17話 ジアストール城内の探検.1
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煮豚と大臣には、生地獄を味わって貰おう。
そうルシィに提案して、裁判までの間に、とある物を用意する事になった。
「えっと、ここをこうして繋げて……」
「なんや流にーちゃん。もの凄っごい笑み浮かべて、元気やんか」
「んっ? よっリティナ、元気で悪いか?」
俺の目が覚めたと聞いたのか、リティナが部屋に入って来た。
ノックも無しに入るなんて、社会常識に欠ける聖女って、聖女で良いのだろうか。
「リティナ! のっくするの!」
ほら、ミルンさんも怒ですよ。
「貴族やあるまいし、そんなんした事無いわ。普通に面倒臭いやん」
「残念聖女」
「ざんねんせいじょっ」
「誰が残念聖女や!? 二人して同じ事ぬかすなや! 折角見舞いに来たっちゅーのに、頭痛くなって来るわほんまっ」
リティナの頭が痛くなる?
痛くなる程の頭が、有ったのだろうか?
世の中は、不思議だらけだな。
「そん顔……絶対ウチを馬鹿にしとるやろ」
「ミルン。リティナを馬鹿にしたのか?」
「してないの」
「おどれらっ……ふぅ。それ、何作ってんの」
ルシィから道具を借りて、空間収納から木材を取り出し、DIYでお手軽作成。
ナイフで車輪を作るのって、中々難しくて、トライアンドエラーで、やってます。
「流さん特製の、拘束荷車だ」
「そんなん、何に使うんや。魔物でも捕まえて、運ぶ気かいな」
「どうせ直ぐ、使い道が分かると思うぞ」
「何やそれ、意味わからんわ」
そう言いながらも、俺の作業をジッと眺めているリティナって、暇なのだろう。
「リティナ、ひまならてつだって」
ミルンが、トンカチをそっと、リティナに渡そうとするが、手伝う気は無さそうだ。
顔を見れば分かる。
物凄く、面倒臭そうな顔してるもん。
「ウチは、見舞い来ただけやって。ニアとの茶の約束もあるし、もう行くわ」
「ああ、見舞いあんがとさん」
「その変な物、使う時にでも呼んでーな。何に使うんか、気になるし。ほなな」
そう言ってリティナは、手をヒラヒラとさせながら、部屋から出て行った。
御要望通り、使う場面を見せてやろう。
間違い無く、面白いからな。
ガコッ────「これで、ー台目完成っと」
今作ったのは、前方の荷車。
次は、後方の荷車を作らなきゃな。
その後に、連結部分の金具を取り付けて、最後にテストしたら、完成だ。
「んしょっ、んしょっ、えいっ!」
パシパシゴンゴンパシゴンゴン。
ミルンが肩乗り頭を叩くよ。
ゴスッゴスッパシパシ、普通に痛い!!
これは不味いっ、ミルンが暇モードに突入して、俺の頭を楽器代わりに叩いてくるっ。
「……ミルンは暇か?」
「ひまなの」
「……お城の中、探検するか?」
「たんけんする!」────スパァンッッッ!!
ミルンさんや、勢いで頭を、叩かないでね。
本気で痛いから。
「それなら、ファンタジーあるあるの、金目の物でも、漁ろうか」
「いっかくせんきん!」
部屋から出て、廊下を確認。
横幅三メートルと、通路の幅が広く、絨毯まで敷かれている豪華仕様。
「流石、ルシィの私室。廊下まで豪華とは……」
「しゅみがわるいの」
「ホントそれな。んじゃ先ずは、メイドさんを探してみようか」
「なんで?」
それはねミルン、俺が見たいからさ。
日本でメイドと言うと、『萌え萌え波っ!!』と叫びながら、オムライスにハートを刻む、客商売としてのメイドだ。
しかし、ここは異世界。
しかも、王城と言う、最高の場所。
本業のメイドさんを見れる、大チャンス!!
「ルシィの部屋から、そう離れていない場所に、メイドさんが居る筈……」
「おとうさんが、きもちわるいっ」
「心にグサッと刺さないで? 先ずは、一番近い部屋からだな。趣味の悪いドアノブだけど、行くぜミルン!」
「じゅんびよしっ!」
ノックを三回、返答待たずに突入します。
だから言うんだ、失礼しますと。
「失礼しまーす……」
「しつれいしまーす」
ミルンが俺の真似してるっ、可愛い!!
