17話 ジアストール城内の探検.9
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「はっはっはっ! では、やろうではないか!」
「目が笑って無いんだよ……っ、面倒な」
村長との、強制模擬戦開始です。
ハッキリ言おうっ!
魔法無しでっ、勝てる気がしない!
「因みにさ……魔法使っても、大丈夫なのか?」
「上手く扱えるのかね? 流君の魔法は、そう易々と、打てるモノでは無いのであろう」
「へぇっ、良く見てんのな」
村長が、ジリジリ間合いを詰めて来る。
「あの時、幾度も打たれて、その後も、何度も見たのでな。条件が有ると見た」
俺対策バッチリって事ね。
正解と言いたいけど、言えないわな。
「さぁね。魔法打つのに、条件なんてあんの?」
手に持つ木剣が、ペーパーナイフに見える。
剣のど素人の俺が、どう足掻いても、村長に勝てる未来が見えません。
「高位の魔法使いであったとしても、何某らの条件を整えねば、使えぬ魔法もあるのだ」
「そりゃ、御高説どうも……」
村長が一歩、前進する度に、俺は二歩以上、後退しなければならない。
体格差と言うか、脚の長さだな。
一歩が大きくて、ただ怖い。
「ボソッ(こちとら小中高大と、帰宅部オンリー生活だったんだぞっ。無理に決まってるだろっ)」
剣道すらした事無いのに、どうしろと?
魔法使いたくても、村長から意識を外した瞬間を狙われて、即殺されんじゃん。
「あの時の覇気を、感じぬのである。そう逃げ腰では、剣は振れぬであるぞ」
「んな事言われてもなぁ」
隙を見て、全力で逃げようと、画策中です。
逃げるが勝ちって、言葉が有るんだから、俺の負けにはならない筈だ。
嘘です、負けで良いです。
「埒が開かぬっ。流君に、先手を譲ろうではないか。その際、反撃はせぬぞ」
「おっ、それ本当か?」
「うむっ。流君の攻撃が終わったならば、私の番である。それならば良いであろう?」
甘い男だな、村長は。
どんな雑魚にも、ナメプは命取りだぜ。
流さんにも、犬歯は有るんだ。
「……頭カチ割られても、恨むなよ」
「早く来るのであるっ」
良しっ、俺の殺人剣をっ、見せてやるぜっ!
伊達にヌルヲタはやってないんだよ!
「どたまカチ割ったらああああああ──っ!!」
村長は、先手を譲ると言って来た。
一回の打ち込みとは、言っていない。
ならば……取れる手段はただ一つ。
「先ずは脚いいい──っ!」
ポコッ────「むっ?」
「次に腕えええ──っ!」
ペコッ────「うっ、うむ……」
「お次に首いいい──っ!」
ペシッ────「ぬぅぅぅっ」
「止めのっ、頭カチ割りだあああ──っ!!」
コンッ────「ふむ……」
ふぅっ、打ち込み終わったぜ。
で、何さっきの打ち込み音。
木刀が当たったにしては、やけにオモチャちっくで、可愛らしい音だったぞ。
「流君……まさかここまで、貧弱だったとはな」
村長の顔が、物凄く申し訳なさそうな感じだけど、貧弱って言うなよ貧弱って。
それでも、あれだけ打ち込めば、痣の一つぐらいは、出来てるだろう。
そう、思ってました。
「何で村長、一つも痣が無いんだよっ!?」
「君の力が、弱過ぎるのだっ」
「そんな訳っ……そう言えば、俺の力のステータスって、平均値の十五パーセント……」
今更ながら、貧弱ステですね。
下手したら幼稚園児にも、負けるんじゃね?
これは不味いっ、不味過ぎる。
「なあ……村長」
「なんだね……流君」
「逃げて……良いだろうかっ」
「この距離ならば、逃す訳が無いのである」
そりゃぁ俺との距離、近いもんね。
「頼むからっ、痛くしないでね?」
「加減はするのであるが、痛みを無しには出来ぬ。さて、覚悟は良いかね?」
覚悟なんて、有る訳無いだろ。
それでも、防ステータスなら、力ステータスよりも結構高いしっ、一撃ぐらいなら……死なずに耐えて下さいっ!
「では……行くぞっ! 流君っ!」
大雑把な横降りっ!
動きが遅いっ、これなら対応出来るぞっ!
「ふはははっ、馬鹿め村長っ! 俺の華麗なフットワークをっ、見るが良い!」
村長の横降りを、軽くしゃがみながら、後ろへと避ける。そのつもりだった。
しかし、その横降りの軌道が、変わる。
「甘いぞ流君! ふんっ!」
「横降りはフェイントっ!? 頭狙いか!」
何とか木剣を上に向け、ガードしようとするが、そんなの、出来る訳が無い。
ブオンッと言う、空気の裂ける音が聞こえて直ぐ、俺の意識が、飛んで行きました。
『しまったっ!? まさか、受ける事すら出来ぬとはっ。むっ……待ちたまえミルン君!?』
『お父さんに怪我させたっ! 許さないっ!』
ふわふわした空間に、俺は居た。
遠くで誰かが、『おーい、流ーっ』と、手を振りながら、呼んでいる。
あれは、父さんと母さんかな。
呼んでいるなら、行かなくちゃ。
そう思い、ゆっくりと歩き出す。
「あれっ? 俺……何してたっけ?」
歩きながらも、思い出そうとするが、頭にモヤがかかった様に、思い出せない。
「でも、二人が呼んでるなら、行かなくちゃ」
久々に会えたんだ。
色々と、話がしたいんだ。
だんだんと二人に、近付いて行く。
すると、目の前に、大きな川が現れた。
「ここを渡るのか……」
川の向こうでは、『おーいっ、流ーっ』と、いまだ二人が呼んでいる。
行くしか無い。
そう思い、川へ入ろうとしたその時、ポケットの中に、何かが入っている事に、気が付いた。
出して確認してみる。
「……何で毛玉? モフモフしてんなぁ」
大きめの、金色っぽい、ただの毛玉。
なのに何故か、それをモフモフしているだけで、気持ちがスッと、落ち着いて来る。
「あれっ……父さん? 母さん?」
両手で毛玉を、モフモフしていたら、川の向こうに居た筈の、二人の姿が消えていた。
「何が……二人は何処に?」
パシャっと、川の中で、何かが跳ねた。
「この川、魚いんのか?」
そっと、川を覗き込む様に、見てみる。
何も居ない。
そう思い、これからどうしようかと、後ろを振り向いたその時────誰かの怒声が、聞こえた様な気がした。
『うしっ、それじゃぁこのまま────っ、いつまで寝とるんじゃボケェっ!!』
ドゴスッッッ────「んぎゃああああああたまがああああああ──っ!?」
エグい痛みが頭を襲い、悶え苦しみながら、目を開けました。
少し涙目になりながらも、原因を探す。
同じ痛みをっ、味わって貰う為にだ。
「どうしたん、そないキョロキョロして?」
原因は……リティナっ、お前かっ!?
