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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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15話 砂漠地帯の何かを探して.2


 寒い。とにかく寒い。この世界に来た時も味わいましたけれど、場所が違うからか、それともハッキリと意識しているからか、体の芯から凍てつく様な寒さです。


「にゃっ、にゃっ、ぬくぬくにゃぁ」


 暖房まで完備しているとか、あのミニカーの快適性だけは、とても羨ましいですわね。


「地図によると、この周辺なのですが……」


 見事なまでの砂漠地帯。見渡す限り、砂の大地が広がっており、草木の一本も生えてはおらず、見慣れてしまった光景。


「うぅっ、冷えますわっ」


 急いでミニカーの後部から、黒姫がどこからか持って来た物を取り出し、組み立てていく。

 

「面倒な作りですわ」


 先ずは、突起の様な物が付いた短い鉄の棒を、三本繋げて一本の長い棒にする。それと同じ物を四本作ったら、突起どうしを噛み合わせて、準備完了。


「黒姫さん。お願いしても、宜しいかしら」


「任せるのぢゃぁ」


 噛み合わせた部分を、黒姫さんに持ち上げてもらい、三角の形になったなら、下側を一本の鉄の棒で繋ぎ合わせ、倒れない様にする。


「ふぅ……残るは、布ですわね」


 ミニバイクの後ろに括り付けた鞄から、特別に作って貰った巨大な布を取り出し、骨組みの上に被して括り付ければ、仮設テントの完成。


「ふむふむ、良い感じぢゃのぅ。中にも布を敷けば、問題なかろうて」


「これがテントにゃ? 引っ掻いて良いにゃ?」


「もち、その爪を引っ込めなさい」


 ミニカーから降りて来たもちが、物珍しそうにテントを観察していますけど、鋭い爪を隠せておりませんわ。


「駄目にゃ?」


「ミニカーに命令して、帰らせますわよ?」


「うにぃぃぃっ、分かったにゃ」


 納得してくれたのも束の間、もちはミニカーから何かを取り出して、足早に戻って来た。


「もち……貴女はミニカーの中で、寝る予定だった筈ですが。なんなのですかそれは?」


「もちの寝袋にゃーよ。メイちゃと寝るのにゃ」


 もちが小さいとはいえ、このサイズのテントだと、寝るとすれば二人が限界。私、黒姫、もちの三人が入れば、寝返りも出来ません。


「それでしたら、黒姫さんにはミニカーで寝て貰う必要がありますが、良いのですか?」


「ミニカーはもちのにゃ」


「それならもちは、ミニカーで寝なさい」


「嫌にゃーよ。メイちゃと寝るのにゃ」


 我儘にゃんこですわね。とても可愛いですけれど、アレも嫌コレも駄目と覚えてしまったら、教育上宜しくないですわ。


「帰ったらナイーニャさんに、もちが我儘を言って困らせたと報告をして……ミニカーを没収して貰いますわ」


「ふにゃっ!?」


「もしそんな事になれば、ミニカーはバラバラに分解されて、研究されるでしょうね」


「バラバラにゃっ!?」


 文明レベルを考えたら、分解イコール破壊になるでしょうから、ミニカーは失われてしまうでしょう。私の修復スキルなら直せるでしょうが、もちを教育する為なら、鬼になりますわ。


「そうなったら、二度と修復はしませんわ」


「くっ、黒姫はミニカーで寝るのにゃ!」


「のぢゃ? 使うて良いのかのぅ?」


「寝る時だけ貸すのにゃ!」


 ふふっ、にゃんこに勝ちましたわ。


「それじゃあ、夕食を頂いて、今日は早めに寝ますわよ。明日は早めに起きて、この砂の大地の調査ですわ」


「夕食にゃ!」


 と言っても、干し肉を齧るだけの夕食。とてもシンプルなのですが、この寒空の下ですと、温かいものが食べたいです。


「ふむぅ、持って来ておいて正解ぢゃったか。ほれっ、流からの贈り物なのぢゃ」


「突然なんですの──っ、なっ!?」


「これは何なのにゃ?」


 黒姫はずっと、大きめの鞄を背負っていた。黒姫の荷物だろうと思い、中身に関しては聞いておらず、聞く必要もないと思っていた。


「小鍋とカセットコンロだなんて……っ、こんな物を一体どこで、手に入れたのかしら?」


「流の領地で作っておるのぢゃ。というか、レッツァマーダの各家庭にも、大型の物はあったぢゃろうて」


「小型の物は初見ですわよ」


 魔物の体内にある、魔石という色付きの石。その魔石で火を起こし、食堂の厨房で調理を行っている事は、勿論知っている。


「流という方は、一体何者なんですの? この様な便利な物まで、作るだなんて……」


「何を言っとるかや? そのコンロのいう物を作ったのは、流ではないのぢゃ。流がやっておるのは、ただの増産ぢゃのぅ」


「そうでしたのね……大陸が違うだけで、こうも技術に差があるだなんて。どなたが作られたのか、ご存知かしら?」


「知らぬのぢゃ」


 となると、流という方が住まわれている大陸では、製造業が盛んなのかしら。行けるものなら、行ってみたいですわね。


「ほれ、凛宮司。ボーッとしておらんと、この肉を焼くのぢゃ。流の奴めが絶賛しておる、ミノタウロスのステーキぢゃぞ」


「……ミノっ、えっ?」


「赤いお肉にゃ? 紫じゃないにゃ?」


 黒姫が続け様に出して来たのは、どこからどう見ても、ステーキにしか見えない生肉。より正確には、牛肉にしか見えない物。


「黒姫さん」


「どうしたのぢゃ?」


 見事なサシが入った、美味しそうな肉ではありますが、ただ一つ、この状況だからこそ、とても不安になる事がある。


「腐っては……いませんわよね?」


「大丈夫ぢゃろ」


「すんすんっ……臭うにゃーよ?」


 炎天下の中、美味しそうな生肉を、丸一日鞄に入れていたならば、腐るに決まってますわ。


「その肉は、食べられないですわね」


「干し肉食べるのにゃゔゔゔっ」


「……我、せっかく持って来たのにのぅ」


 黒姫が項垂れてしまいましたわね──って、生肉をそのまま食べていますわっ! いやっ、この方は人ではなく、魔龍という意味不明な存在ですから、大丈夫なのでしょう。


「むぐむぐ……ぶふぇっ!? くさっ、腐っておるのぢゃ! 食えたもんではないかやっ!」


 前言撤回、大丈夫ではなかった様です。


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