今直ぐモフモフしたいけど、ミルンは肩の上だから、モフモフ出来無いこの辛さ!!
「何だこの部屋、執務室か?」
書類の山と言うか森と言うか、もう積みに積まれた紙っぽい物が、部屋を圧迫中です。
その紙の山に、ポツンと一人、女性が居るんだけど、社畜さんですか?
「おめめしんでる!」
「だよなぁ。昔の俺より、酷い目してるわ」
「また持って来たのですか。そこに置いといて下さい。後で陛下に、確認頂きますので」
何のこっちゃ? 俺とミルンを、何処ぞの文官と勘違いしてるっぽいな。
「陛下はいつになったら、戻ってくるのか。というかっ、どうして私がこんな仕事をっ、しなくちゃならないのよ!!」
ドンッッッ──っと机を叩いて、ヒステリックに叫び、情緒不安定で怖いよこの女性。
「ふぅっ! まだ居たの? 早く次の書……」
ヒステリック文官と、目が合った。
そりゃもうバッチリと。
その視線に、ミルンも恐怖を感じたのか、俺の肩の上で丸まってます。
「へっ……」
「へって何だ?」
「変態!! どうして城に居るのよ!? 衛兵! 衛兵! 変態がここに居るわ!!」
「ちょ──っと落ち着こうかっ!!」
初対面で変態を連呼です。
衛兵が来た瞬間に、ミルンが襲いかかって、股間撲滅パンチで乙女になっちゃうぞ。
「っ、何で誰も来ないのよ!?」
「んな事知らん。俺はルシィの客っ……の様なモノだし、変態呼びされる、謂れは無いぞ」
「城に不法侵入! 極刑よ極刑!!」
「このヒステリックっ、ミルン! ルシィか影さん二号を探して、呼んで来てくれ!」
「いや! おとうさんといるっ!」
くそっ、探検行くぞと言った矢先にコレだから、離れてくれないぞ。
このヒステリック文官女が、ギャアギャア騒いでいると、あらぬ疑いを……仕方無いっ。
「俺の秘技を、見せてやる」
両手を前に──っ、ワキワキ準備良しっ。
「なっ、何よその手はっ!」
手をワキワキさせながら、前進します。
勿論、目標目掛けて一直線に。
叫んでいた女性は、何かを察したのか後ずさるものの、逃げ場は何処にも無い。
出入口は、一ヶ所だからねぇ。
「ちょっ、来ないでよ変態っ!」
「だから、何で俺が変態なんだ」
更に一歩前進します。
面白いのか、ミルンも同じく両手を前に、可愛い御手手をワキワキさせてるぞ。
「おててわきわき」
「目標っ、二つの御山! 前進します!」
「何なのよ貴方っ! その子も!!」
はいっ、壁に追い詰めました。
あとはこのワキワキを、上手く着陸させれば、万事解決だ。
「逃げ場は無いぞぉ。さぁ、何で俺が変態なのかを、詳しく教えて貰おうかぁ」
「おとうさんはっ、へんたいさん!」
「んっ? ミルンさんや、それ違うぞ?」
それだと、変態を肯定してるからね。
俺は変態じゃぁ、無いからね。
「わっ私の事をっ、忘れたとは言わせないわ! この覗き魔! 変態!」
はて? 俺が覗き魔?
俺に、覗きの趣味は無いし、そんな事したら間違い無く、牢屋行きだろう。
「ミルン、何か知ってるか?」
「おててわきわき」
「知らない様だな……人違いじゃ無いか?」
「貴方っ、まっ、まさか忘れて……えぇ……」
「んな事言われてもなぁ」
忘れるも何も、覗きなんてしとらんて。
俺みたいな紳士の見本が、覗きなんて犯罪をだ、やる訳無いだろ。
「せっ正門の詰所でっ、覗いたじゃない!!」
「正門の詰所?」
牢屋に入れられて、拷問されそうになり、全裸に焼かれた記憶しか、無いんだが。
「何でっ、忘れてっ、るのよっ!?」
小刻みに地団駄って、踊りみたいだなぁ。
ボーっと、その光景を眺めていたら、カチャカチャと衣服を脱ぎ始め、気でも狂ったの?
「これでどうよ!!」
ズルッと下を脱いだので、すかさず回れ右からの、冤罪防止術です。
「あんたは痴女か!?」
「ちじょって、なあに?」
「何で後ろを向くのよ! ちゃんと見なさい! これで思い出すでしょ!」
見たらアレだろ! 言いがかり付けて、犯罪者確定乙からの──っ、牢屋行き!!
