1話 やらかし男の後始末.5
2026/08/03 加筆修正
鑑定持ちの羽人さんが見た俺の称号は、半魔王。イコール、半分魔王というモノだ。ケモ耳達って魔王崇拝者なの? 俺に向かって跪かれても、出せる物は御座いません。
「えっとな……この村の長は、そこのヘラクレスって言う筋肉だぞ? 住んでも良いかどうかを決めるのも、勿論村長だ」
「この地は、魔王様の庇護下にあるのでは?」
「違う違う。俺は補佐みたいなモノだし、移住を許可出来る立場にない。住みたいなら、村長の許可を貰ってくれ」
俺が女王であるルシィと、約束を交わした内容は、移住者達の面倒を見る事。許可云々の話は、俺の関与するところではない。というのは建前で、村長に丸投げ出来れば、俺が助かる。崇拝なんてされたくないわ。
「……流君」
「あれっ? 商業ギルドの人と、話終わったのか? なんで怒り顔なんだよ」
「(面倒事を、私に押し付ける気かねっ)」
「(いや、ここの代表は村長だろ?)」
「流君まさか……いや、何も言うまいっ」
何だ、急に下がったぞ? 俺の言ってる事を、理解してくれたのかね。
「済まぬが、見ての通り家がまだない。多少不自由な思いをさせるが、陛下の命により、移住を認めるのである」
「あっ、有り難う御座いますっ」
「ここに住めるのか……」
「魔王様がいらっしゃるなら、安心できるぞ」
「自分の畑を持てるのか……うぅっ、やっと、マシな生活が出来るっ」
ここに居るケモ耳達は、ルシィが寄越したケモ耳達だから、移住出来るのは当たり前か。代表である村長の許可も貰ったし、早めに生活環境を整えてやらないとだ。
「村長、頑張ってくれよ」
「何を言っておるのだ流君。君も村の復興の為に、働いて貰わねばならぬ」
「えっ? 職人さん居るんだし、俺要らないだろ。邪魔になったらどうすんの?」
「なあに……流君でも出来る、簡単な仕事ばかりなのである。私の事を代表と認めたのならば、従って貰うとしよう」
さっきの意趣返しか。だが村長、忘れちゃいないだろうな。この地の長は村長だけど、立場的には俺が上だという事を。
「相談役として、従うのを断固拒否するっ!」
「この村を塵と化した責任を取るか、私にまた殴られるか、どちらにする?」
「脅しとかっ……チッ、何すれば良いんだ」
「先ずは、村を囲う柵の設置である。このままだと、魔物が来ても守れぬ」
そりゃそうだわな。ゴブリン一匹でも、子供達からしたら立派な脅威だし、村を守る為の柵は必須だろう。
「でもなぁ……柵か」
木の柵なんて、直ぐ壊されるだろ。それならただの柵とかではなく、城壁の方が良いんじゃなかろうか。
「あそこの山って、岩山だよなぁ……」
城壁ならケモ耳っ子達も、安心して暮らせるし、村を一から作るなら、規模を拡大しても文句は言われないだろう。
「なあ村長」
「何かね、その笑みは」
「建築屋の親方、借りて良いか? 村の防備に関わる事だから、ガチでするわ」
「何を考えておるっ」
「そんなん、ケモ耳っ子達の安全だ」
「むぅ……」
悩む必要なんて、ないのにな。一度やると決めた以上、妥協なんてせず、最後まで徹底的にやり尽くすぞ。
「その目は、本気であるな……バリアス殿っ! こっちへ来てくれっ!」
「なんじゃいっ! 儂は今から、木材の調達をせねばならんと言うのにっ!」
「建築木材か、丁度良いじゃん」
「何じゃ御主っ!」
「良いから聞けよ。俺のスキルをフル活用して、速攻で資材を集めてやるからさ」
俺の思い付きを、村長と親方に伝えると、二人とも即了承。そりゃぁ、作業効率爆上がりだし、コレが出来るのは、俺だけだからね。
「ミルンは……ネリアニスが見てくれているから、大丈夫だな。それじゃあ親方、準備しといてくれよ」
俺とミルンが、初めて出逢った場所。
魔龍の川近くの山。
樹齢何百年なのって、聞きたくなるぐらいの大木が、所狭しと生えている。そんでもって、普通の山と岩山が、隣同士の有り難い場所。
「ほいほいほいっと、素材集め無双だわ」
「……山が簡単に、削られて行きますね」
「凄えスキルだなっ!」
「リスタ、アジュ、魔物来たら頼むぞーっ、ほい"空間収納"。おっ、あの岩もーらいっ」
