プロローグ②
【プロローグ②】
聖女リティナは流達と別れた後、女王ルルシアヌ・ジィル・ジアストールに会いに執務室を訪れていた。
「行ったのか彼奴は。全く、ようもこの王都を掻き回してくれたものじゃ」
女王は、口は悪く言うものの今迄手が出せなかった腹黒い煮豚と、煩い大臣を処分出来て寧ろ嬉しい気持ちが漏れ出ていた。
「笑うとるで女王様?」
そうかのうと直ぐ惚ける。
コイツは歳上の癖して人を小馬鹿にするのが大好きなお子ちゃまやからな。
「それで、ウチが頼んだ本は見せてくれるんやろーな?」
ジアストール建国当初に書かれた古い書物。
魔王に関する本を探している。
「分かっておるわ、影、持って来るのじゃ」
いつの間にウチの横に影が現れて本を差し出して来た。
そしてそのまま歩いて部屋を出て行く。
「いや、帰る時は消えへんのんかい!?」
ハッ、思わず突っ込みを入れてもうた!
恐ろしいわ影っちゅー人ら。
まあええわ、それじゃあ見させて貰うで。
ふんふん。
へーなんやそれ?
コイツ頭おかしいんちゃうの。
「女王、アンタこの本の中身見た事あるん?」
女王にストレートに聞いてみる。
女王は眉を上げ、首を横に振った。
「儂は昔の魔王なんぞに興味はないからの、興味があるのは今の魔王だけじゃよ?」
それが何か? と聞いて来たが、やっぱりこの女王はアホちゃうかと思ってしまう。
その本は、一部、魔王の名とおぼしき処が擦れて読めずにいるが、記されている内容が事実ならばあの場所、流と最初に合ったラクレル村の近くで、初代国王と魔王の配下である龍が戦い、封印されたとの記述がある。
一冊とは言え分厚く、この場で全てを読む事は出来ないであろう事から、聖女リティナは本を借り受け、扉の前で待っていたニアノールと共に借宿へと戻った。
部屋を出る際に聖女リティナは、
「女王、この本貸してくれて有難うな」
と女王に礼を言った。
それを女王は訝しみ、影に聖女リティナの監視を命令した事を、リティナはまだ知らない。