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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

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24話 心の中で泣き叫ぶ者


 2026/06/28 改稿



 最近のお父さんは、少し可笑しかった。

 いつもなら、ミルンの尻尾を振り振りすると、直ぐに触ってくるのがお父さん。

 それなのに、孤児院が燃やされて、ミウとメオが、他の皆が酷い目に遭ってからは、何と言うか……とても泣きそうな顔をしていたの。

 だからいっぱい、お手伝いをした。

 お父さんが元気になるように、ミルンが手に入れたお金を使って、手配書を沢山作ってもらい、王都中に頑張って配ったの。

 それなのに、尻尾を撫でてくれない。お耳も撫でてくれなかった。お父さんの肩に座って、尻尾を振り振りしても、少し触るだけ。

 それがとても、悲しかった。

 それがとても、寂しかった。

 お父さんは、尻尾を撫でなきゃ駄目。


 悪い人のお家に来た時も、いつものお父さんなら、『どこだ糞ボケェっ!!』て、勢い良く突っ込んで、悪い人を捕まえる筈なの。それなのに、木の影に隠れて、矢を避けて、とても変な感じがした。

 

 お家の中に入って、悪い人を探していると、ぴかぴかを見付けたけど──空間収納にスンッと入れて、はしゃぐ事がなかった。

 

『おっしゃ、全部奪ったれっ!!』


 いつものお父さんなら、こう言う筈。

 働きたくないって言ってたから、金目の物を見付けたら、しっかり一つ一つ確認するのが、お父さんなの。それをスンッて回収したから、ミルンは面白くなかった。


 悪い人を探していると、嫌な臭いがする部屋に入った。一瞬お父さんに言おうか迷ったけど、そこに悪い人が居るかも知れなかったから、言うしかなかった。

 ニアノールが床を剥がして、更に嫌な臭いが強くなり、お父さんをギュッと握り締めたら、布をお鼻に突っ込まれた。

 これは──いつものお父さんの反応。

 少しだけ安心した。

 けれど、階段を下りた先で、お父さんが何かを見て、とても苦しそうなお顔をしたの。目隠しをされて、ミルンが止めようとする間もなく、そのまま走って行ってしまった。


 この臭いを、ミルンは知ってるの。

 お父さんに伝えた、パパとママのお話。

 ミルンが、パパとママを埋めたのは言ったけど、それから数日間の臭いのお話は、していない。だってお父さんが、泣いちゃうもん。

 この臭いは──死の臭い。

 だからミルンには、目隠しなんて要らない。


「なんやミルン。それ取ったら、流にーちゃんに怒られんで? こんなん見るんちゃうわ」


 リティナが心配そうに見てきた。


「リティナ様。この量ですとぉ、全てを運ぶのは、難しいですねぇ」


 ニアノールは、悲しいお顔をしている。


「ほんまっ……胸糞悪い話やで。時間かけてもええから、外に出したらなあかんな」


 そう言って二人で、その亡骸を布で優しく包んで、外に連れて行く準備をしている。ミルンもそれを、手伝おうとした。そうしようとしたけれど、それより先にやる事がある。


「ほれミルン。さっさと行って、流にーちゃんを止めてきーや。ここはウチらが見とくさかい、早よ行かな間に合わへんで」


「ミルンさん。私達だとぉあの人は、止まりませんからねぇ」


「ほんまっ、王都に連れて来たんはウチやし、人なんか殺されたら、寝覚めが悪うなるわ」


 それを聞いて直ぐ──駆け出した。

 お父さんの後を──追い駆けた。

 前から急に、熱風が襲って来て、その勢いに押されて転がってしまい、落ちていた小石の所為で、擦り傷が出来てしまった。

 それでも直ぐに、駆け出した。

 今のは恐らく、お父さんの魔法。急がないと、お父さんが変わってしまう。そう思って、全力で走った。


 声が聞こえて来た。

 お父さんの、聞いた事のない、冷たい声。

 後ろ姿が見えた。

 その背中が、震えている。

 座り込んでいる人が見えた。

 オークのような、顔をした人。


「それじゃあ──死ね」


「ひぎっ、離せっ! 嫌だああああああっ!?」


 このままじゃあ間に合わない。声を出すだけじゃあ、今のお父さんは止まらない。

 そんなのは嫌だ。

 優しいお父さんのままじゃないと──嫌だ。

 私は飛び付いた。

 お父さんの背中目掛けて、飛び付いた。

 すると──絶対に届かない距離だったのに、ふわっとした何かに押され──お父さんの肩の上に、乗る事が出来た。

 すかさずミルンの尻尾で、目を覆う。

 何が起きたのかは分からないけど、今はそんな事よりも、お父さんを助けなきゃ。


「っ……なあ、何でっ、止めるんだよ」


 お父さんの声が、震えている。今にも泣きそうな、辛い事を我慢している、優しい声。


「お父さん、殺しちゃ駄目なの。めっ」


 お父さんの目を、しっかりと尻尾で覆っていると、掴んでいたオークを手放して、ミルンの尻尾を撫でてくれた。


「ぐひぃ、ひいっ、たすっ、かった……」


 お父さんの肩の上から、オークを見る。

 このオークの所為で、お父さんが変わるところだった。皆のお家を燃やして、悪い事をするだけではなく、お父さんの手を、この優しい手を、汚すところだった。

 許さない。

 お父さんを変えようとした、このオークを、ミルンは絶対に許さない。


「ぐぅっ、誰かあっ! 誰かおらぬかっ!」


 今直ぐボコボコにしたいけど、お父さんから離れちゃうと、大変な事になっちゃう。でもやっぱり、ボコボコにしたいっ。


「ミルン、有り難う。もう大丈夫だ」


 お父さんはゆっくりと、尻尾から手を離して、ミルンを定位置へ座らせてくれた。

 お父さんいわく、肩車というらしいの。


「ほんとに大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ。ミルンの尻尾はアレだ、最高の癒しの尻尾だよな。お陰で頭がスッキリして──最高の気分だっ!」


「……お父さん?」


 いつものお父さんより、酷くなってるの。


「おいゴラ糞オークっ! なにお前逃げようとしてんだゴラァっ! 今からこの流さんの恐ろしさをっ、見せつけてやるわあっ!!」


「尻尾が効きすぎたっ!?」


 お父さんはオークの襟を掴むと、そのままずりずりと引っ張って、歩き始めた。


「はなっ、放せえっ、ぐぐぅっ」


 これは──さっきより不味い気がするの。

 

「はははははっ! 外に行くぞミルンっ!」


「物凄く不安なのおおおおおおっ!?」


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