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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンの居る世界

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1話 やらかし男の後始末.3


 2026/03/10 加筆修正致しました。



「うへぇ……中も凄い綺麗じゃん」


 ドゥシャさんと院長影さんが、ほんの僅かな時間で修繕した、ボロ屋敷。

 補修では無く、修繕なのだ。

 床板が張り替えられ、壁も傷一つ無く、少しの埃も積もっていない、立派なお屋敷。


「内装変わってね?」


「んしょっ、ふんでもぬけないゆかっ」


「ミルンは付いて来るのか?」


「おとうさんと、みてまわるの」


 綺麗な屋敷に、ミルンは興味津々だな。肩から下りて、床を踏み付けてるわ。


「と言う事でドゥシャさん。状況説明の前に、屋敷の中を見て回っても良いかな?」


「ミルン御嬢様が望まれるのでしたら、問題のう御座います。どうぞ、御案内致しましょう」


「だってさミルン」


「たのしみっ!」


 先ずはこのエントランス。

 天井に吊るされたシャンデリアは、どう見てもお高そうな一品だろう。そこから、優しい光が降り注ぎ、俺達を照らしている。


「どうやって灯りを付けてんの?」


「専用の小さな魔石を、ふんだんに使用しております。名工の作品に御座いますね」


「名工って……」


「おたかそうっ」


「ドゥシャ。私は子供達を見て来ますので、後の事は任せましたよ」


「畏まりました。旦那様、ミルン御嬢様。各部屋を御案内致します」


 院長影さんは、ケモ耳っ子達優先だな。流石孤児院の、院長先生だ。


「ここは、なんのおへや?」


「開けて見て下さいませ」


「んーっ、えいっ……うんちべやっ!」


 一階には、調理場、食堂、トイレ、壁をぶち抜いたであろう、ケモ耳っ子達の大部屋。

 先ず驚いたのは、トイレだ。

 何で驚くのかって?

 水洗式の、洋風トイレなんだそ? ポッとんでも無く、和式でも無い、座れるおトイレ。

 

「苦労しました。浄化槽の劣化が酷く、詰まりかけておりましたので。あのまま使用しておりましたら、爆散に御座います」


「あれ修理出来たんだ……触ると糞尿爆発するって言われてた、あの浄化槽」


「うんちばくはつ?」


「爆発する前で、良かったわ」


 調理場でも水が使えて、配管を通り、浄化槽をぐるっと回っての、うんち流しに再利用。その水も、ぐるっと回って再利用。

 異世界なのに……超技術じゃね?


「それでは、二階へどうぞ」


 二階には、そこそこ広い部屋が五つ。

 一部屋八畳程だろうか。

 

「こうして見ると、マジで屋敷だわな。あの奥に鎮座していた、オークの剥製は、どこに置いたんだ? 処分したのか?」


「裏口に設置致しました。魔物の剥製などは、大変貴重な物に、御座いますので」


「アレが貴重ねぇ……」


「おにくはおそと?」


「アレは剥製だから、食べられないぞ」


 部屋にはベッドのみで、他の家財道具は無く、色々と用意が必要だろう。

 

「最後は、地下に御座います」


「地下って言うと、ヤバい程汚かった、あの風呂場か……ちょっと楽しみだな」


「ぬくぬくおふろっ」


 地下に行くと、先ずは脱衣所。ここも八畳程の広さで、休憩用の椅子が二脚置かれてあり、のんびり出来る空間となっている。


「んで、この先が浴槽か」


「多少拡張致しましたので、ゆったりと、湯に浸かれるかと存じます」


「あの短時間で、拡張工事もしたのかよ」


 いくら異世界ファンタジーでも、ドゥシャさんと院長影さんだけで、ここまでするって、無理があるぞ。


「おふろにとつげきっ!」


 ミルンが先に行っちゃったよ。

 ドゥシャさんは、自信満々の顔してるし、取り敢えず、見てみるとしますかね。


「おーふろーばは、どんなんだっ……マジかっ」


 コレは、個人宅の浴槽では無い。

 簡単に言うと……銭湯です。

 十畳以上は有るだろう、石造りの湯船。その中央には、あの犬耳天使ミルンが、お座りしたまま口を開き、湯を吐き出している。

 その像を眺めるミルンも、お座りしたまま口を開いて、何かを吐き出そうとしている。


「ミルンさんや、何してんの?」


「あのミルンのまねっ!」


「止めなさいって」

 

