15話 ジアストール城内の探検.4
「本当にすまねぇ! ムラトが失礼を!」
居酒屋の大将の様な風貌をしたおっさんが土下座して謝ってくる。
「おらっおめぇも謝んな!」
配膳係のムラトは正座しままで一向に頭を下げないけどね。
この馬鹿! と大将がムラトの頭に拳骨落としたな…気絶したんじゃね。
大将が部屋に来てすぐドゥシャさんが説明をして、大将の顔が青ざめ、ムラトを一喝して正座させ、自らは土下座。
うん、これがちゃんとした土下座だよな。
「大将、俺は気にしてないよ。それよりも、あんた日本人か?」
大将は顔を上げ、俺の顔を見る。
徐々に近づいて来て俺の顔を見る。
「おめぇさん…地球を…日本を知ってるのか!?」
やっぱり日本人じゃん。
うわぁ…ミルン、この人俺と同郷だよ。
えっ違うの? 日本人じゃない?
「俺っちの御先祖がその地球ってー所から来たって日記が残っててよぅ、親父はそれを信じずに迷信だのなんだのとほざいていたが、俺っちは御先祖信じて調べたのよ。そして日記に書いてた米ってー奴に似たやつさがして、出来上がったのがさっきの酒よう!」
なるほどねー御先祖様かぁ。
「同郷の人、じゃあなかったのね…」
期待した分ちょっと効いたな。
「おとうさんだいじょうぶ?」
おっとミルンを心配させてしまった。
「大丈夫だ。でもコレなら料理が期待できるぞミルン!」
さっき呑んだ酒は間違いなく日本酒! ならばその原材料も限り無く米に近いはず。
ならば食さねば。
「ごはんはやく!」
大将はハッとして直ぐムラトを部屋の外へと蹴り飛ばし、
「食事も出さず申し訳ねぇ! 行儀とか作法とか気にしねぇからどんどん食ってくれや!」
と笑顔で言って走って行った。
そして直ぐに来るわ来るわ料理の数々。
テーブルギリギリまで皿を詰め、置けるだけ置いて料理が無くなると新しい皿が来る。
揚げ物、炒め物、煮物、焼き肉、巻き肉、肉、肉、米? 肉、米? パスタっぽい物、醤油漬けっぽい物、サラダ、サラダ、香草焼き、照り焼き、パイ包焼き等々、料理名は知らないが止まらずに来る! もはや食べるのが早いか、来るのが早いかの競争。
「モゴモゴおいモゴモゴしい!」
ミルンのほっぺがぱんぱんのリスさんです! ミルンの言う通り美味いの本当に。
しかも米だよ…白米があるんだよ…ジャポニカ米じゃないけど…異世界米だけど…食が進むに決まってるじゃないか!
「ドゥシャむぐむぐさんも。たべむぐむぐなよ」
やばい食べながら話すのって子供の時以来だよでもスプーンが止まらない。
「私は結構です。旦那様と御嬢様の御食事のお邪魔をする訳には参りませんので」
そういってミルンの口に付いたソースをナプキンで拭い、また離れる。
メイドの鏡だなぁ…。
そう思っていたら、リティナとニアノールさん、村長が入って来た。
「流にーちゃんがいるのはここかぁ?」
「お邪魔します流さん」
「流君、君だけ美味しそうな食事とはずるいではないかね!」
急に人数が増えましたね! すみませーん! 椅子と料理追加で!
「ほら、これならドゥシャさん一緒に食べても問題無いでしょ? こっちに来てみんなで食べよう!」
幸い料理はまだまだ来る様だし、腹が悲鳴を上げるまで食べてやるぜなぁミルン。
「モゴまだモゴモまだいける!」
さすがミルンさん。
肉ばっかり食べてますね! まだ朝ご飯ですからね? 大丈夫? 昼の分も食い溜めか。