18話 みんなでお引越し.3
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マッスルホース付きの馬車、購入完了。
リティナの馬車よりも、一回り程小さいが、十人程度なら、余裕で運べます。
支払いは、勿論金貨。
管理してるのは村長で、重たそうな皮袋を、店長の前に置いてたな。
馬車は少しだけ、メンテナンスをするので、引き渡しはまだらしい。
「時間空いたなぁ。ケモ耳っ子達の様子でも、見に行ってみるか」
「ミウにあえる?」
「会えるぞ。何処に避難してるかも、ついでに確認しておこう。ドゥシャさんも来るか?」
「勿論、お供させて頂きます」
「それじゃぁ、スラムに行きますか」
チラッと横目で、ドゥシャさんを見る。
ラバーホースの店長の様子だと、本当にメイドなのかと、疑いしか湧いて来ない。
様付けされるメイドねぇ。
村長に探りを入れろと、目配せをするも、目線を逸らして無視したぞ。
「旦那様。女性をその様に、横目で見るモノでは御座いません」
「っ、分かるものなの?」
「女性は常に、視線を意識しておりますので。だからこその、メイドに御座います」
「悪かった、気を付けるよ」
ドゥシャさんのは、視線を意識云々と言うレベルを越えて、達人っぽいんだよなぁ。
歩く音とかしないのよ。
今歩いてるの、砂利道なのにさ。
もやっとする気持ちのまま、歩いていると、焼け焦げた後の、独特の臭いが、漂って来た。
「さてっ、影さんはどこだ?」
「あそこにいるの。なにかさがしてる?」
「必死になって、何を……人形?」
孤児院は、全焼を免れてはいるものの、ふとした拍子に崩れても、おかしく無い状態だ。
にも関わらず、子供達の物を探す。
「頭が下がる思いだわ」
「流君。我々も手伝うのである」
「分かってるよ。こう言う時に、役立つスキルを持ってて、良かったぜ」
空間収納なら、特定の範囲であれば、物を回収出来るからな。
安心安全に、作業が可能だ。
回収をしている、影さんの下に向い、そのままお手伝いを、開始します。
「戻られたのですね……感謝致します」
「御礼は、全てが終わってからで良いよ。馬車の手配も済んだし、後は、ケモ耳っ子達の、引越しの準備だけだ」
「はい。貴方に頼んで、本当に良かったです」
この院長影さん、真面目だよなぁ。
「影。お久しぶりに御座います」
「ドゥシャですか。人の成長は、早いモノですね。随分と、立派になった様で……」
「その様な事は、御座いません。未だ、貴女には遠く及ばず、申し訳御座いません」
「謝る事はありません。貴女は、私とは違い、立派に務めを、果たしているのですから」
ドゥシャさんが、院長影さんと知り合い?
そう不思議な事でも無いか。
ミルンのお世話係に、ドゥシャさんを寄越したのはルシィだし、影さんと知り合いなのも、頷ける話だ。
「おとうさんっ、これなあに?」
「んーっ、木の枝にしては、妙に太いな。取り敢えず、回収しておこう」
「もっとみつけます!」
「あまり奥に、行っちゃ駄目だぞ。崩れるかも知れないし、危ないからな」
「はーいっ!」
俺は適当に、『空間収納』を使いまくって、柱や壁以外の物を、全て回収しまくります。
分別は、後でも出来るからね。
「……ゴミの回収業者でも、食っていけるなぁ」
「流君。君は相談役なのだから、回収業者にはなれぬのである。頼むから、問題だけは、起こさぬようにな」
「聞き耳立てるなよ、村長。相談役なんて、いつクビになるか、分からないだろ」
「そう易々と、剥奪されぬのである」
それは、どうだろうかね。
あのルシィの事だから、ふらっと現れて、『御主、相談役クビじゃから』なんて、普通に言いそうなんだ。
「待てよ……俺的には、有り難い話だな」
「余計な事を、考えるで無いぞ」
「っと、今はそうだな」
そうして、一通り回収し終えた俺達は、院長影さんの案内で、ケモ耳っ子達が保護されていると言う場所まで、来る事が出来た。
「ここに……ケモ耳っ子達が、保護って……」
その場所は、何と言えば良いのか。
分かり易く例えると、マル暴の施設かな。
もっと端的に言うと、組事務所。
だって、今現在進行形で、どう見ても堅気じゃ無い人達に、囲まれてますからね。
「到着するなりコレとか。何で囲まれてんの?」
「私に心当たりは、無いのである」
「流さんの情報が、出回ったのでしょう。このジアストールで、今一番の危険人物と、されていますから」
「原因俺っ!? 人相書きの所為かっ!」
確かに、囲んでいる連中の視線は全て、俺に集中している訳で、どう言う訳か、囲んでいる連中の方が、怯えています。
「襲われてるの、こっちだぞっ」
「おとうさん。たまつぶす?」
「うーんっ、まだ攻撃されて無いからなぁ」
やられたら、万倍にしてやり返す。
専守防衛ってヤツだ。
だからこそ、悩むんだよ。
「旦那様。この者達は恐らく、闇ギルドに属する者達かと存じます」
「何じゃそりゃ。裏の組織?」
「左様に御座います。特定の事を除き、裏の仕事をこなす、専門家達に御座います」
「嫌な専門家だなぁ」
コイツらが、闇ギルドの者達なら、この施設はコイツらの、本拠地って事?
