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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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15話 砂漠地帯の何かを探して.3


 ゆっくりと瞼を開けて、目を動かす。

 暗がりの中、手探りで懐中時計を探して、時間を確認すると──朝五時、起きる時間だ。


「この時間ですと、寒さがマシですわね」


 隣を見ると、「ふこぉぉぉ、ふみゃぅ、ゴロゴロ」と、もちが寝袋で丸まりながら、とても可愛らしい姿で寝ている。


「……」


 丸まっているもちのお腹に、そっと顔を近付けての、朝の猫吸いを堪能。それに満足したら、テントから出て軽く柔軟体操。


「ふぅ……」


「もう起きたのかや?」


「あらっ? 随分とお早いお目覚めですわ……ね? 何をされていらっしゃるのかしら」


 どうやったのか、黒姫がミニカーの真横で逆様になっているのですが、その状態で何事もなく話しかけて来るとか、意味不明ですわ。


「これかや? ミニカーから出ようとしたのぢゃが、引っかかって転けたのぢゃ。角が地面に刺さっておるから、上手く抜け出せぬのぢゃ」


「……それで?」


「そこで見ておらぬで、我を助けるのぢゃ」


 大人の姿になれるのですから、ご自身で抜け出せるでしょうに……まさかこの状態で、夜を過ごしていたのかしら。


「なにをしておるかや、早よ助けんか」


「分かりましたわよ」


「もちが抜くのにゃーぅっ!」


 突如シュバっともちが横を通り過ぎ、黒姫の足首を掴んだと思ったら「ふしゃあああっ!」と力を込めて黒姫を引っこ抜き、そのままビタンッ──っと地面に叩き付けた。


「見事な投げ技ですわ」


「朝の運動にゃーよ。おはようなのにゃ」


「ええ、おはようもち」


 朝の猫吸いで、起こしてしまったのかしら。


「起きたのでしたら、朝食ですわね。太陽が出て来る前に、済ませてしまいましょう」


「うにゃ! 朝も干し肉にゃ!」


「仕方ないですわ。出来ればお野菜が欲しいですけれど、無い物ねだりですもの」


 ミニカーの後部から、干し肉と水樽を取り出し、もちの分を渡そうとして──ふと、黒姫の反応がない。というか、姿が見えない。


「あらっ? さっきまで砂の上で、踠いていた筈ですが……どこに行ったのかしら」


「黒姫居ないのにゃ? 隠れたのにゃ?」


「隠れる場所なんて……」


 ここは砂漠のど真ん中であり、隠れる場所なんてどこにもない。にも関わらず、周囲を見回してみても、黒姫の姿はどこにもない。

 そして干し肉は、安定の不味さ。

 ツイバミの肉の臭みだけは、どうにも慣れませんわね。食べられるだけでも、有り難いとは思いますけれど。


「黒姫どこにゃーっ! 出て来るのにゃーっ! でないともちが、引っ掻くにゃーよ!」


「脅しですわね……何で脅し?」


「あの鱗で爪研ぎしたいのにゃ」


「それだと出て来ない気が……」

 

 ミニカーの周囲を確認しても、ミニバイクの周囲を確認しても、念の為空を眺めて見ても、どこにも居ない。


「どこに行ったのかしら」


 ミニカーのボンネットに腰掛け、徐々に暑くなる気温に顔を顰めて、下を見たその時、ボコッと地面が凹み──「のぢゃあっ!?」と、涙目になった黒姫が飛び出して来た。


「ぺっ、ぺっ、口の中がじゃりじゃりするのぢゃ! 水を飲ませるのぢゃ!」


「黒姫居たのにゃ! 引っ掻くにゃーよ!」


「ちょっ、我の尾で爪を研ぐでないわ!」


 砂塗れの私は、無視でしょうか。


「黒姫さん」


「いたたたたっ! 止めいと言うとるぢゃろ!」


「ガリガリにゃ! ガリガリするにゃ!」


 黒姫の尻尾の鱗が、若干剥がれていますわ。もちは牙だけでなく、爪も特殊なのかしら。っと、今はそんな場合では御座いませんわ。


「ほらもち、止めなさい」


「うにゃっ!?」


 もちを背後からそっと抱き上げて、猫吸いをしようとすると──「吸わないでにゃ!」と両手の爪を引っ込めて、私の顔を押して来る。


「ふひぃ……助かったのぢゃぁ」


「黒姫さん。突然居なくなったので、どうしたのかと思いましたよ。なぜ砂の下に?」


「我も驚いたのぢゃ。そこのもちに、地面に叩き付けられたと思うたら、あっという間に砂に呑み込まれたのぢゃ」


「砂に呑み込まれた?」


 地面を踏み付けて確認しても、多少埋まる程度で、呑み込まれる程のものではない。地下に空洞でもあれば、そもそも黒姫だけでなく、私やもちも呑まれてしまう筈。


「ほれ、そこの穴を見てみるのぢゃ」


「穴? あぁ、黒姫さんが飛び出して来た──穴が、消えている? どういう事ですの」


「不思議なのにゃ。穴を掘ってみるにゃーよ」


 抱いているもちを下ろして、ジッと地面を観察するが、何の変哲もない砂の大地だ。もちも穴を掘ってはいるが、周りから砂が集まって、上手く掘る事が出来ないでいる。


「掘れないのにゃ! ムカムカするにゃ!」


「黒姫さん、どういう事ですの?」


「ふむ。なんとなくなのぢゃが、この砂自体が、魔力に反応しておるような……そんな気がするのぢゃ」


「魔力に反応?」


 魔力ってアレですわよね。私のステータスに『そんなものはない』と記載のあったモノ。となると、この砂は私には反応しない?


「掘れないのにゃ! バリバリするのにゃあああああああう──にゃぶっ!?」


「もちっ!?」


「不味いっ、もちの魔法に反応しおったかや!」


 もちが体に静電気を発したその瞬間──砂の中へと埋まってしまい、それを追う様にして黒姫が砂へと飛び込み、私一人だけが、地上に取り残されてしまった。


「……呆けている場合では御座いませんわ!」


 もちが埋まった場所を掘り起こすも、ただの砂があるだけで、穴の一つも見当たらない。


「他に何か手は……っ」


 急ぎミニカーの運転席に座り、息を整えてから、自動音声に問いかけてみる。


「ミニカー、聞こえていまして」


『了。どのような御用件でしょうか』


「貴方の示した位置に、到着しましたわ。そしたら私の連れが、砂に埋まってしまいました。何かご存知かしら」


 これで反応がなければ、打つ手がない。


『了……目的地確認。もっ…ももも……目的…ち…かか……ようこそ! ミリタリーフロアへ!』


「んなっ!?」


 突如──砂の大地が大波の如く捲れ上がり、ミニカーやミニバイク、私を含めた辺り一面を呑み込み、強烈な揺れと落下する感覚を味わいながら、下へ下へと砂で流されて行った。


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