プロローグ
2026/03/01 加筆修正致しました。
『ああああああああああああああっ何っから突っ込みを入れて良いか判らない処理をするな馬鹿者おおおおおおおおおおおおおお!!!』
一度目の波動で、ピシィッと、封印に傷が走り、それでも、壊れる事は無かった。
『村滅ぼしてんじゃ無いのよおおお──っ!? このっ、お馬鹿あああああああああああああああああああああ────っ!!』
二度目の波動で、パリィンッと、封印が粉々に砕け、その巨大な体躯を揺さぶった。
二柱の神の、本気のツッコミで発生した、ほんの小さな、小さな波動。
普通の者であれば、何も感じず、台風や作物の実りに影響が出る程で、世界には、微々たるものの、筈であった。
そう、筈であった。
短い期間で、二度に渡り、神の波動を受けた"モノ"が、ゆっくりと眼を開ける。
力が出ない。
記憶も曖昧だ。
動こうとするも、大地に挟まれ、巨体が邪魔となり、動く事が出来無い。
その"モノ"は、ここは何処かと眼を動かすが、岩と土に水が滴り、それ以外何も無い、洞窟の中の様だ。
窮屈に苛々し、叫び声を上げるが、その場所に響くだけで、ただ煩いだけ。
ゴギュルルルッと、腹の虫が鳴いた。そのまま寝ていれば、空腹を感じる事など、無かったであろう。
腹が減った。血の滴る肉が食べたい。
いつ食事をしたのだろう。
ここは、何処なのだろう。
そんな疑問が、頭の中を駆け巡る。
ゴギュルルルッと腹の虫が鳴き、苛々して、また叫びを上げた。
そんな事を幾度も繰り返し、叫ぶ内に、ようやく答えに辿り着く。
この巨体が邪魔ならば、小さくなれば良い。
小さくなって、上へと掘り進め、出た先で獲物を狩れば、窮屈からも、空腹からも解放される、一石二鳥の案だ。
そのモノは、僅かに残る力を振り絞り、記憶の奥底に薄っすらと残る、人の姿へと、自らの身体を、作り変えて行く。
暗闇の中、光を放ち、ゆっくりと、ゆっくりと、その身体の大きさを、縮めて行く。
光が収まると、自らの手足を確認した。
力が弱まっている所為なのか、やたらと小さく、先程まで窮屈に感じて居た場所が、やたらと広く見える。
そのモノは、動き出した。
壁へと向かい、横穴を掘り進め、頃合いを見計らい、上へ上へと、その手に伸びる立派な爪を使って、掘り進めて行く。
地上はまだか、地上はまだかと、掘り進めた先で、大きな岩が邪魔をして来たので、立派な角の生えた頭で、頭突きを一発。
見事岩に亀裂が走り、粉々に砕け散った。と同時に、鉄砲水が顔面を直撃し、掘り進めた穴を逆走して、最初の洞窟へと帰還。
そのモノは辺りを見て、それに気付き、地団駄を踏んで、声を荒げた。
恨めしそうに、勢い良く流れ込んでくる水を睨み、さてどうしたものかと、考える。
考える事、一時間。
ピコーンっと、二本の角の間に光が灯り、閃いた感を、自ら演出する。
洞窟内に水が溜まるのを、のんびりと待ち、上から流込んで来る水と、繋がった瞬間、泳いで行けば良いのだ。
洞窟に水が満ちる間、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライをしながら、身体を水に馴らし、ついでに落ちて来た小魚を食べ、少しでも小腹を満たす。
そうして時間を潰していると、洞窟内が水で満たされ、そのモノは上へと泳ぎ始めた。
上へ上へと、鯉の滝登りの如く、水の流れに逆らいながら、そのモノは泳いで行く。
泳ぐ先に光が見えた。
あと少しと水を蹴り、そのまま空中へと飛び出すこと、数十メートル。
「────ほぅ」
空から地上を見渡して、そのモノは、近くに"ぽっかりと穴が空いた大地"を見つけた。そこを目印に、行ってみようと思い、地上に降り立つ、筈であった。
「のじゃっ?」
翼をパタパタするが、飛べない、飛ばない。
「の────ぢゃふっ!?」
そのまま落下して、川へと突っ込み、自ら開けた穴へと吸い込まれ、知らぬ間に開いていた横穴に嵌り、スポンっと呑み込まれた。
「がぽぽぽ────」
何処へ行くのやらと、水中で考えながら、ゴキュルルルルルと、また腹の虫が鳴いた。
「(お腹が空いたのぢゃぁ)」
何処までも、何処までも流されて行く。
何処までも、何処までも……そして────