「影さん、知ってる奴居るか?」
「全員知りませんね。彼が居てくれれば、話が早いのですが」
「ケモ耳っ子達を、保護してる人か?」
「そうです。闇ギルドのボスなのですが、彼等に言っても無駄でしょう」
闇ギルドのボスに、保護して貰ってるとか、ケモ耳っ子達は、大丈夫なのか。
埒が開かないから、話しかけてみるか。
「おーい、お前ら。俺達は、お前らのボスに、用事があるんだ。呼んで来てくれないか?」
優しく聞いているのに、ゆっくりと、距離を詰めて来るって事は、敵対確定かな。
「それ以上近付けば、敵対行為とみなす。武器を向けた瞬間、敵対行為とみなす。その意味を、分かってるよな?」
「うごいたらっ、たまつぶすっ!」
ミルンもヤル気満々だ。
コレは、一人か二人、見せしめにして、上下関係を分からせにゃ、ならんのかね。
攻撃を誘ってみるか?
「あんっ? お前今、動いただろ?」
囲んで居る奴から、適当に選定。
「ひっ、うっうう動いて無いっ!?」
「ミルンも、アイツ動いたの、見たよな?」
「うごいたのっ! たまぬくのっ!」
ミルンの言葉が正義です。
さてさて、"威圧"さんの出番かなっと。
魔法発動っ、準備良しっ!
豪炎なら、良い感じに焼き焼きするだろうし、見せしめには丁度良い。
「それじゃあ一丁っ、暴れてみますかっ!」
「流さん。戦う必要はないかと」
「っ……出鼻を挫かないで」
危うく前のめりに、転ける所だったぞ。
「丁度彼が、帰って来た様ですね」
「彼って、闇ギルドのボスが来たのか?」
俺達を囲んでいた連中が、サッと左右に分かれて、九十度の御辞儀をする。
その中を、ゆっくりと歩いて来る者。
「おいおい兄いちゃんよぉ、恐い面するなや。オメェらも、客人に何しとるんじゃぁ?」
「えっとぉ、何処かで会ったような……」
「ぎるどのハゲなのっ!」
「ああっ! 冒険者ギルドで会った人っ!」
予想通り、堅気の人じゃ無かった様だ。
見た目通りの、裏の人。
見たまんまっ!
「おぉ嬢ちゃん、久しぶりぶりやのぅ」
「顔怖っ。おっさんが、闇ギルドのボスだったのかよ。何で普通に、冒険者してんの?」
「かっかっかっ! 表ん仕事もせんとぉ、目ぇ付けられるからのぉ」
「あぁ……慈善事業みたいなモノか」
悪い事をしているだけだと、暮らせない。
何故なら、より力の強い者に目を付けられ、そのまま潰されるからだ。
だからこその慈善事業。
ようは、外面をしっかり固める。
「で、この周りの奴らは何なの? 俺囲まれて、危うく燃やす所だったぞ」
そんな事を話してたら、何人か動いた。
「ゴラァっ! いつまでボスの邪魔しとるんじゃ餓鬼ぃっ! 道開けんかいっ!!」
「ボスに向かってっ、何生意気言うとるんじゃぼけぇっ! 良い加減いてまうぞっ!」
「ゴミ山埋めるぞタコがぁ!」
「餓鬼コラァ! 何笑っとんじゃあ!」
愛されてるねぇ、ボスさんは。
でも、お前らは、俺の嫌いなタイプだ。
「うん、本気で潰すぞお前ら……」
「ぬきとる?」
「そうだな。玉を抜き取ろうか」
「死に晒せやぼけぇっ!!」
一人向かって来るか。
刃物持ってるし、やるしか無いかな。
「儂の客人や、ゆうちょろうが」
チンッと、音がした。
ただそれだけの筈なのに、俺の額には汗が浮かび、向かって来ていた男が、いつの間にか倒れている。
「今のっ……居合い?」
ボスの手には、見覚えのあるモノ。
鞘に収められている、刀。
抜刀術って、異世界にもあるのっ!?
「すまんのぅ兄ちゃん。若けぇ奴らぁ、短気でいけねぇや。そこの院長先生から、話聞いちょるけんのぉ。子供達んとこ、案内するわぃ」
「あっ、ああ。お願いします」
「おとうさん、びびってる?」
「ボソッ(ミルンさんや、ビビるってっ)」
動き見えなかったし、何より怖い。
今のアレよ?
知らない内に、首が飛ぶやつ。
「ヤナギさん。子供達の面倒を見て頂き、有難う御座います。流さん、行きましょう」
「カカッ、構わんけぇ。院長先生にはぁ、色々お世話に、なっちょったけぇのぉ」
影さんやっぱり、知り合いなのね。
正直、ケモ耳っ子達が心配です。
子供ってね、真似するの。
あそこで突っ立っている、筋肉村長を真似して、マッスルしてたからね。
「任侠の世界に、入って無いと良いんだけど」
「たまつぶさない?」
「ああ。もう大丈夫みたいだから、俺の肩に乗っても良い……ドゥシャさん?」
「ミルン御嬢様は、お任せ下さいませ」
ミルンがドゥシャさんに、捕まりました。
「どぅしゃ、はなして?」
「ミルン御嬢様。念の為にで御座います」
そりゃぁ、今から入る場所が、闇ギルドの本拠地だから、警戒は必要か。




