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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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28話 皆で出発ラクレル村へ.1


 2026/06/28 改稿



 リシュエルと遭遇してから、早二日。のんびり王都観光をする筈が、怒涛の毎日を過ごし、このまま王都に長居すると、また何かが起こりそうな気がしたので、帰る準備の真っ最中。


「んで、結局リティナは王都に残るのか?」


「なんや急に。餓鬼共は院長先生が見とるし、調べもん終わったら、ウチもそっち行くわ」


「調べ物?」


 ケモ耳っ子達が乗る、少し大きめの馬車一台と、護衛の三人が乗る、小ぶりの馬車一台。その二台の状態確認を、リティナとこうしてやっているのだが、車輪を確認する聖女って、やっぱり聖女らしくない。


「ていうか、ニアノールさんはどこに居るんだ? いつも一緒に行動してるだろうに」


「んな訳あるかいな。ウチの護衛は王都の外だけでええし、今は空いとる宿を探しとるわ」


「成程ねぇ……聖女なんだから、城に住まわせてもらえば、良いだろうに」


「絶対に嫌やっ! 何が哀しゅうて、あんボケの世話にならなあかんのやっ」


 本当に、ルシィと仲が悪いんだな。喧嘩するほど仲が良いとは言うけれど、このリティナの表情は、本気で嫌がってるっぽいわ。


「そんな事よりもやっ……あれ、なにしとん?」


「……円盤投げ」


「そうやのうて、知らん者おるやんか」


「うん……城から付いて来た」


 ここは闇ギルドの敷地内。ミルンやミウ、メオやノーイン達などの、ケモ耳集団が居るんだけど──なぜかあの、城にいたメイドさんが、ここに居るんです。楽しくミルン達と、円盤投げをしているんです。


「さあ皆様、投げますよ」


 メイドさんが軽くヒュッ──と円盤を投げると、『わああああああっ!』とケモ耳集団がそれを追いかけ、飛んだり跳ねたり咥えたりと、様々な方法でそれを取り、どうしてか投げ返さずに、円盤をメイドさんに持って行く。


「……投げ返さないのは、なんでだろうなぁ」


「獣族の本能ちゃうん? 狩った獲物は、ボスに見せるっちゅう話やからな」


「へぇ……」


 じゃあ何か? あのメイドさんは既に、ケモ耳っ子達に、ボスと認識されてんの? ミルン以外は俺とあまり遊んでくれないのに?


「なんか、負けた気がする」


「なに言うてんの。流にーちゃんもちゃんと、慕われとるで。あん餓鬼共からしたら、ボスを纏める大ボスやから、馴れ馴れしく出来へんだけやっちゅうねん」


「なんだよ大ボスって……」

 

 ケモ耳っ子達と遊べるのなら、大ボスなんかよりもボスの方が良かったっ……コルルの羽根とか、絶対にふわふわなのに、触ろうとすると逃げるんだよなぁ。


「流君。馬車の状態はどうかね」


「あっ、名誉騎士の筋肉村長じゃん。今のところは、問題なさそうだぞ。車軸も曲がってないし、ちゃんと動きそうだ」


「私の顔を見るたびに名誉騎士と呼ぶのは、やめてはくれぬか……私のような一平民が、分不相応なのであるぞ」


「似合ってると思うぞ? 騎士ヘラクレス様」


「あまり揶揄うモノではないぞ、相談役殿」


 揶揄ってないのに、睨まれましたと。

 昨日城から文官が来て、村長の目の前で、ルシィの言葉を読み上げ、名誉騎士爵となった時の村長の顔ときたら……緊張しまくりで、銅像のように固まっていたからなぁ。

 どうやらこの異世界は、騎士団の元副団長までなら、平民でも就く事が出来るらしい。そして"名誉騎士爵"とは、その上。名実共に正式な騎士として、団を率いる事が出来るとの事。

 

「……貴族じゃないのに、貴族の権限を行使出来るとか、残りの人生安泰じゃん」


「私は四十半故、まだまだ死なぬっ。村を復興せねばならぬし、隠居などせぬであるぞ」


「俺なら絶対に、右手団扇でダラけるのに」


 少なくない年俸も貰えるし、一代限りとはいえ、そこそこの権力もある。それに加えて、女王であるルシィ自らが任命したから、村長に命令出来るのは、ルシィだけらしい。


「王家直属とか……面倒だよなぁ」


「それは……否定出来ぬのである」


「おいコラそこん魔王と筋肉。まだ状態の確認終わってへんのやから、チャチャっと手を動かせや。餓鬼共乗せる馬車やねんで」


「分かってるよ。村長は馬車の内側を見てくれ。俺はもう一度、全体を確認するわ」


「うむ、分かったのである」


 因みにこの馬車は、あそこのメイドさん……確か名前は、ドゥシャさんだったか。あのドゥシャさんが、どこからか持って来た物だ。

 城から出て直ぐ、「ケモ耳っ子達の移動の足は、どうしようかなぁ」とボヤいたら、いつの間にか姿を消しており、闇ギルドに着いた頃には、既に用意されていた。


「凄いを通り越して、怖かったな。どこから持って来たのかも、聞けなかったし……うしっ、馬車の確認終了だ」


「あーっ、疲れたわぁ。ウチは水浴びしてくるさかい……覗きに来たら殴るで」


「あっ、うん、御免無理。最低限ケモ尻尾を生やしてから、その台詞を吐けよ」


「……」


「……」


 睨み合う魔王と聖女の図。

 側から見たら、少女と中年が睨み合っているだけなんだけど、少女は下から「あぁん?」的な感じで来るからか、少し笑えてくるわ。


「あんたホンマに男かいな? 少しはあんラカスを見習って、覗く努力をしてみいや」


 聖女が指を差した方を見ると──猫耳男子の悪戯っ子が、そわそわと何かを用意している。あれは、水浴びの用意だろうか。


「なあリティナ。ラカスって何歳だっけ?」


「十歳やで? 毎回覗きに来ては、ニアに半殺しにされとるわ。根性だけは一丁前やな」


「お年頃の猫耳か。あっ、ニアノールさんが帰って来た。うわぁ……ラカスが凄い速さで、逃げて行ったなぁ」


 暗殺系猫耳のニアノールさんからは、逃げられないだろうに──って、ニアノールの指示の下、他のケモまでもが、ラカスを追い始めたんだけど、最早狩りだよね。


「ドン引きだ……」


「あんなん孤児院おったら、毎回しとったで。ほなウチは行くわ。汗かいて気持ち悪いねん」


「はいよ」


 ミルンも楽しそうに、ラカスを追いかけているし、ちょっとした運動だと思えば良いか。


「んで、村長はなにしてんの?」


「ぬぅっ……すまぬ流君。この馬車の扉は、私には小さ過ぎてっ、抜け出せぬのであるっ!」


「……そんじゃ俺は、買い出しに行ってくるから、扉を壊すなよ──騎士ヘラクレス様」


「ぐっ! ちょっ、待つのだ流君っ! 待つのだあああああああああ──っ!?」


 筋肉村長を放置して、ラクレル村で使うであろう、ケモ耳っ子達のアレやコレやを揃える為に、のんびりと王都の散策に向かった。背後から、村長の罵声を浴びながら。


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