 あのミルン像。ミルンの犬耳や、可愛いお目々だけで無く、尻尾の毛の一本に至る迄、細かく再現されている。各部屋に一体ずつ置きたい、再現度の高さだ。

 職人の、ミルンへの愛を感じるな。

 誰が作ったんだ?


「如何でしょうか。僭越ながら、私めが岩を削り、ミルン御嬢様を、再現させて頂きました」


「そりゃあ、ドゥシャさんしか居ないよな。あの像、各部屋に置けたりする?」


「可能に御座います。数日程、お時間を頂きますが、宜しいでしょうか」


「問題無い。お座りミルンだけで無く、斧持ちとか、バリエーションを変えて、作ってくれ」

 

 あの像は素晴らしい物だ。なんなら、ラクレル村を復興させるにあたって、村の各所に、ミルン像を設置しよう。


「おとうさんが……わらってる。なんで?」


「可愛いミルンが居るからな。笑顔にもなるさ」


「ぞうよりも、ミルンにかまってっ!」


 ミルンがミルン像に、焼き餅を焼いている。


「ぶふっ……可愛いっ……」


 頬っぺを膨らませ、ぷんぷんと怒るミルンも、可愛い過ぎて鼻血が出ます。


「これで、以上に御座います」


「しれっと言ってるけど、異常過ぎだろ。こんなんどうやって、二人でやりきったのさ」


「……ミルン御嬢様、一階へ参りましょう」


「はーい」


「無視っ!?」

 

 一階に戻り、大広間へ入ると、村長を枕に、ケモ耳っ子達が爆睡していた。そんな中で、院長影さんだけは、せっせとケモ耳っ子達に、毛布をかけたり、涎を拭いたりと、忙しそうだ。


「どうでしたか流さん。住み易い家にしたつもりですが、問題は無いでしょうか?」


「問題なんて、ある訳無いじゃん」


「それは良かったです。それで、大変申し訳無いのですが、夕食の準備をお願いしても、宜しいでしょうか」


「そういや、もうそんな時間か。オーケー、任された。院長影さんとドゥシャさんも、少し休んでなよ。出来たら起こすからさ」

 

「助かります」


「御言葉に、甘えさせて頂きます」


 どんな無茶して、この屋敷を修繕したのかは知らないけど、目の下に疲れが見えんのよ。


「ふごっ、ぶふぅーっ。ふごっ、ぶふぅーっ」


 村長も、ケモ耳っ子達の相手をして、疲れたのか、鼠人のメオに顔面を掴まれて、息苦しい筈なのに、起きる気配が無い。


「……そんじゃ、お料理するとしますか」


「ミルンもてつだうっ!」


「そりゃ心強い。さてさて、何を作ろうかねぇ」


 ミルンと二人で調理場へと向かう。

 この調理場も、どこぞの料亭かと思う程の広さで、まな板、包丁、各種鍋等、なぜか道具が一式揃って、完璧なのよ。

 

「一体何処から、持って来たのやら」


「なにつるくの?」


「何作ろうかなぁ……」


 お肉ばっかりだと、ケモ耳っ子達の身体に悪いだろうし、なるべく野菜を食べさせたいんだけど、空腹だろうしなぁ。


「お肉と野菜……ロールキャベツか」


「ろーるきゃべつって、なあに?」


「んっ? お野菜とお肉を巻いて、じっくり煮込んだ、胃もたれしないお料理だぞ」


「おにく……すくない?」


「少なくないって。そんな不安そうな顔しなくても、お肉も沢山巻くからね」


「おにくをまくっ」

 

