2話 この子誰の子元気な子.5
2026/08/03 加筆修正
そんなこんなで夜となり、湖の近くで、焚火を囲っての肉祭り。もとい、バーベキューを楽しんでいます。
「ほいっ、ほいっ、それまだ焼けてないぞって、半生で食べるなよっ!?」
……俺を除いてだけど。
「貰って行きますぅ」
「肉の追加まだぁ?」
「お肉沢山だあっ、食べて良い?」
熱した鉄板に囲まれて、ひたすらに、ただひたすらに、肉肉野菜肉野菜と焼いているんだけど、直ぐに消えて行くのよ。
「うひぃっ、熱いっ! 汗も蒸発するとかっ、マジで地獄なんですけどっ!」
ミノ肉の鉄板、オーク肉の鉄板、コカトリスの鉄板に、野菜の鉄板。四方からの熱気を浴びせられ、顔が脂塗れです。
「お肉を下さいなっ!」
「ほいほいってミルン……何回目のお代わりだ? 食べ過ぎると、動けなくなるぞ?」
「んと、いち、に、さんかいめっ!」
「嘘吐きなさんな、十一回目だろうに。ほい、ミノ肉のハラミだな」
「むふふっ、頂きます!」
こうして、お肉を美味しそうに「ムゴムゴ」するミルンが見れるから、なんとか鉄板の熱さに耐えれているが、流石にこれはキツい。
「流さん、大丈夫ですか?」
「心配してくれるのは、お前だけだよ……ノーイン。ちゃんと肉を食べてるか?」
「はいっ、皆んなで頂いています」
流石、孤児院のケモ耳っ子達のリーダー。モフモフ狐尻尾の、ノーインだ。気配りも出来て、良いお兄さんをしてるぜ。
「うひっ……コカトリスっ、たべてやるっ!」
「コルル、だいじょうぶ?」
「まけてられないもんっ、ラナスもたべなよ」
コルルとラナスは、仲が良い様だな。見ていてホッコリするわぁ……っ、いかんいかん。ボーッとしてたら、肉がなくなる。
「て言うか何で二百名弱の肉を、俺一人で焼いてんだよ……手伝え村長っ!!」
肉を焼きながら、村長が居ないか周囲を確認すると、凄く羨ましい光景を目にした。
「そんちょっ、あーんしてっ」
「むっ、頂くのである」
「メオもっ、メオもするっ」
あの筋肉村長、犬耳ミウとハム耳メオに挟まれて、癒されてやがる。なんか物凄く、ムカムカする光景なんですけど。
「俺はまだっ、肉を食べていないんだっ!」
「左様で御座いましたか」
「ドゥシャさんっ! 交代してくれんのっ!」
「大変美味しゅう御座います」
ですよねーっ、代わってくれないよねっ。
焼いた肉が消えて行くんですけど、ドゥシャさんも結構大食いなのね。そんなに食べても太らないとか、栄養は何処に……。
「あぁ……胸か」
「旦那様。それ以上申されますと、その目を抉り取る必要が出て来るかと存じます」
「あっ、はい、御免なさい」
この人絶対に、目線で人を殺せるだろ。
「モゴモゴっ、どぅしゃもゴモゴ、たべてる?」
「ミルン御嬢様。お口に入れたまま喋られては、なりませんよ」
「んぐっ、これで良い?」
「はい、宜しゅう御座います」
この人しれっと、ミルンを教育してる? 怖えぇ……ドゥシャさん素で怖えぇ。
「んしょっ、んしょっ、お父さんも食べる?」
「潜って来るとか、危ないだろ?」
鉄板の下には空洞があるけどもだ、少しでもズレたら、火傷しちゃうぞ。
「お肉食べる?」
「食べたいけど、俺の手塞がってるし」
「んしょっ、んしょっ、合体っ!」
「肩車セットオンっ!」
流石ミルン、頭が良いな。肩車スタイルで俺の頭をテーブルにして、その上から俺の口に肉を突っ込むとか、最高です。
「んぐっ、旨んめぇ……汗かきまくったから、濃いタレが最高に効いてるわぁ」
でもねミルン。肉を食べても、失われた水分が多過ぎて、脱水ギリギリなんですよ。
「旦那様、お飲みになられますか?」
「何その飲み物……この香りっ、まさかっ!?」
「商人から仕入れた、普通のお酒に御座います」
「ナイスドゥシャさんっ!!」
鉄板越しに受け取って直ぐ、喉に流し込む。
「くっはああああああっ! ヌルいけどっ、うんめえええええええええっ!!」
「すんすんっ、お酒臭いっ!」
「はぁぁぁっ。ドゥシャさん、もう一杯よろ」
「お父さん、めっ! 飲み過ぎは、めっ!」
おおぅ、ミルンがいつにも増して、肩の上から怒って来るぞ。しかしミルンよ、許して欲しい。お父さんは、喉が渇いているんだっ。
「ドゥシャさん、もう一杯っ!」
「旦那様。ミルン御嬢様が嫌がられておりますので、こちらをどうぞ」
「何これ? んぐっ……うん、普通の水だわ」
ミルンが嫌がる事をしない、流石です。
「っと、なんかふわふわするな……なんだ?」
「揺れてるっ!?」
「あれっ? ミルン何で下りるんだ?」
下りたミルンはそのまま、鉄板の下を潜って、ドゥシャさんの近くに移動した。
「何だ? おっと、肉がなくなるわ。焼きまくって焼きまくって……俺も食べるっ!」
村長の奴、樽ごと酒を飲んでんなぁ。ミウとメオは、ノーインの所に移動したのか。
「さてと……こんだけ騒いでたら、そろそろあの角付き幼女も姿を現すだろう」
その時が、お前の最後だあっ!!
