1話 やらかし男の後始末.1
直径何百メートルか分からない水が溜まってる穴を横目に見ながら杭を地面に打ち付け、目印を建てて行く。
辺りには小さいが立派な小屋が建ち並び、空いた土地には建築屋のおっさん達が黙々と新しい小屋を建てて行く。その前段階として、ここに小屋を建てて下さいの目印な訳だが、あと何十個打ち付ければ良いのか、先が見えない。物理的にも、精神的にもキツい。
「なんで俺がこんな事をせにゃならんのか」
まあ、俺が村をちゅどん! ってしたからこんな事してるんだけど…。
「働きたくなぁあああい」
だらだらと、打ち付けましょう、杭さんをってな、早く今日の分終わらせてミルンをモフろう癒しが欲しいからな。でも、先は長いなぁ。
「おいアンタ! 早く杭を打ってくれねえと仕事できねぇだろうが!!」
はいはい。建築屋の親方に怒られたよ。
【1話 やらかし男の後始末】
深夜にスーパーマーケットで買物をした俺は気付いたら森で豚野郎とランデブーして川に流され、犬耳幼女ミルンをモフモフしてミルンを殺そうとした人達を半殺しにしたら王都で魔王扱い。筋肉村長、何ちゃって聖女と猫耳メイドをお供に王都で暮らしているケモ耳っ子達を助けるついでに女王ルシィを泣かして豚野郎を煮豚にして暗躍していた大臣をその尻に突っ込み気付けばちょっと偉い人になりました。そして完璧メイドのドゥシャさんを連れ、皆んなでラクレル村へと向かいそのラクレル村が魔物さん達に占領されていたので気軽に魔法を撃ったらラクレル村が無くなりましたテヘッと逃げようとしたら村長に捕まりフルぼっこにされてケモ耳っ子達に噛まれ餡子詰まった丸い紳士みたいに顔が膨らみましたよ痛いんですけど。
と、村の状況を確認する為に俺は引き摺られながら向かっていますもう逃げないから!!
魔物達は骨すら残っておらず、家屋や田畑は全壊かと思われたが、村の奥、森の直ぐ手前のあのボロ屋敷が奇跡的に残っており、一先ずそのボロ屋敷へと馬車を進め屋敷へと入る。
ボロ屋敷の周りの木々は横倒しになり、雑草は枯れ果てているがなんでこの屋敷無事なんだ? 不思議パワーか? 口の中、痛いなぁ。
「リスタ君とアジュ君。来て直ぐで申し訳ないが至急王都に戻り各職人達を呼び集めて来て欲しい。金は陛下より頂いた報奨金と、そこの元凶である流君が出す。お願い出来るであろうか」
村長、何勝手に俺の金…はい御免なさい。
はい、はい、お金有るだけ出せ?
また、無一文ですか俺。
女王から給料でるの? 幾ら?
全部復興に充てる!?
「ぞんなごむだいな!」
うん、顔が腫れて喋りにくいよね。
でも伝えねば! おれの金が消えてしまう!
残り少ないのに!
「ごれでぢょうにが…」
小さな小瓶に入った液体を村長に差し出す。
俺の空間収納が間違い無いならこれだけで結構な金になる筈。何せ伝説の木の名前があったからね。
「なんだねこの液体は?」
村長は小瓶を摘み上げ、まじまじと見ているけど落とすなよマジで。
村長の後ろから影さんがひょこっと顔を出してその小瓶を見た。
影さんが今まで見たことのない程に眼を見開き、顎が外れんばかりに口を開いて小瓶を指差しー
「世界樹の雫では無いですかぁあああ!?」
ーと、俺も村長もミルンもドゥシャさんもレネアもリスタもアジュさえも、影さんがこんなに驚きを声に出す姿を見て驚いてるぞ、ケモ耳っ子達は首を傾げてるし。
「がげざんじっでるの? ごれいぐらぐりゃい?」
売って少しでも俺の負担を減らしたい。
減らして、むしろ無くしてゆっくり遊びたい。
働きたく無い、責任は嫌だ!!
「流さん、世界樹の雫で現存している物は、この国で一つ、隣国で二つのみです。
世界樹が枯れ果て、その雫の採取が出来なくなってから千年程経つと言われていますが、この小瓶一つでジアストール城が五つ建つと思って貰っても宜しいかと」
まじか! やったよ金持ちじゃん!!
それならラクレル村の復興資金出しても余りあるお釣りで人生勝ち組ケモ耳っ子達とのんびり過ごせるじゃないか!
「小躍りしている所で申し訳ないですが、売りたいと思っても買える人がいません。多少、損を覚悟で手放す事も考えてはどうかと」
一気に奈落に落とすなよ!?
確かに考えて見たら城五つ分の金を誰が出せるんだって話だよね…これが本当の、宝の持ち腐れだよねーははははぁぁぁ溜息止まらんわ。
もう欲は出さないから復興資金と相殺でどうにかならないかなぁ。
「それでしたら旦那様、僭越ながらその雫、このドゥシャめにお譲り頂けないでしょうか」
ドゥシャさんコレ知ってるの?
聖女でも治せない病を治せる?
若返える事が出来る? 若返りの薬!?
凄いな世界樹の雫って。
「お譲り頂けるのでしたら、復興資金に加え金貨五百枚をお支払い致します」
売った! 取り消しは効かないぞ!!
目先の欲に負けたんじゃ無い!
俺は楽がしたいだけなんだ!
でも一つだけお願いを聞いてくれ!
「ギズなおるならためしでいい?」
ほんの一滴だけだからっお願い!
良いのか! やったぁあああ!!
それじゃあ、一滴頂きまーす。
んぐっ………!?
「ほぉああああああああああああああああ!!」
「おとうさんがひかってる!?」
「流君!?」
「旦那様!」
「流さん!」
「院長先生この光何!?」
「眩しいなオイ!」
「アンタ何した!?」
「「「眩しいよー!!」」」
俺は全身に輝きを放ちながら両手を広げた。
何これ? 俺、今最高に気分が良いの!!