 先ずは鍋に水を入れ、火を着けて、沸騰するまでそのまま放置。その間に、"空間収納"からオーク肉を取り出して、薄切りにします。


「ミルンは、薄切りお肉に塩を頼むぞ」


「おしおっ! ぱっぱっ、ぬりぬりーっ」


 キロ単位で、薄切り肉を量産したら、"空間収納"から、キャベツっぽい葉野菜を取り出して、軽く水洗い。


「おとうさん。おなべぐつぐつ」


「ちょっと待ってなーっと。火の調整は……これか? 良しっ、弱火になったな」


 お次は、巻き巻き作業だ。


「それじゃあミルン。このお野菜と、オーク肉を、こうして巻き巻きしたら、この細い脂の筋で、キュッと縛るんだ」


「まきまきおやさい、まきまきおにく?」


「そうそう。巻き巻きを、量産してくれ」


「わかりましたっ! まきまきがんばるっ!」


 一人五個としても、ミルン、ミウちゃん、メオ、ノーイン、モスク、ラナス、ノリス、コルル、ラカス、モンゴリ君に、村長、院長影さんとドゥシャさん。そして最後に俺の分。


「余裕を見て、七十個作るか……余ったら、空間収納に入れておけば、いつでも食べれるし」


 ぐつぐつしている鍋に、秘伝のタレをぶち込み、隠し味に、トマトっぽい野菜を入れたら、後は巻き巻きして、煮込むだけだ。


「巻き巻き縛って、ほい一個。巻き巻き縛って二個目だよっと……七十個って、結構辛いな」


「まきまきおやさい、まきまきおにくっ。まきまきおやさい、まきまきおにくっ」


「ミルンの集中力が凄いっ。もう五個も、巻き終わってるじゃん」


 しかも、大量の涎を垂らしながら、一心不乱に、巻き巻きお肉をしている。

 ゾーンに入ってるよね? ミルンの目が、獲物を見る目をしてんのよ。


「巻いたお肉貰うぞ?」


「まきまきおにくっ。まきまきおやさいっ、まきまきおにくっ。まきまきおやさいっ」


「聞いてないな……」


 巻き終わったお肉から、鍋に投入。

 鍋を沸騰させない様に、気を付けながら、じっくりと煮込んで行く。


「鍋一個じゃ足らんか。そんじゃ、もう一個の鍋に、水を入れてと」

 

 一個目の鍋には蓋をして、二個目の鍋にも、秘伝のタレと、トマトっぽい野菜を入れ、じっくりと待つ。


「一個目の鍋は、良い感じだな。ミルン、味見してみるか?」


「まきまきおにくっ。まきまきおやさいっ、まきまきおにくっ。まきまきおやさいっ」


「……聞いてないよな。それじゃあ、ミルンのお口にそっと近付けてっと」


「まきまきおや──あむっ! モゴモゴ、モゴモゴ、モゴモゴっ、うましっ!」


「さいですか」


 鍋の二個目にも、ミルンが巻き巻きした、ロールキャベツを投入して、あとは待つだけだ。

 七十個以上、煮込んでますからね。


「ミルン。手伝ってくれて、有難うな」


「まきまきおやさいっ! まきまきおにくっ!」


「ミルン……もう巻き巻きしなくても、大丈夫だから、残ったお肉を放しなさいっ!」



「まきまきおやさいまきまきおにくまきまきおやさいまきまきおにくまきまきおや────」



「巻くスピードが上がったっ!?」


 こうしてミルンの巻き巻きは、材料が尽きるまで、続いて行くのだった。


「……ミルンの尻尾って、膨らむんだなぁ」


 本気のミルンを、垣間見たぞ……。



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