豚箱は、もう飽きたんです。
飽きる程、入ったんです。
「牢屋はもう嫌だ!」
「良いから見なさい! 牢屋に入れないから!」
「嘘だ! そう言って油断させてっ、また俺を裸に剥いてっ、楽しむ気だろ!」
「貴方の裸なんて見たくないわ!?」
言い合う事十数分。
業を煮やした文官女が、背後に迫って、無理矢理回れ右をさせられました。
うん、力強すぎだろコイツ。
「目を開けなさいいいいいいっ!!」
瞼も強制解放です。
ミルンはずっと、ワキワキしてるし、助けてくれないんだ。
そして俺は、見てしまった。
見たくも無いのに、見てしまった。
「それって……貞操帯?」
前に鍵穴が付いていて、褌の様な形をした、不思議な不思議なパンティさん。
貞操帯だよなぁ。
あぁ……貞操帯で、間違い無い。
俺は、まだ手をワキワキしているミルンを、ゆっくりと肩から降ろして、一息吐く。
「えっと、『空間収納』から、コレだな……」
空間収納から、とある物を出して、両膝を床に付け、とある物をそっと差し出す。
「ごめんね!」
「どうして貴方がっ、私の鍵を持ってるのよおおおおおお──っ!?」
貞操帯の鍵、持ったままだったわ。
「んじゃ、失礼しますよっと」
この鍵が本当に、文官女の鍵なのかを確認する為、鍵穴に差し込もうとしたら、腕を捻られ倒れ込み、鍵を奪われました。
「痛ってぇ。本当に、あんたの鍵なのか?」
「これ、我が家の家紋」
「家紋? あんた貴族様なの?」
「お爺様の時代はね。これは、その時の名残みたいなモノよ」
「ふーん、それなら返すしか無いな。色々と、ご馳走様でした」
「何がご馳走様なの!?」
その素晴らしい、生脚の事だ。
筋肉が付きつつも、良い感じに引き締まっており、その御御足こそ、まごう事無き美脚。
「ミルンさんや。あの健康的な美脚を目指して、しっかり運動するんだぞ」
「おにくっ! おいしそう!」
「あの御御足は、観賞用だから食べちゃ駄目だ」
「みるだけのおにく、いらないっ」
ミルンが尻尾を下げたまま、俺の肩の上に戻って来たんだけど、本気で食べる気だったの?
「ちょっと、何の話をしてるの……」
「貴女の御御足の話です」
「私の脚……っ、見ないでっ!!」
ヒュゴッと顔面すれすれパンチ。
当たってたら……頭蓋骨陥没しそうだな。
「それで、何で変態がここに居るの? ここは貴方の様な、変態が入れる場所じゃないのに」
ズボンを履いて、澄まし顔の門兵女さん。
文官の仕事してるけど、門兵だよね?
「それはこっちのセリフだから。なんで門兵のお姉さんが、ここに居るんだよ。門兵クビになったのか?」
「クビになる訳無いでしょう!」
あのルシィに、男だらけの場所で女性一人だけでは危ないからと、城へ拉致されて、業務と称して、書類作業を延々とさせられていると。
「程の良い雑用係乙! まぁ頑張ってね! それじゃあミルンっ、探検再開だ──っ!」
「たんけん! おたからさがすの!」
「ちょっと待ちなさい!」
「何だ? 俺に惚れたのか? それとも、ミルンの可愛さに気付いてしまって、離れたく無いとかか?」
「どっちも違う! 探検するなら、この書類を農作物担当者へ届けて欲しいのよ。私は他の書類で、手一杯だから」
それは暗に、仕事を手伝えと言ってる?
さっきまで、変態だの不法侵入だのと言ってたのに、急にどうしたの。
「ここまで騒いでも、衛兵が来ないのは、おかしいでしょ。と言う事は……貴方達の行動が、黙認されている証拠よ」
「黙認と言うか、放置だけどな」
「それなら、書類運び程度の仕事を、手伝って貰っても、何の問題も無い訳」
「嫌に決まってるだろ。何で俺とミルンが、そんな面倒を、しなくちゃならない」
「鍵……窃盗罪に、痴漢も有るわね」
それは、恐喝罪にならないの?
どちらにせよ、従うしか無さそうだよね。
この門兵女、目が怖いもん。
「ミルンと探検のついでなら……」
従わないと、本気で牢屋に入れられそうだわ。




