14話 黒幕さんと煮豚野郎.3
「ちょっとは落ち着いたか、お漏らしルシィ!」
半裸でギャンギャンと泣きわめくからミルンが起きて尻尾アタック! したら、ルシィはその尻尾を掴みモフモフして泣き止んでいたって本当にミルンの尻尾は魔法の尻尾だよなぁ。
「誰がお漏らしルシィじゃ! 不敬にも程があるぞ魔王! まったくっ、ミルンやーこんな邪悪で意地悪な魔王の所より儂と一緒にお城で暮らさんか? 儂とミルンはそこの魔王と違って血が繋がった家族じゃしのーニヤニヤ」
あっコイツっ俺の娘を誑かすな!? ミルンはおとうさんと一緒がいいよな? なっ? ミルン、何でこっちを見ないの? 泣くよ俺?
「けんかだめ。どっちもいや!」
その言葉に俺とルシィは雷に打たれた様に身体が震え、お互いに顔を見合わせ、さも昔からの友であったかの様に肩を組み笑顔を作る。
「ほら、ミルン。喧嘩何てしてないぞ? じゃれあっていただけだってなぁルシィ?」
「そうじゃぞミルン。仲が良い程喧嘩するというがあれは本当じゃて! ほら、儂と流、こんなに仲が良いじゃろうお互い素直に言い合えるからの!」
ミルンがまじまじと俺達を見つめてくるぅ。
ミルンに嫌われたく無いおとうさん嫌いって言われたく無い言われたら泣く間違い無く泣く絶対泣く自信があるぞ泣くぞ。
俺の背中から冷や汗が滝の様にでてますよ。
止まらないっ。
ミルンがベッドからもそもそもと動き俺の身体をよじ登り、ついでに俺の肩に組まれているルシィの腕をペシィッと尻尾で叩き落としてからいつもの定位置へ。
その行動に俺は満面の笑みを浮かべるも、手を叩かれたルシィの顔は…唖然とした後に眼から涙が…俺はそっと、ルシィの頭を撫でた。
すぐ叩き落とされたけど…。
※
「成程ねぇ…気絶してから丸一日経ったのか」
影さん(二号)から俺が気絶した後どうなったのかを聞いた。
俺がルシィの水溜まりに顔面ダイブした後、衛兵達がチャンスとばかりに槍を俺に突き刺そうとしたが、それを影さん(二号)とミルン、村長、ニアノールさんが護り、その衛兵をフルボッコにして、リティナがまた、悪夢を見ましょう永遠にと、ある意味最強のスキルで昏倒させ、何とか復活したルシィの鶴の一声で俺をここに連れて来たと…ここってどこよ? 城? ジアストール城のルシィの寝室? マジか。
じゃあこの高級ベッドに今現在膀胱破裂寸前の俺の尿をぶち撒けても問題無しだな。
「はよう雪隠へ行ってこんか! そこにぶち撒けたら牢へぶち込むからの!」
何? 雪隠って何? ああ便所の事ね。
難しい言い方するなよお漏らし女王様。
「なぜ儂が悪い様に言うのじゃ!?」
スッキリすれば頭もスッキリ。
それじゃあ今現在煮豚と、黒幕大臣は牢に捕まって、あとは裁判後に直ぐ死刑と、そんな事になってるのね。
「まあ、危うくスラム全体が火に包まれていたと考えると…妥当なのか?」
「その事以外にも色々やっておったらしいの。よもや大臣がと思うたが、今回の騒動で物証を得ての。逃げられぬ様に影をつけておいたのじゃ。」
ミルンの尻尾を眺めながら疲れた顔を見せるルシィ。
長く側近をしていた大臣がこんな事して、流石に心を痛めているのか…。
「大臣め…せめて後継を育ててから死ねば良い物を、これでは儂のやる事が増えてしまうではないか!」
うん全く心を痛めて無いね。
仕事が増えるのが嫌なんだね。
うーむ…死刑かぁ…。
「なあルシィ。死刑って…なんか緩くないか?」
えっ何でそんな驚く顔するの? 影さん(二号)も不思議そうに見てこないでよ。
「どう言う事でしょうか流さん」
うむぅ、どう説明したものか…。
「そうじゃ、なぜ死刑が緩いと言うか? 死して今迄の償いをさせるの事こそ、最大の罰になろうて」
そう、それだよ! 償いだ。
「いや、死んだら償いも何も無いだろ? 勿論アイツらには死んで欲しいけど、それって一瞬じゃん。死んでどうなるのかは俺達は分からないし知らない。なら、殺すよりも、死ぬよりも苦しい罰を、延々と与えた方が良いんじゃないのかなって」
そう、俺は別に無理に殺す必要はないと思ってる。
ならばどうするか… 。
終わらない地獄を見せてやれば良い。
「だからさ、こんな罰はどうよ?」
俺が考えた罰に…ルシィと影さんはドン引きしつつも、確かに死ぬよりも辛い罰になる事を理解して逃げる様に部屋を出て行った。
なぜ逃げる二人とも。
「おとうさん…ミルンはいいこにする!」
何でミルンが恐がるんだ? 大丈夫、この罰はアイツら専用だから他の誰にもしないぞ。
違うパターンが山程あるからな! 煮豚と黒幕大臣には一生涯をかけて地獄を味わってもらおう。