17話 異世界とは ケモ耳幼女が居る世界
空高く舞い上がる爆炎に、そこにある全ての物が塵となって消えてゆく。
その光景を俺達はただ見ているしか無かった。
俺は爆風に耐え歯を食いしばり、ミルンを撫でてその耳元で囁き、ミルンは頷いて俺の肩の上に乗る。
村長はミウちゃんやメオを護り、ドゥシャさんと影さんは他のケモ耳っ子達を馬車の後ろへ誘導して迫り来る爆風をやり過ごし、レネアやリスタ、アジュ達は腰を抜かしたままその直撃を受けて転がっていく。
俺は激しい爆風の中、ゆっくりと歩き出す。
皆んなが気付かないその内に。
そして────
【17話 異世界とは ケモ耳幼女が居る世界】
流石のマッスルホースだな。
リティナの馬車に比べてスピードは遅いが、それでも十六人乗っても足取り軽やかに進んでいるのは凄い。
村長の肩にはミウちゃんが遠くを眺めながらのんびりしてるし、膝の上ではメオが行者の真似事みたいにマッスルホースに、いけーと命令している。
「こらこらメオ、あまり前に行くと落ちるではないか!」
時折村長がメオをちゃんと叱りつけて座らせるという何とも微笑ましい光景を見ながら、俺は馬車の屋根上でミルンと日向ぼっこを満喫していた。
この短期間の間に起きた事を振り返りながら、俺の腹の上で丸まってるミルンを撫でる。
リシュエルはなぜ俺を見ているのか。
俺はなぜこの世界に来たのか。
母さんはなぜこの世界に居たのか。
父さんも来ているのか、来ていたら何処にいるのか。
考えても、考えても、それを説明出来るのは、あのフワフワした内にドス黒い何かを宿したリシュエルのみ。
「それでも、今が幸せなんだよなぁ」
村長やリティナやニアノールさん、影さんにケモ耳っ子達、ルシィにドゥシャさんや色んな人に出会った。
そして何よりミルンが側に居てくれる。
俺はそれが何よりの幸せだ。
そんな事を思いつつも、もう少しで到着か。
「流君!!」
村長どうしたの慌てて叫んでって、村長が指差した先、ラクレル村が遠くに見えるが…。
「まものさんいっぱい!」
ミルンの言う通り、人が居なくなって数日で魔物さん達に占領されちゃってますね。
影さん! ドゥシャさん! レネア、リスタ、アジュ! ケモ耳っ子達を護れ!!
俺は指示を出し、馬車から降りる。
なぜならマッスルホース達が怯えて、先へ進まないからな、リティナのマッスルホースはやっぱり特別だったという事だろう。
ミルンが斧を手に、村長もミウちゃんとメオを後ろに下がらせようと動いている。
まあ、任せろ。
あんな魔物達なぞ俺の魔法の餌食にしてくれる。
だってもう暴発の心配無いし、気軽に使えてお手頃な魔法さんあざっす。
「ミルン、見てろよーデカいのいくぜ!!」
「でかいのいくぜ!」
ミルンが真似してくれたよテンション上がるわ!! これならあんな魔物達一瞬で塵に変えてやるぜふははは!! もうほぃっと軽くね!
「ほぃっと軽くね!」
あれ? 何かコレ前にもあったような。
何も…起きないな。
大丈夫だったか、ふぅ。
「おとうさん…うえ」
ミルン、尻尾震えてるぞ大丈夫か?
上? 上には何も…。
あー、何か落ちて来るな…映画で観たことあるような奴だ。
紅に燃えた巨石が雲を突き抜け、その勢いのままに落下する。落ちた衝撃と熱風で範囲を絞らず破壊を撒き散らす、神話の中にでてくる属性魔法の最上位────
────メテオライトフォール────
────巨石がラクレル村へ落ちた瞬間、空高く舞い上がる爆炎に、そこにある全ての物が塵となって消えてゆく。
その光景を俺達はただ見ているしか無かった。
俺は爆風に耐え歯を食いしばり、ミルンを撫でてその耳元で囁き、ミルンは頷いて俺の肩の上に乗る。
村長はミウちゃんやメオを護り、ドゥシャさんと影さんは他のケモ耳っ子達を馬車の後ろへ誘導して迫り来る爆風をやり過ごし、レネアやリスタ、アジュ達は腰を抜かしたままその直撃を受けて転がっていく。
俺は激しい爆風の中、ゆっくりと歩き出す。
皆んなが気付かないその内に。
「旦那様! ミルン御嬢様を連れてどちらへ?」
くそっドゥシャさんに気付かれた!
駄目だっ煙が晴れていくぞ!?。
俺はミルンを肩に走り出す。
「流君っゴホッっどこだね! 大丈夫か!」
村長が走る俺を見て、ラクレル村…があった場所を見て、走る俺を見て、額に血管をピキピキさせてミウちゃんとメオを影さんに預け走って来た!?
「そんちょうおこってる!」
だよねーミルン。
俺のせいかな俺のせいだよね!
だから逃げなきゃ生きる為に!!
「では、私もお供致しましょう旦那様」
やっぱりドゥシャさん走るの速いよね!?
「なーがーれく────ん!待ちたまえぇえええええええええええ!!」
やばっ、ミルンが肩にいるから追いつかれそうだ走れっ今は走って逃げろ俺! ケモ耳っ子達にはまた会えるし、今はミルンがいるから大丈夫だーはっはっは。
ドゥシャさんが余裕で横に並走して、後ろから鬼の形相で追いかけて来る村長、俺に肩車されてはしゃいでいるミルン、もっと後ろから俺を逃すまいとケモ耳っ子達が影さんと一緒に走って来る。
村一つ塵と化した張本人だけど、碌でも無い人間と自分で分かってても、ここなら笑顔でやっていけそうだ。
なぜなら。
俺の肩の上にはケモ耳幼女が居るのだから。
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが1上がりました(破壊者乙)
ピンポンパンポーン(下がり調)
それ今じゃ無くねぇええええええ!?
村長が背後に迫っていた。
俺の脚よ! もっと速く!
もっと速くぅううううううううっ! あっ。