「頭っ、今っ、頭っ、殴ったのお前なの!?」
「んな訳あるかいな。失神しとった流にーちゃんを、治療したってんで?」
「失神? 治療? 痛っ、どうなってんの?」
「そない考えとる暇無いやろ。あそこの二人止めな、色々不味いんとちゃうの」
あそこの二人?
リティナが視線を向ける先に、ガチギレミルンと、筋肉村長が、格ゲーみたいな動きで、バトルを繰り広げている。
『玉潰すっ! 玉潰すっ! 許さないのっ!』
『動きがっ、鋭くなって来たのであるな!』
「村長? ミルン? ガチバトルじゃんっ!? ミルン止まれ──っ!!」
「ほな、ウチはまだ、用事があるさかい。ホンマっ、頭には気を付けや。ニア、行くで」
この状況的にどうやら、マジでリティナが、俺を治療してくれた様だな。
お礼ぐらい、言っておくか?
「リティナっ! 怪我治してくれて、有難う! マジで助かったわ!」
「これは貸しにしとくわ」
「分かった。返せるか分からんけどな」
「期待しとらんわ。ほなな、ニア、行くでーっ」
行っちゃったな。
貸しにされても、本当に、返せるのか分からんのに、変なリティナだわぁ。
「お父さ──んっ!」
ミルンがこっちに、気付いてくれ様だ。
ズドドドドドドッッッて、勢い良く走ってるけど、あのまま衝突されたら、俺間違い無く昇天するよね。
「ミルンっ! ストオオオ──ップ!」
はいっ、後一秒遅れていたら、正面衝突。
ミルンの顔が近いんです。
「お父さんっ、お怪我は無いの!?」
「……甘えたミルンじゃ無いっ!?」
「頭っ、大丈夫? 痛くなあい?」
「うん、その言い方だと、色々と誤解を招きそうだけど、大丈夫だぞミルン」
ミルンが俺の背中に、よじよじと登って、肩車セット状態で、脳天を凝視して来ます。
上からの視線って、恐怖を感じるわぁ。
「あーっ、思い出した。アレだっ、ちょっと村長が、筋肉ハッスルし過ぎた所為で、受けんのに耐えられなかったんだ」
「痛いの痛いの、飛んでって?」
「ミルンさんや、何故痛みにお願いなんだ?」
それでも、ミルンが俺の頭を、撫で撫でしてくれるだけで、痛みが和らぎます。
不思議だよね。
「ふぅ……ようやく起きたかね。危うくミルン君に、潰されるかと……肝を冷やしたのである」
来たか、この筋肉めっ。
「余裕だった癖に、良く言うわ。だから言ったろうに、俺に剣は無理だって……」
「う……うむ。まさか、あそこまで貧弱だったとは、正直驚いたのであるぞ」
「頼むからっ、見た目で察してくれ」
俺、もやしよ?
村長との筋肉を比較すると、月とスッポン。
無理に決まっとるわ!
「にしても……有難うな村長。ミルンに結構、手加減してたんだろ」
「うむっ。最後の方は、正直肝を冷やしたのであるっ。力加減が、難しいのでな」
「パンチ、あたらなかったっ!」
甘えたミルン、お帰りなさい。
「駄目だぞミルン。こんな筋肉に、正面から戦うなんて、無謀過ぎる。股間を狙うのなら、寝静まった時を狙って……プチっとだ!」
「起きて早々っ、何を教えておるのだ!? ミルン君もっ……狙うでないぞ」
「ちょっとした冗談だよ。なあミルン?」
「パンチするならっ、おきてるとき!」
そうそう、ミルンの言う通り、ちゃんと起きた時に、プチッと潰すんだ。
「起きてる時なら、問題無いよな?」
「寝起きも駄目だぞ……流君っ」
「冗談冗談っ、やる訳無いじゃん……」
「冗談に聞こえぬわ!?」
本当に、ただの冗談なのに。
「おはよう御座います、旦那様」
このメイドさんっ、急に現れるなぁ。
この人今さっきまで、離れた位置で、村長とミルンのバトルを、観戦してたのに。
「……観戦、楽しかった?」
「それなりに御座います」
「止めてくれても、良かったんじゃね?」
「問題無しと、判断致しました」
駄目だ、また頭が痛くなるっ。
そろそろ戻って、作業再開しようか……結局俺っ、運動してないぞっ!?




