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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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29話 リティナの調べ物


 2026/06/28 改稿



 魔王とは──このエイドノア大陸で数体程確認されとる、人種とも、獣族とも、魔物とも違う異質な存在。


 ウチが産まれるずっと前から、その存在は知られとって、そん魔王の噂はどれもこれも、耳を疑うようなエグいもんばっかりや。そんな魔王にも、例外は居る。西の大国、アルカディアスのあんババアや。


 女王、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールと一緒に、一度だけ会った事があるけど、目を合わすだけで、その存在感だけで、下呂を吐きそうになるほどの化物やった。

 それやのに、こん国に攻めて来えへん。

 障害となる山々があるとは言え、本気で攻めて来られたら、ジアストールなんて小国、あっと言う間に潰せるにも関わらず、今に至るまで、攻めて来る事はなかった。


 ジアストール王国は、小国や。それやのに、北の帝国、南の連邦、西のアルカディアスの大国共は、ちょっかいは出して来おるけど、本腰を入れては攻めて来えへん。


 女王曰く、『ジアストール王国は小国なれど、その武力においては、大国に勝とも劣らぬわ』などと自慢してたけど、ウチからしたら違和感しかなかった。


 元暗部の長であり、ウチの育ての親でもある院長先生に、一度だけ聞いた事がある。なんでこん国は無事なんやと。すると院長先生は──『他国はこの国の"逸話"を、畏れていますから』なんて言うてきて、意味が分からんかった。


 院長先生の言うた逸話。

 一般には知られているのは、初代ジアストール王と魔龍の話やけど、この手の話は大概、子供を寝かせる為の"方便"や。

 わざわざラクレル村ん近くの危険な森に、誰も入らへんようにする為に、近くに流れとる川にまで、"魔龍の川"って名前を付けて、それっぼくしとるだけの、ただの嘘や。


 今までは、そう思っとった。あん流にーちゃんに逢うまでは、嘘やと思ってたんや。


 院長先生から聞いた話の中に、ウチら孤児院の奴らしか知らん、"一般には知られてへん"話がある。それこそ、寝る時に聞かされとった、単なる作り話やと思うてた。

 昔に聞いたさかい、内容は殆ど覚えとらんし、今更院長先生に聞いたとしても、答えてくれへん気がするけど、一つだけハッキリと覚えとる。それは──ジアストールにも"魔王"が居ったちゃう話や。


 流にーちゃんが、ウチらに見せた魔法。

 アルテラ教の文献に載ってた、遥か昔に失われたとされる、人の身では行使できへん有り得へん魔法──"天候操作"。

 流にーちゃんは、『旱天慈雨』って言うてたけど、あん時は孤児院が燃えてたし、餓鬼共の治療に専念してたから、聞かれへんかった。

 そして、大聖堂を消し飛ばした魔法。

 その魔法に関しては、文献にしっかりと載ってた。古の浄化の炎──"神級魔法・ファイヤオブジャッジメント"っちゅう、神の炎や。


 意味が分からんかった。

 流にーちゃんの見た目は、多少格好良い唯のおっさんやし、自分の目を疑ったわ。せやけどその魔法を見て、思い出した。院長先生が言ってた、ジアストールの魔王。

 魔王って一体なんやねん。

 あない魔法を使えるのなら、ジアストール王国だけやなくて、他国を潰し、エイドノア大陸そのものを、支配できるんちゃうかと、そう思える程規格外の存在や。

 知りたくなった。

 魔王ちゅう存在を、調べなあかんと思った。


「どうやニア、何か残っとるか?」


「駄目ですねぇ。ものの見事に更地ですぅ」


「チッ……やっぱあかんか。大聖堂に保管されてた本やったら、手掛かりがあるか思って、来てみたけど……こん状態やしな」


 ジアストール城の真横に、真っ黒に焼け焦げた平地だけが広がる、アルテラ教大聖堂跡地。

 大聖堂には、神級魔法に関する貴重な書物や、歴史的資料が保管されてたんやけど、それが綺麗さっぱり消えてもうた。


「ずっとしゃがんどるから、腰が痛いわ」


「リティナ様。流さん達の見送りには、行かなくても良かったんですかぁ?」


「調べもん終わったら、ウチらもラクレル村へ行くんやから、そんなん要らんやろ」


 騎士ヘラクレスに院長先生。リスタ、アジュの二人もおるし、闇ギルドのレネアもおる。なんや知らんメイドもおったけど……院長先生と話しとったから、暗部臭いねんなぁ。後はトドメに流にーちゃん。


「野盗や多少の魔物程度なら、襲った瞬間即殺やん。心配する方が馬鹿らしいわ」


「あーっ、そうですねぇ」


「そう思うやろっと……ここで時間潰しててもしゃあないな。やっぱあそこしかないか」


「行くんですかぁ?」


 貴重な書物やら、禁書を保管しとるんは、何も教会だけやない。あまり気乗りせえへんけど、行くしないやんなぁ。


「しゃあなしや。女王んとこ行って、色々と調べさせて貰わなな……面倒やけど」


「喧嘩しないで下さいねぇ?」


「それはあん女王次第やっ!」


 ほんまっ、会う度会う度嫌みしか言うてけえへんし、ウチより多少歳上っちゅうだけで、下に見て来よるからな。


「あん性格やから、十八にもなって、縁談の一つもないねん。猫被りがバレとるんやろな」


「それぇ、陛下の前では、言っちゃあ駄目ですよぅ? 絶対に喧嘩になりますらぁ」


「事実を言っとるだけや」


 ほんま、早よ調べもん終わらせて、さっさとラクレル村に行って、のんびりしたいわ。



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