18話 修復試乗古代の遺物.5
後部から迅号二式の中へ乗り込むと、まず目に入って来たのは、機体中央に置かれた円錐形の奇妙な物体。その上に、欠けた黒い玉の様な物が浮かんでいる。
「貴方もそうですが、どうやって浮いているのでしょうね……これがコアですか?」
「肯定。当施設のコアであり、当機、外部兵装製作機T-OGの本体になります」
「その姿は偽物だと?」
この玉が本体ですか。それならば今動かしている体は、作業用なのかしら。下半身が無いのは不思議ではありますが。
「否。このコアは元々、当機体内部に格納されておりました。格納部が破損した為こうして、別の機体に取り付けております」
「ご自身の体を直して、再度格納すれば済んだのではなくて? どうしてわざわざ……」
「不満。コアが破損した為、自動修復機能が作動せず、それならばと迅号二式を製作し、そこにコアを接続しました」
こんな物を作れるのに、自身の体は修理出来ないのですね。自動修復機能に頼って、体の設計図を残していなかったのかしら。
「ふかふかの椅子にゃ!」
「ふむぅ、迅号とは違い、長椅子を使っておるのかや。横になれる広さなのぢゃぁ」
「肯定。コアの配置、座席数、荷物置き場を考えて、長椅子が妥当と判断。量産機を二十機搭載可能となっております」
あのT-OGに似た者達が、二十ですか。付いていた武器を考えると、ちょっとした即応部隊ですわよ。本当に物騒ですわぁ。
「グルゥゥゥ、ニャゥア」
「どうしたのにゃ? 先頭にゃ?」
虎の後を追って、もちが奥へと行ってしまった。先頭にコクピットでもあるのかしら。
「急。凛宮司、コアの修復をお願い致します。この大きさならば、可能な筈」
「触ってみないと分かりませんわ」
玉の大きさは、直径三十センチ程。それだけを見れば、私の修復スキルの対象内なのだが、もしこれが自然物や生物であった場合、修復スキルの対象外となる。
「……」
そっと黒い玉に触れてみると、若干の熱を感じて直ぐ玉が光り始め、どうやら問題なく、修復スキルが発動したようだ。
「この感じですと、多少時間がかかりますわよ」
ミニカーやミニバイク程ではなさそうですが、欠けた玉の修復スピードを見る限りだと、直ぐには終わりそうにない。
「了。確認……施設稼働率十五パーセント。随時外部兵装展開、侵入者の対処に当たります」
「どれ、我も行ってやるのぢゃ」
そわそわしていた黒姫が、突然奇妙な事を言い出しましたわね。侵入者と知り合いの様ですし、説得でもするのかしら。
「さっきから態度が、可笑しいですわよ?」
「おっ、可笑しくないかや。アルテラとは知らぬ仲ではないし、何用かを聞いてみるのぢゃ」
この態度やっぱり、何かを隠してますわ。
「疑問。解析……駄龍より漏れ出た魔力を検知。当施設が気付かれた理由であると推測」
「なっ、何を言っておるのぢゃ! 我の魔力の制御は完璧ぢゃしっ、漏れておらぬのぢゃ!」
「疑惑。地上に魔物の反応を検知出来ず。駄龍の魔力に怯え、逃げたモノと推測」
どうやら、アルテラという神がここへ来たのは、黒姫が原因っぽいですわね。どうりで先程から、黒姫がソワソワしていた訳です。
「ぬぅぅぅ、仕方無かろう! 我は魔力を隠したりするのが苦手なのぢゃ!」
「不満。開き直りましたか」
「開き直りましたわね」
「二人して我を責めるでないわ! アルテラであれば我が抑えれるし、それで良いぢゃろ!」
竜を軽く倒せる事は知っていますが、この世界の神様と戦える程、黒姫は強いのでしょうか。疑問ですわね。
「なんぢゃその目は……」
「黒姫さんは、神様に勝てるのですか?」
「凛宮司貴様、我を馬鹿にしておるじゃろ……我は古き龍なのじゃぞ。神の一柱や二柱程度、簡単にあしらえるわ」
幼女の姿から、大人の姿になりましたわね。こうやって大人の姿を見ると、スタイル抜群の絶世の美女に見えますわ。
「不思議ですわね」
「不思議がらんで良いわ! まったく……流と言いお主と言い、哲也以外の異世界人は礼儀を知らぬのじゃ」
「あら? 私は礼儀作法に自信がありましてよ」
「どこがじゃ!?」
見た目は美女でも、中身は黒姫ですわね。とても弄り易くて、遊び甲斐が御座います。
「確認。侵入者第四防壁突破。駄龍、呑気に遊んでいる暇は、ないと判断。臨戦態勢推奨」
「口の悪いスクラップじゃの。ドールの奴も口は悪いが、お主程ではないかや」
「笑。統括機より頭が回る事の証明」
「お主……絶対馬鹿じゃろ」
ギャーギャーと言い合いながら、二人仲良く迅号二式から降りて行った。二人は思ったよりも、相性が良いのかも知れない。
「で、私はこのコアから、手を離せないと……」
ボーッとコアを眺めていたら、もちが凄いキラキラした目で戻って来た。尻尾が左右に揺れているので、良い玩具でも見付けたのかしら。
「メイちゃ! 前が凄いのにゃ!」
「何が凄いんですか?」
「良く分からないけど凄いのにゃ!」
恐らく前方には、この迅号二式とやらの操縦席があるのでしょう。先程からもちの手が、操縦桿を握る手をしてますもの。
「私は手が離せないので、後で見に行きますわ」
「にゃっ、にゃっ……何してるのにゃ?」
「コレの修復ですわね」
もちがペタペタと、コアの土台を触っていますが、爪が見え隠れしてますわよ。
「引っ掻いて良いにゃ?」
「止めなさい」
黒姫の鱗に傷を付ける爪ならば、この土台だけでなく、コアですら傷が付きかねません。折角修復しているのですから、勘弁ですわね。
「黒姫どこ行ったのにゃ?」
「さあ? どこに行ったのでしょうね」




