガンッと扉が破壊され、ちょい怒ミルンが入って来た。が、何故か直ぐに動きを止めて、固まってしまった。
「おはようミルン……どうした?」
「おとっ」
「んっ? おと?」
「何してるの? お父さん?」
アレっ……甘えた声じゃ無いっ!?
「えっと、どうしたミルン?」
「何をしてるのか、聞いてるの」
ミルンの目線を追うと、どんなものかと、角付き幼女の角を触っている、俺の手を、ガン見している。
「ミルンの目が……ガチじゃん」
それはもう、獲物を狙う目してんのよ。
ミルンさんや、マジでどうしたの?




