16話 黒幕さんと煮豚野郎.3
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俺とルシィの取っ組み合い。
普通に力負けしそうだったので、脛に齧り付くミルンを抱き上げ、必殺の尻尾アタック。
ルシィの顔面を、癒しが襲った。
「はぁっ、はぁっ、疲れさすな馬鹿女王!」
「きっ、気持ち良いのじゃぁぁぁ。このふわふわ感に包まれる感じは、堪らぬのじゃぁぁぁ」
「人の話をっ……」
何だろう。
尻尾はルシィに向いてるから、物凄く不満そうなミルンのお顔が、こっちを向いてます。
そりゃ目が覚めるわな。
「お父さん、ミルンを武器にしたっ」
「あっ、甘えた声じゃ無い!?」
「ミルンをぶきにしたっ」
んっ? いつも通りの甘えた声だな。
気の所為か?
可愛いミルンは、ぷんぷん怒ってても可愛いだなんて、頭を撫で撫でしましょうね。
「ミルンを武器にするなぞ、親としてはどうかと思うのぅ。ミルンや、こんな碌でも無い男とよりも、儂と一緒に暮らさぬか?」
「っ、寝言は寝て言えよ、お漏らしルシィ」
「だっ、誰がお漏らしか! 不敬にも程があるわ魔王! 少しは身分を考えよ!」
「おーおーヒステリック女王かよ。そんなんじゃ、ミルンに悪影響しか無いな」
「お主こそ悪影響じゃろ! ふんっ、ミルンは儂と、血の繋がった家族なのじゃ。一緒に暮らして、不都合などなかろう(ニヤニヤ)」
「かぞく?」
「そうじゃぞミルン。儂は家族じゃ」
こいつ、ミルンを誑かす気か!?
ミルンは、山籠りで一人ぼっちだった所為か、家族に飢えた可愛いケモ耳っ。
そんな可愛いミルンに、ガチの血縁者が手を差し伸べたら、ミルンが行ってしまう!!
「ミルンはお父さんと、一緒が良いよな? こんな、見てくれだけの女王となんて、暮らす訳が無いよな?」
「見てくれだけで無いわ! 儂は女王じゃし、毎日美味しい、肉料理が食べれるのじゃぞ」
「肉でミルンを釣ろうとか、考えが浅はか過ぎるわ。こちとら山程食料有るし、ミルンに合わせた味付けも、完璧なんだぞ」
「ふはっ、所詮は根無草の放浪人じゃろう」
「何だと……痴女王の癖しやがって」
「"ち"が余計じゃこの魔王が!」
取っ組み合いの再開です。
力で負けるのなら、本気の関節技キメて、ぴいぴい泣かしてやるわ糞ルシィ!!
「けんかだめ! どっちもいや!」
「「……えっ?」」
ミルンの発したその言葉に、腕を取り合う動きを止めて、二人同時に固まりました。
「けんかするならっ、やまにかえる!」
ちょっとミルンさんや、何その実家に帰らせて頂きます的な言い方。
「ボソッ(おいルシィ……休戦だ。ミルンは一度言ったら、確実に実行するからなっ)」
「ボソッ(くっ、分かっておるわ。あの様な森になぞ、帰してたまるものかっ)」
俺とルシィは、お互いに顔を見合わせ頷き合い、肩を組んでミルンに向き合う。
「ほらミルン。喧嘩何てしてないぞ? じゃれあってただけだって。なぁルシィ?」
「そうじゃぞミルン。仲が良い程喧嘩すると言うが、あれは本当なのじゃ。ほら、儂と流、こんなにも仲が良いじゃろ?」
「けんかじゃない?」
「喧嘩じゃ無いって。ほら、ルシィの乳を突いても、全く怒らないだろ?」
「はははっ、止めぬか流よ。本気で斬首に処そうかと、悩まねばならぬわーっ」
「ぶふっ……失礼致しました」
このやりとり見て、影さん笑ってるじゃん。
ミルンがジッと、まん丸お目々を光らせながら、俺とルシィを交互に見てくるし、気が休まらないとは、この事だろう。
このままミルンが森へ帰ったら、全力で追いかけてからの、ひたすら土下座だよ?
万が一、他人の様に接して来たら、俺泣き出して、異世界が嫌いになっちゃうよ?
「むーんっ、ゆるします」
ミルンはそう言うと、もそもそもと俺の体をよじ登り、ついでとばかりに、俺の肩に組まれているルシィの腕を、ペシィッと尻尾で叩き落としてから、肩車セットインッ、ミルン!!
