17話 ジアストール城内の探検.6
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「うんうん、毛根死滅している人が、沢山並んでいるなぁ。あそこに並びたくねぇ」
「ピカピカひかってるの!」
「そうだねミルン。汗が光で反射してるし、ストレス過多の仕事っぽいぞ」
「せちがらいよのなかですっ」
ドゥシャさんに抱っこされたままの、ミルンの顔から、なんだか哀愁を感じます。
貞操帯さんに頼まれた書類を、こうして持って来た訳だけど、本当にっ、並びたく無い。
冒険者ギルドと違って、立ったまま、あの汗だくの文官の様に、並ぶんだぞ?
この場所は、某即売会かよ。
「旦那様。並びませんと、お渡し出来無いかと」
「分かってるよっ……こんなお願い、受けるんじゃ無かったわ」
渋々、部屋の前まで進んだ。
並ばないのかって?
先ずは、内部を確認しないとだ。
「そっと、もしもーし。この部屋広いな……中はガチで、冒険者ギルドじゃん」
壁に沿う様に、長いテーブルが置かれて、区切り板が設置され、各担当に分かれて、並んでいる文官達から、書類を受け取っている。
部屋の出入口側に、待合席が設置され、そこからあぶれた者達が、列を成している様だ。
「んで……俺はどの列に、並べば良いんだ?」
「旦那様。各担当者毎に、絵が御座いますので、それを目印にすれば宜しいかと」
「絵? この書類は、農業関係だよな……」
本の絵は違う。
アレはゴブリンっぽいから、違うだろ。
羽根ペンの絵は、本と何が違うんだ。
鎧も違う。
キノコ? 紫色だから、毒関係か。
「小麦っぽいのが有るな。アレか……」
もう少し、分かり易くして欲しいな。
そうボヤきながらも、列に並んだ。
「何でドゥシャさんまで並ぶんだ?」
「念の為に御座います」
「念の為……監視って事ね」
ミルンのお世話がメインだけど、俺への監視も怠らない、プロの仕事です。
心が休まらないっ!!
だからこそのっ、可愛いミルンを眺めて、心を落ち着けましょう。
「おじさんいっぱい!」
「そうだねぇ、いっぱい居るねぇ」
「はげいっぱい!」
「そうだねぇ、禿げいっぱいだねぇ」
「となりのひともっ、はげている!」
「うんうん。立派な光だねぇ」
その光を放っている、隣の文官を見ると、口元をピクピクさせながら、震えていた。
キレて無いですよね?
「なんだその獣は! 失礼な!」
「けものじゃないの、ミルンです」
「なぜ城にこんなっ、薄汚い獣がいるのだ! おい衛兵! この獣を城から追い払え!」
「けものじゃないの。ミルンなーのーっ」
流石ミルン、煽りが上手いな。
文官がガチギレしてるのに、ドゥシャさんに抱っこされたまま、変顔で返してるぞ。
変顔でも可愛いなんてっ、鼻血がヤバい!
「糞っ、伯爵様の使いの私が何故っ、こんなにも待たねばならん!」
「それはしらないの」
「おい衛兵っ、何をぼさっとしておるのだ! 早くその獣をっ、どうにかしろ! 殺しても構わぬわ!」
「おとなげないの……」
どうやらこの文官、気付いて無いらしい。
さっきから、部屋の中の衛兵達が、ドゥシャさんに睨まれて、動かない事を。
これって、このドゥシャさんの立ち位置が、衛兵よりも上って事だよね。
「どうした衛兵! なぜ目を逸らすのだ!」
まぁ、それは良いとしてだ。
この文官……ミルンを殺しても良いって、俺の目の前で、言ったよな。
「ちょいちょい、そこの文官さんや」
「何だ貴様っ! 私に気安く……ひゃっ!?」
満面の笑みって、最早凶器だよね!
