1話 やらかし男の後始末.2
世界樹の雫が入った小瓶から一滴口に入れた瞬間、俺は今まで生きて来た中での最高の高揚感に包まれていた。
身体が輝きを放ち、抑えきれずに叫ぶ。
「ほぉああああああああああああああああ!!」
ゆっくりと輝きが薄れていき、そこに居たのは、お肌艶々顔のシワも無くなり、目元のクマさんさようならをした完璧な俺。
何か一歳ぐらい若返った気分。
「旦那様ですね」
ドゥシャさん、俺変わってないの?
「流君だな…」
筋肉村長、見てわからないのか?
「ぴかってひかっただけ?」
そなのかミルン? 俺、何も変化無し?
皆一同全員が頷く。
腫れと傷が治り、肌艶は良くなったが普段の俺だと言う。あんなに輝いたのに。全部飲めば変わるかもっ…はい、ドゥシャさんに売ったんだったな、取り消しは…出来ないもんな。
それじゃあリスタ、アジュ、俺の不手際ですまんけど王都に行ってアレやコレや持って来て欲しい、お願いします。
「はぁ、何か面白かったですね、分かりました」
「良いぜ! マッスルホース貸してくれんなら四日以内にギルドに招集掛けて戻ってきてやる!」
頼もしいな、さすが冒険者。
ドゥシャさん、支払い宜しくね。
「お任せ下さい旦那様。彼等には相場の五割り増し程でお支払い致しますので」
凄いお金持ちなのねドゥシャさん。
なぜメイドをしているのか…不思議だ。
リスタとアジュがマッスルホースを馬車から離し、颯爽と乗って行ったな、やっぱり速いなぁ村長の親戚は。
「それでは、一旦子供達を休ませましょう。私とドゥシャは屋敷の掃除と出来る限りの改修を、流さんとミルンさんは村の様子を今一度確認して来てください。ヘラクレス様とレネアは子供達のお相手をお願い致します」
影さんが指示だすの、様になってるなぁ、今ドゥシャさんを呼び捨てにしたけど、やっぱり知り合いなの?
「院長様は私の前任者に御座います旦那様」
メイドの? 影さんメイドしてたの? 確かにメイド服着たら超絶クールビューティメイド爆誕しそうだけど、あっはい黙ります…。
「くーるびゅーてぃーめいど! ミルン!」
そうだね、ミルンがメイド服着たら似合うと思うぞ、けどねミルンは可愛い系だからちょっと違うと俺は思うしでも凄く見たい。
んじゃ、影さん、ドゥシャさん、村長とレネアも屋敷宜しく、ちょっと外見てくるわ。
ミルンが俺によじ登り肩車セットオン!
なんだろう、ミルンが肩に乗るとやっぱり落ち着くなぁ…俺、ある意味洗脳されてるよね。
※
でっけぇ穴だなぁ。
ミルンを肩に村? があった場所をぷらぷらと歩き、丁度村の正面入り口から左寄りに直径数百メートルか? 深さは十メートル程のでっかい穴に、水がごぽごぽと湧き出てきている。
このままだと湖になりそうだなとその穴を中心にぐるーっと一周するも、多少無事な畑があるぐらいでそれ以外には何も無かった。
ふと、穴の中心から水が勢いよく噴きだす音が聞こえたが、穴の下を見ても何も無く、まあ良いかと屋敷へ帰ろうと歩き出す。
こんどは水を叩く音が聞こえたのでやっぱり何かあるのかなと戻って穴の下を再確認。泡がポコポコ出ているだけだったので唯の聞き間違いであろう。
「すごいとんでたの! そしておちていったの!」
ミルン、何が飛んでたの? 落ちて行ったって何が落ちて行ったの? と聞いても分からないと言われ、ミルンの尻尾をモフモフして気にせず帰ろうと歩いて行った。
そして屋敷の前で、立ち止まる。
どう言う事だろうか。
俺とミルンが村を周っていた時間は、精々二、三時間っていう処だ。俺は眼を擦り、ミルンの尻尾をモフモフして心を落ち着かせ様とするが、見ている物が信じられない。
「ここおうち?」
そう。ミルンが疑問を口にした様に、全体的に傾き今にも崩れそうだったボロ屋敷が、真っ直ぐに建ち汚れも無く、俺の目の前で、どうだ、綺麗だろう? と言わんばかりに外壁を輝かせていた。
「何これ、どうやったんだ?」
ふと目の端に黒外套を捉えた。
影さんだろうか? なぜ外から屋敷の裏にまわるんだろう。と思っていたら扉が開き、影さんとドゥシャさんが出て来たよあれ?
「お帰りなさいませミルン御嬢様、旦那様」
「流さんお帰りなさい。ミルンさんも村を見て来てくれて有難うございました」
二人はここに到着した時のまま、掃除をしたにしては汗一つかいていない…なぜに。
「影さん、今屋敷の裏に行かなかったか?」
気になるから聞いてみよう。
行ってない? 見間違い? そうかなぁ。
「流さん、先ずは中に入って村の状況説明を。ミルンさんはゆっくり休んで下さい」
はぐらかそうとしてないか?
はいはい状況説明ですね、睨まないで下さい。
美人に睨まれると萌えますからね。