「やっぱりミルンは、肩の上が良いよな?」
「ここがおちつくの!」
その行動に、俺は満面の笑みを浮かべるも、手を叩かれたルシィの顔が、ヤバい。
何がヤバいって、無表情のまま、目から涙をボタボタ流して、ミルンを見てるの。
「ルシィ……諦めろ(ニヤニヤ)」
そんな一幕も有ったが、事の詳細と言うか、現状どうなっているのかの説明を、影さん二号から受けた。
「気絶してから、丸一日経ってたのか……」
「左様で御座います」
「どうりで鼻から、臭いが取れない訳だ」
ルシィのお小水が、こびり付いてるからね。
そう言えば、あの豚野郎がトイレ使ってたから、俺の膀胱が死にそうなの思い出したわ。
気にしだしたら、急に尿意がヤバい。
「尿臭いから良いか? なぁルシィ。この高級ベッドに、今現在膀胱破裂寸前の尿を、ぶち撒けても問題無いよな?」
「早よう雪隠へ行ってこんか! そこにぶち撒けたらっ、牢へぶち込んでやるからの!」
「何だよ雪隠って?」
「流さん。厠の事で御座いますよ」
ああ便所の事ね。
厠も古い言い方だけど、雪隠って……ジアストールは、雪でも降る国なのか?
「あっ、漏れそう……」
「あそこのに有るからっ、さっさと行けい!」
「部屋にトイレ完備とか、マジでここ何処?」
ベッドから立ち上がり、トイレに向かおうとしたら、ルシィに服を掴まれた。
「何だよっ、漏らすぞ」
「ミルンを置いて行くのじゃ!」
「うんち?」
「違うぞミルン。小便だ」
「んしょっ、いってらっしゃい」
ミルンさんや、何で聞いたんだい?
大なら何か、有ったのかな?
そんな事を思いながら、無駄に豪華なお手洗いで、スッキリ爽快晴れやかな気分。
「……水道有るのかよ」
サッと手洗い、清潔にね!
トイレから戻って直ぐ、何か黒幕っぽかったらしい大臣と、煮豚の処遇を聞いてみた。
「表では、失踪と言う扱いじゃが、形式的に裁判を行って直ぐ、極刑じゃな」
「王国法では、放火は死罪。それを命じた者も同じく、死罪となります」
「極刑かますとか……スラム全体が、火に包まれていたと考えると、妥当なのかね」
荒屋ばかりのスラムだと、燃える物も多いだろうし、住民達が逃げ場を失っての、大災害にもなり得た訳だからな。
「そうじゃ。雨のお陰で、火は燃え広がらなかったが、王都存亡の危機に、なり得たのじゃ」
「んでコレを機に、不穏分子を一掃と?」
「うむ。今回の騒動で、物証を得ての。逃げられぬ様、影を見張りに付けていたのじゃ。あの大臣……儂の期待を裏切りおってっ」
長く側近をしていた、お偉い大臣が、こんな事に加担して、心を痛めているのか。
「せめてっ、後継を育てておれば……っ、もっと早くに処分したモノを!!」
「……心なんて、全然痛めてないな」
ただ自分の仕事が増えるのを、嫌がっている様にしか見えないぞ。
「極刑ねぇ……なんか、緩い気がするなぁ」
「むっ? 極刑が緩いとは、変な事を言いよるのぅ。死で償わせる事の、何が緩いのじゃ」
何て説明したものだろうか。
首を刎ねられた者が、直ぐに死ぬのかなんて分からないし、知りたくも無いけど、もしそれが、一瞬の痛みで終わるのなら、何とも緩い話だと言う事だ。
そして今回は、幸いにも死傷者は無し。
教会の奴等は知らんが。
それならば、償いも兼ねての、生地獄も有りなんじゃ無いかと、思う訳だよ。
「んーっ、死んだら、償いも何も無いだろ。死んでどうなるのかなんて、俺達は知らない。それならば、死よりも苦しい罰を、延々と与えた方が、良いんじゃないのかなって」
「流。お主は矢張り、魔王じゃな」
「終わらない地獄に御座いますか。拷問の様なモノであれば、可能かと存じますが……」
「おとうさんは、きちくなの」
ルシィ、影さん二号だけで無く、ミルンまでもが若干引いてます。
鬼畜なんて言葉、良く知ってるなぁ。
「んじゃ、鬼畜な流さんが考えた、素晴らしき生地獄を教えよう」
俺が考えた罰を、分かり易く説明完了。
ドン引きしてますねぇ。
材料は、煮豚になった大司教一体と、生贄の大臣に加えて、ちょっとした道具だ。
「うっ、うむ……死にたくなるじゃろうな」
「影でもその様な事は、思い付きません」
「おとうさん! ミルンはいいこにする!」
「何でミルンが怖がるんだ?」
大丈夫だぞミルン。
この生地獄は、アイツ等専用の地獄だから、他の誰にもしないと誓おう。
「死ぬ迄一生、苦しんで貰おうぜ」




