17話 ジアストール城内の探検.8
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【リティナ視点】
流にーちゃんの事を知ったのは、遠方での役目を終えて、王都に帰って来た時やった。
怪我人が列を成して、正門に並び、何か呟きながら震えとったなぁ。
治療したんかって?
する訳無いやん。
真心の水晶の色が、"紫"の奴等やねんで?
馬鹿な門兵は、そいつらから理由を聞いて直ぐ、王都に入れおったけど、何でやねんって思ったわ。
直ぐに、その理由が公表されたけど、ウチらからしたら、巫山戯んなって話やで。
その紫の奴等が行く先は、スラムやからな。
んで、直ぐに院長から呼び出されて、出回っとる内容を話したら、頼み事をされてん。
『魔王をここに、連れて来て欲しいのです』
院長には、返し切れへん恩があるし、理由とかもなーんも聞かんと、了承したわ。
護衛のニアは、文句言ってたけどな。
最初は二人で、行く予定やってんけど、教会の馬鹿共に見つかってもうて、仕方無くお付きとして、同行して貰ったんや。
村に到着して、びっくりしたわ。
もぬけの殻やもん。
村長は居ったけど、腕無かったし、しゃあなしで治療したったわ。
周りを見たら、教会のおっさん共が消えとるし、嫌な予感がしたんやけど、なんやかんやあって、流にーちゃんと会う事が出来たんや。
流にーちゃんの第一印象は、変人やな。
舐め回す様な視線で、ニアを見とるし。
犬人族の子供を、自分の娘と言っとるし。
王都に来る道中、魔法を使ってるの見たけど、魔王と言われる程じゃ無かってん。
変なスキルは、持ってたけど。
疑問に思ったのは、城門での時や。
流にーちゃんが、城壁の上で、何故か全裸になってた時やねんけど、嫌な感じがした。
魔法を使おうとしたんやろうけど、何でやろうか……城壁が粉々になる、予感がしてん。
女王が止めおったから、助かったけどな。
決定的やったんは、やっぱりアレやな。
雨を降らせた事。
孤児院の火を消してくれたんは、有り難かったけどや、天候操作って、可笑しいやろ。
追加で言うと、大聖堂を潰した魔法も、天候操作の魔法と同じく、有り得へん魔法や。
上級魔法の域を、遥かに超えとる。
それこそ、神の魔法ちゃうの? とまで、思う程、威力の桁が違う魔法やった。
疑問に思ったら、直ぐ行動。
院長の言葉やねん。
だからこうして、王城の書庫を漁ってんねんけど、全然見つからへん。
「こう言う作業っ、苛々してくんねんっ! 五百年分もっ、保管すんなやっ!」
「リティナ様、本を投げたらぁ、駄目ですよぉ」
「投げへんわっ!」────スパァンッ!!
「投げちゃ駄目ですってぇーっ」
許してーや、反射的に体が動いてん。
ジアストールは、建国五百年と、周辺の大国に比べたら、歴史が浅いんや。
それでも、五百年分の書物。
ウチらだけで探すのは、無茶やったか。
「それに、この書庫……なんやさっきからっ、コンサート予定表やら握手会日程表やらっ、誰やねんアシュノンてっ!!」
「確かぁ、他国に逃げたぁ、陛下の姉君の名前では、無かったでしょうかぁ?」
「あの女王の姉ちゃんかいな……っ、アシュノン親衛隊名簿なんて残すなや!?」
何やこのお姫様……あの女王より、遥かに人気があったんとちゃうの。
何やコレ、ポエムっ!?
「捨ててまえっ!」────スパァンッ!!
「また投げてぇ、駄目ですってばぁっ」
「ニアも踏ん付けとるやん……」
グリグリしとるから、ウチより酷いで。
「あかんっ、無理やーっ! 書庫やのに、変なもんばっかりで、ここに無いんとちゃうん」
「どうでしょうねぇ」
実際問題、探しとる本が有ったとしても、こない誰でも入れる場所に、置いとくか?
女王に聞いてみよか……癪やけど。
「リティナ様っ、見て下さぁい」
「見つかったんかっ!?」
「こんなの有りましたぁ、ファンブックぅ」
「要るかぁっ!?」────スパァンッ!!