「なんてな。頭ふわふわするわぁっ! 何か凄くっ、楽しくなって来たああああああっ!!」
異世界の酒って、度数高いよねぇ。
◇ ◇ ◇
「ぽぽぽぷ」
潜り続けて、どれくらいなのかや。
もうそろそろ行かぬと、腹の音が煩くて堪らぬし、力も回復せなんだ。
「ぷぷぽ……」
お腹が空いたのぢゃぁ……少し顔だけ出して誰も居なんだら、動くのぢゃっ。
「ぽぽぽ」
そぉーっと、そぉーっと、水音を立てずに、顔を出して、何やら騒がしいのぅ。
「良い匂いなのぢゃぁ」
この香りは、焼肉かやぁ。しかもここから見る限り、皆が笑顔で食しておる。
「楽しそうなのぢゃ……うぅっ、羨ましいのぢゃぁぁぁっ。我も肉が喰いたいのぢゃぁ」
そうぢゃっ! あれだけ歩いておる者が居れば、我が行っても気付かぬ筈ぢゃっ!
「どっこいせっ……そっと行くのぢゃぁ」
そぉっと湖から出て、短い斜面を這いずり、誰も見ていない事を確認したら、匂いの元までこそこそと進む。
「バレてないのぢゃぁ、行けるのぢゃぁ……アレは、何をしておるかや?」
「あそーれほいっ! そぅらほぃっ!」
半裸の男が、変な踊りを踊っておる。
「おら村長もやれやあああっ! あほぃっ!」
「仕方ないっ! ふんぬはああああああっ!」
ムキムキが混ざったのぢゃっ!?
「良いぞ魔さまーっ! ぷあっはっはっ!」
「見えてるっ! 見えてるうううううっ!」
「踊れ踊れーっ!」
これはっ、何かの儀式かやっ。
「恐ろしいモノを見たかや……早う肉を食べて、身を隠さねばならぬのぢゃぁ」
「あっ、さっきのこだ!」
「まおーさまーっ! あの子居たよーっ!」
「のぢゃあっ!?」
気付かれたのぢゃっ!? ここまで来てっ、肉を食べれぬのは嫌なのぢゃっ!
「……のぢゃっ?」
「角付き幼女発見だあああああああああっ!!」
「今度は逃さぬのであるぞおおおおおおっ!!」
「のぢゃああああああああああああっ!?」
半裸のムキムキと凶悪な笑顔の魔王が、凄い勢いで走って来るのぢゃあっ!?
「にっ、逃げるのぢゃっ!」
「駄目だよ逃げたらっ」
「まものごっこしないの?」
「ちょっ、お主ら離すのぢゃっ!」
ムキムキと魔王が迫って来るのぢゃっ!?
ムキムキ魔王は嫌なのぢゃっ!?
「離すの──ぢゃっぶふっうぇっ!?」
はっ、腹に突撃して来おったっ!?
「捕まえたのであるっ!」
「よっしゃあああああああああっ!」
「ぎゃああああああっ!? 暑苦しいのぢゃっ! 全裸ムキムキ魔王は嫌なのぢゃああああああああああああっ!!」
「んあっ? 久々にレベル上がったけど……俺と村長を合体させんなっ!?」
ムキムキ魔王が一人言を叫びおったがっ、これでは逃げられぬのぢゃあああああああああっ!?