リスタとアジュに、俺の護衛を依頼して、大量の木材と岩を回収。手ぶらでぶらぶら、村へと帰り、親方の前に積み上げる。俺の物と思うだけで簡単収納、流便。引っ越し屋とかに、向いてそうなスキルだな。
「……はっ!? おうお前らっ! 呆けてねぇでっ、仕事をおっ始めるぞっ!」
「「「へぃっ! 親分っ!!」」」
「親方だよな? 何故に親分……」
山と村を行ったり来たりと数十回。ほんの僅かな時間で、城壁用の石材が、それこそ山の様に集まりました。
「ここからは、親方衆の仕事だ。皆宜しくっ!」
「おうお前らっ! 道具は持ったなあっ!」
「「「へぃっ!」」」
「そいじゃ行くぞ──っ! せいやっ!」
「「「そいやっ!」」」
「せいやっ!」
「「「そいやっ!」」」
「せいやっ!」
ドガガガガガガッと、削岩機の様な音を立て、岩がゴリゴリ姿を変えて、あっという間に長方形ブロックになりました。
「化物親方衆だ……怖ぇ」
ある程度の数を作ったら、再度空間収納内に保管して、城壁予定地へと運ぶ。位置でいうと、ラクレル村跡地を越えて、王都側へ三千歩進んだ所だ。二キロ程だろうか。
「時計が有れば、楽なんだけど。"空間収納"」
「流さんが居れば、石材運びも簡単ですね」
「色々使える、便利なスキルだぞ。リスタはスキルを、持ってないのか?」
「持ってますけど、戦闘系ですから。アジュも同じで、冒険者向きですね」
「へぇ……俺のスキル、変なモノばっかりだから、少し羨ましいわ」
こうして加工した石材を、山の様に積み上げておくと、親方の子分達が集まって来て、近場に小屋を建てた。城壁作りの拠点だろう。
「うしっ、運びまくるか。リスタ、ここの護衛は任せたぞ。アジュは村の護衛だからな」
「任せて下さい」
俺のちょっとした思い付き。村の規模を拡大して、城壁で囲い、ケモ耳っ子達が安心して暮らせる場所を作る。
「最初に会った豚野郎なんて、俺の倍は大きかったし、木の柵なんて意味ないだろ」
そうしてまた、行ったり来たりと石材を運んでいると、もう壁が作られてんのよ。
「化物だらけじゃん……流石異世界」
数百キロの重さの石材を、まるで小石の様に持ち上げて、壁の上の職人に『おらよっ』と声を出して、投げ渡してんの。
「護衛要らないんじゃね? 何よアレ……」
足場も作らず、そのまま垂直に駆け上り、あの見た目で忍者なの? 異世界忍者?
「なあ、そこの職人さん」
「へいっ、何でしょうや」
「アレって、どうやってんの? 皆さん化物?」
「あぁ、アレはスキルでさぁ。人や物問わずに一定時間、重さを十分の一に出来るんですわ」
「何それ? 全員チート持ちかよ」
俺の意味不明な魔法と、交換して欲しい。空間収納とそのスキルがあれば、マジで忍者になれるじゃん。
「おーいっ! そこの兄ちゃんっ!」
「んっ? 親方じゃん。なんだーっ!」
「そろそろ杭打ちしてくれぇーっ!」
「……杭打ち?」
何じゃそりゃと親方の方へ向かうと、俺の終わらぬ地獄が、こうして始まったのである。
「で、今に至ると……よいしょっ!」
杭と杭の間は、六メートル。
道幅三メートルとして、形の違う杭を使い分けて、畑区画、居住区画となる目印とし、間違えない様に打ち込んで行く。
「何百戸建てる気だよ、あの筋肉めっ」
直ぐ近くの穴を見ながら、悪態を吐いていると、そこからパシャっと音が聞こえた。
「んっ? 何か飛んだ?」
太陽光が眩し過ぎて、良く見えない。すると今度は、ドポンっと音が聞こえ、何かが落ちて行った様だ。
「逆光で見えなかったけど……デカい魚か?」
そっと穴を覗き込み、溜まってきている水を眺めたが、何も見当たらない。
「と言うか、落ちたら危ないな。この穴こそ、柵で囲んでおかなきゃ駄目だろ」
手が空いている職人達にお願いをして、山から採って来た大木を材料に、穴の周りを囲う様にして、柵の完成。移住希望者達も手伝ってくれたので、人海戦術で夜までにやり切ったぞ。
「疲れた……辺りも暗いし、そろそろ帰って、ミルンの尻尾に癒されよう……ふへぇ」
こんなに働いたのは、社畜時代以来だなぁ。そんな事を懐かしみながら、ふらふらと屋敷へ歩いて行った。




