プロローグ
【プロローグ】
二度に渡り神の叫びが地上に降り注ぐ。
普通の者であれば何も感じず、軽く台風や作物の実りに影響がでる程で、世界には微々たる物の筈であった。
魔龍の川の底より遥か下で、その神の放った波動に揺さぶられるように眼を開けた者。
不快感に眼を覚ますが、力が出ない。
動こうとするも、大地に挟まれ、さらに巨体が邪魔となり動く事が出来ない。
ここは何処かと眼を動かすが、岩と土に水が滴り、それ以外何も無い。
窮屈に苛々し、何も無い事に不満を露わに叫びを上げるが、その場所に響くだけで何も変わる訳では無かった。
ゴギュルルルッと腹の虫が鳴く。
寝ていれば空腹を感じる事も無かったであろう。
そう言えば前に食事をしたのはいつなのか。
今はいつなのか。
疑問が頭の中を駆け回る。
ゴギュルルルッ。
腹が減ったとまた叫びを上げる。
そんな事を幾度も考え叫ぶ内に、ようやく答えに辿り着いた。
この巨体が邪魔ならば、小さくなれば良い。
小さくなって穴を堀り、ここから出た後また大きくなれば良いじゃないかと。
その者は、なけなしの力を振り絞り力を使うと、光を放ち見る見る小さくなっていく。そして、光が治ると直ぐさま歩き、爪で土を掘りだし岩を裂き、ゆっくりと、ゆっくりと、上へ上へと進み、どれ程進んだのか。
まだか、まだかと掘り進めた先の大きな岩を力の限り全力で壊した瞬間、大量の水が流れ込んで来て顔面を直撃し掘り進めた穴を流れて行き最初の穴倉へ帰還。
その状況に気付き地団駄を踏むが、大量の水が流れ込んできている事をこれ幸いと待ち、穴倉に水が満ちた時にそのまま上へ上へと水中を泳いで行く。
泳ぐ先で光が見えた。
あと少しと水を蹴り、そのまま空中へと飛び出すこと数十メートル。
地上を空から見渡して、その者は近くにぽっかりと空いた大地を見つけ、そこを目印に行ってみようと思い、地上に降り立つ筈であった。
翼が無い事に気付きそのまま落下して川へ突っ込み、泳いで来た道のりをそのままの勢いで戻って行き、横穴に吸い込まれて何処かへと流されて行く。
何処へ行くのやらと水中で考えながら、腹の虫がまた鳴いた。
お腹が空いたのぢゃ。