17話 ジアストール城内の探検.4
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日本人っぽい感じのおっさんが、包丁片手に部屋へ押し入って来たけど、何なのこれ。
物凄く、ガンを付けられています。
「料理長。お客様に対して、失礼ですよ」
「んだぁ? メイドが俺に物申すっ……あぁっ、お前さんか。ムラトが戻って来ねぇからよ、何かあったんじゃって、思ってなぁ」
「直ぐに刃を収めなさい。それと、そこの下働きを、しっかり指導なさい」
「っ、本当に、何があったんですかぃ?」
ドゥシャさんの顔を見るなり、矛を収めると言うか、包丁を懐に仕舞うって、どんだけドゥシャさんの事を、恐れてるんだ。
と言う事で、ドゥシャさんの説明タイム。
うんうん、料理長の顔に、血管ピキピキと浮かんで来て、茹で蛸食べたいなぁ。
「こんっ、馬鹿者が!!」
「おごっ!?」
流石、見た目が昭和の男。
顔面目掛けての、体重の乗ったストレートパンチで、ムラトをブッ飛ばしやがった。
「本当にすまねぇ! ムラトが失礼を!」
「失礼と言うか、俺の質問に、答えてくれないだけだから、殴る必要は無いぞ?」
「いやっ、それは違いやす。提供してるモンを、聞かれたら答える。それは料理人として、当たり前の事でさぁ」
このおっさん、プロ根性は凄いな。
さっき包丁向けて来たけど。
「おめぇも寝てないでっ、こっち来て謝んな!」
「ぐっ……」
寝かせた料理長が、それを言うのか。
ふらふらとしながら、ムラトがゆっくり起き上がり、こっちに来ても謝らず。
この人、頑固過ぎて、損をするタイプだろ。
「謝れってのぉっ!!」────ゴスッ!!
「あがっ!?」
今度は脳天に一撃か。
日本でこんなんしたら、パワハラと暴行の罪により、レストランは閉店です。
んで、ムラトはそのままダウンっ!
試合終了っ!
何の試合だっけ?
「ムラト……気絶したんじゃね?」
「こんぐれぇの事でっ、情けねぇ!」
「大将、俺は気にしてないよ。それよりも、あんた日本人か?」
料理長よりも、大将の方がしっくり来る見た目だし、大将で良いよね。
「お前さん、今なんて言った」
「大将って、日本人なのか?」
それを聞いた大将が、凄い顔をしながら、ゆっくりと近付いて来ます。
動きが怖いよ、このおっさん。
「お前さんっ、地球を……日本と言う場所をっ、知ってるのか!?」
「やっぱり同郷の人か!」
「いえっ、ちげぇます」
違うんか──い!?
今の流れ的に、日本人であれよ!!
「今さっき、地球って言ったじゃん! それとその姿! 顔! どう見ても日本人だろ!」
「俺っちの御先祖様が、日本人なんでさぁ」
「あ──成程ってならんわ!?」
御先祖様が日本人って何?
そりゃまぁ、俺だけ異世界ひゃっほう! 何て思わんけど、せめて生きてろよ!
「御先祖様の古い手記に、地球の、日本ってとこから来たって書いててよぅ。親父はそれを信じずにいたけど、俺っちは信じた訳よ」
なんで急に、モノローグに浸ってんの。
ぶっちゃけ大将の事は、どうでも良くなってしまったんだけど。
「んで俺っちは、御先祖様を信じて、その手記を調べたのよ。そしたら、米食いてぇ米食いてぇばっかり書いてるもんでなぁ」
それは正に、今の俺だな。
異世界に来てからの主食は、パンと肉。
美味しいんだけど、腹に溜まらない。
「米米ばっかり書いてるものだから、俺っちも食いたくなって、探したんでさぁ。んで、なんとか見つけて作ったのが、あの酒っ。名前は勿論、ニホンシュって訳ですわぃ」
「あっ、ムラトが教えてくれなかったから、説明してくれてた────米?」
この大将、米を見つけたって言ったのか?
それをなんとかして、酒にしたと?
「まさかっ、こんなとこでぇ、日本人に会えるたぁ……っ、俺っちばっ、嬉しいぜぇ」
「泣き出したとこ御免。米あるの? もしかして、白米食べれたりするの?」
「少ねぇですが、ごぜぇます」
異世界に来て……初お米っ!!
俺の頭の中では、ファンファーレが鳴り響き、心ウキウキっ、体ワクワクっ、挙動不審になっちゃうぞ!!