ここは書庫や無い。
ただの倉庫や。
「リティナ様……っ、見て下さぁい!」
「次は何を見つけたんや……」
「『聖女追跡調査。影は見た、聖女の裏の顔を』って言う本ですぅ」
「ニアっ! それは焼き捨てぇっ!!」
なんちゅーもんっ、保管しとるんや!
影って言ったら、噂になっとるっ、ジアストールの暗部ちゃうんか!!
「ニア……今、懐に、何入れたんや……」
「何もぉ、入れてませんよぉ?」
「プィってそっぽ向いてもアカンで! ほらっ、さっさと今の出しいっ!」
「良いですよぉ、どうぞ取って下さぁい」
「なっ!?」
胸こっちに向けてっ、ウチに弄れと!?
完全に、開き直りおった。
「ぐっ、もうええわ!」
「ほらぁ、取らないんですかぁ?」
「胸向けんなや!」────スパァンッ!!
気晴らしに、外の空気でも吸お。
苛々で禿げてまうで、ほんま。
気晴らしに、ぶらぶら散歩しとったら、練兵場に着いたんやけど……流にーちゃんが、オモロい顔で死んどんねん。
「流にーちゃーん。アカン、起きへんな」
何や離れた所で、ヘラクレスとミルンが、殺気全開でじゃれあっとるし。
「何してんのアイツら」
「ミルンさんは、本気ですねぇ」
「そやけど、ヘラクレスは上手く避けとるし、問題無いやろ。問題は、コレやなぁ」
「治さないんですかぁ?」
勿論治すんやけど、二人の戦いが面白過ぎて、気になって集中出来へんねん。
「ミルンは、ヘラクレスの玉を狙うとるんか」
「背が低いからぁ、一撃入れば潰れますよぉ」
「ソレは汚うて、治したく無いで……」
早く流にーちゃん起こすか。
ヘラクレスの玉が潰れたら、絶対ウチんところ来るやろうけど、治した無いもん。
「えっと、状態は……脳天に、デッカい瘤が出来とるんか。そんなら、簡単やな」
腕を回して、しっかりほぐす
手首もしっかりとほぐさな、こっちが痛くなんのは、嫌やからな。
「うしっ、それじゃぁこのまま────っ、いつまで寝とるんじゃボケェっ!!」
腕を振り下ろし、脳天に打ち込むっ!!
ドゴスッッッ────「んぎゃああああああたまがああああああ──っ!?」
何や、オモロい動きで起きたやん。
「どうしたん、そないキョロキョロして?」
「頭っ、今っ、頭っ、殴ったのお前なの!?」
「んな訳あるかいな。失神しとった流にーちゃんを、治療したってんで?」
「失神? 治療? 痛っ、どうなってんの?」
「そない考えとる暇無いやろ。あそこの二人止めな、色々不味いんとちゃうの」
ヘラクレスとミルンは、まだ争っとるで。
少しずつミルンが押し始めたけど、ヘラクレスが本気になる前に、止めなあかん。
「村長? ミルン? ガチバトルじゃんっ!? ミルン止まれ──っ!!」
流にーちゃんが慌てとるわ。
珍しいもん見れたな。
「ほな、ウチはまだ、用事があるさかい。ホンマっ、頭には気を付けや。ニア、行くで」
「分かりましたぁ。リティナ様は、疲れてませんかぁ?」
「一回だけなら、疲れる事あらへんわ」
何回も使ったら、ヤバいけどな。
取り敢えず、念の為もう一度、あの書庫を漁ってから、女王に聞こか。
そう思って歩き出したら、流にーちゃんの声が、聞こえて来た。
「リティナっ! 怪我治してくれて、有難う! マジで助かったわ!」
魔王って言われとる奴が、律儀にお礼言うんかいな……ホンマ、変な奴やで。
「これは貸しにしとくわ」
「分かった。返せるか分からんけどな」
「期待しとらんわ。ほなな、ニア、行くでーっ」
「ふふっ、リティナ様、嬉しそうですよぉ」
誰が嬉しそうやねん。
今からまた、魔王に関する書物を、探さんとやねんから、嬉しく無いわ。