「お前今さっき、この天使の様に愛らしいミルンを、殺しても構わんって言ったよな?」
「ぃぇっ、そのぉ……」
「じゃあお前、死ぬ覚悟があるって事で、良いんだよな? 人を殺せと命じておいて、まさか自分に返って来ないとか、思って無いよな?」
「うひぃぃぃっ!? あがっ────」
笑顔を怖がるとか、可笑しな奴だ。
「さぁて、どつしてくれよ…う…か? 立ったまま白目になってる!? 怖っ!」
「おとうさん、まわりみて」
「んっ? 周りって……誰も居ない……」
ミルンに言われて気付いた。
あんなに列を成していた文官達が、目の前の白目を除いて、居なくなっている。
「えっ、何コレ?」
「おとうさんのせい! はんせいするの!」
「俺の所為? いやいやっ、俺はただ笑顔で、この文官を詰めていただけだぞ?」
それで逃げるって、文官達臆病過ぎだろ。
部屋の中に居る、担当者達や衛兵は、何事も無く仕事をしてるんだぞ。
「へんなのでてた!」
「変なの出てた? それって何?」
俺から何が出ていたの?
出るものなんて、何も無いんだけど……そっとお尻を確認。
何も出てないよな。
「旦那様。申し訳御座いません。ミルン御嬢様に対して、この様な無礼を働く者が、城内に居ようとは……」
「もんだいないです!」
「らしいぞドゥシャさん。ミルンがこう言ってるんだし、俺からは何も無いな」
「ミルン御嬢様。御温情、感謝申し上げます。この者の処分は、お任せ下さいませ」
「お願いする……処分すんのかよ」
白目の文官を処分って、何するんだろ。
聞きたく無いなぁ。
「影、持って行きなさい」
「んっ? 影って、影さん来てるの?」
「何の事に御座いましょう」
俺の空耳だったのか?
ドゥシャさんが、影と言った様な気がしたんだけど、疑問の顔を浮かべているぞ。
「……あの文官どこ行った? あれっ? 今さっきまで、白目で突っ立って居たよな?」
「きえたの。なんで?」
「ミルンも見てないのか……」
ドゥシャさんをチラリと見るが、お澄まし顔のまま、ミルンを抱っこしてます。
下手に追求したら、怖そうだなぁ。
うん、さっさと書類を渡そう。
「前に並んでた人達、居なくなったから、そのまま書類渡しても……問題無いよな?」
「はい。問題無いかと存じます」
「待つ時間が短いのは良かったけど、なーんか、スッキリしない」
モヤっとしながらも、担当者が居る受付へと向かい、テーブルの上に書類を置いた。
「うひっ、えぇっと、御用件は……」
さっきの一部始終を見ていた担当者さん、バッチリ怯えてるのかよ。
「なんか、騒がしくして御免。貞操帯さんから、この書類を渡してくれって、頼まれてな」
「てっ、貞操帯さん?」
「ああ、貞操帯さん。確認してくれ」
「えっと、ああっ、この書類ね。ラナさんに頼んだ分です。確かに、受領致しました」
ラナさんって、誰だろうか。
もしかして、貞操帯さんの名前か? 貞操帯さんって、担当者さんに言っちゃったぞ。
「……それじゃ、確かに渡したからなっ」
足速にその場を離脱!
離れる瞬間、『ラナさんが貞操帯?』と、担当者の人がぼやいて居たけど、俺は何も聞いていないっ! そう言う事にしておこう!
「お待たせ二人共。これで、頼まれていた用事終わったし、探検を再開出来るぞ」
「たんけん! どぅしゃっ、いくの!」
「畏まりました」
「で、ミルンさんや。俺から何が出ていたの?」
さっきからずっと、気になってるんです。
「さぁ、参りましょう、ミルン御嬢様」
「おねがいしますっ」
また全無視されてんじゃん。
また置いて行かれたじゃん。
ミルンも抱っこされたままだし、もうそろそろ、俺泣いちゃうかもよ?
「……肩が寂しいっ」