「おとうさん、だいじょうぶ? あたま……」
「ミルンさんや、これが俺の、正常だよ」
「ごっつんする?」
「可笑しく無いから、ごっつん不要だ」
ミルンの目が、可哀想な人を見る様な目になってるし、ドゥシャさんも呆れてるなぁ。
「だが気にしない! 大将! 食わせてくれ!」
「ごはんはやく! びーふおんりーっ!」
大将はハッとして直ぐ、ムラトを部屋の外へと蹴り飛ばし、『食事も出さず申し訳ねぇ! 行儀とか作法とか気にしねぇからっ、どんどん食ってくれや!』と、笑顔で出て行った。
「ムラト……大丈夫なのか?」
「びーふっびーふっびーふっ!」
「まったく……あの料理長は、腕は確かなのですが、行動に難がありまして。お騒がせしまして、申し訳御座いません」
「ドゥシャさんが、謝る必要無いって」
俺的には、お米様が食べれるだけで、もう脳汁どばどば出てますから。
そして始まる、フルコース。
料理を運んで来るのは、ムラトでは無く、何故かお城のメイドさん達。
けど、レストラン風の外観だから、違和感は全く感じないんだ。
違和感を感じるとしたら、一つだけ。
「ボソッ(メイドさん達、ドゥシャさん見て怖がってるよな……何者なんだこの人)」
「旦那様、何か仰られましたでしょうか?」
「何も言ってないぞっ……」
「びーふっ、たべていい?」
そうだな、そろそろ攻めるか。
「ミルン……準備は良いか」
「じゅんびよしっ!」
「それじゃあ手を合わせて、頂きます!」
「いただきますっ! ムゴゴゴッ!」
言って直ぐに、肉が無くなりました。
でも大丈夫!
無くなるや否や、ワンコ蕎麦の如き動きで、次々に料理が運ばれて来ます。
「米っ……旨めぇぇぇぇぇぇっ」
「おにぐぅっ! おにぐぅっ! うまうまぁ!」
「物凄い勢いで御座いますね。ミルン御嬢様、ソースが付いておりますよ」
「むむむ──っ、ありがとうどぅしゃ!」
何だろう……ドゥシャさんって、ミルン専属のメイドになってるよね。
揚げ物、炒め物、煮物、焼き肉、巻き肉、肉、肉、米、肉、米、パスタっぽい物、醤油漬けっぽい物、サラダ、サラダ、香草焼き、照り焼き、パイ包焼き等々、料理名は知らないが、止まらずに来る。
「これは、食べるのが早いか、作って持って来るのが早いかの、競争になってないか?」
「モゴモゴおいっ、モゴモゴしいっ!」
「ミルンが、リスさんになってる……くっ、スマホが有ったらっ、永久保存するのにっ」
無い物は仕方が無いが、悔やまれる思いだ。
まぁ、悔やんでる暇があったら、目の前の料理を平らげないとだ。
無くならない。
減らないと言うより、追加が早い。
「ドゥシャむぐむぐさんも、食べむぐむぐなよ」
「何で御座いましょうか?」
お前何言ってんのって顔だなぁ。
大の大人が、咀嚼しながら話すのは、テーブルマナー以前の問題っぽい。
「んぐっ、ぷはっ。ドゥシャさんも食べなよ」
「私は不要に御座います。ミルン御嬢様の、御食事のお邪魔を、する訳には参りませんので」
そう言いながら、ミルンの口に付いたソースを、丁寧にナプキンで拭き拭きですか。
ミルン専属メイドじゃん。
そんな事を思いつつ、米をモリモリ食べていたら、見知った顔が入って来た。
「お邪魔するでぇ、流にーちゃん」
「お邪魔しますぅ」
「流君。君だけ美味しそうな食事をするとは、狡いとは思わぬのかね」
丁度良い助っ人の登場。
だってね、料理が減らないの。
「人数増加大歓迎っ! ミルンと二人だと、食べ切れ無くてな」
「まだまだくるの!」
ミルンは余裕の顔してるけど、そのお腹の、何処に入っているのだろうか。
「と言う事でっ、ドゥシャさんも食べよう! ミルンも、それで良いよな?」
「どぅしゃっ、あーんするの!」
「っ、分かりました。失礼致します」
小さいミルンには、弱いなこの人。
「この椅子、使わせて貰うで」
「美味しそうですぅ」
「流君の飲んでいるソレは、何であるか?」
レストランが一気に、宴会場になりました。
こうなれば、腹が悲鳴を上げるまでっ、延々と食べ続けてやるぜ!
「すみませ──ん! 日本酒お代わり──っ!」
「モゴっ、まだモゴモっ、まだいける!」
流石ミルン、肉ばっかり食べてるよな。
「ミルン、まだ朝御飯だぞ?」
「おひるのぶんもっ、たべちゃうの!」




