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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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14話 オーバリアヌの異変.5


 エルララルラをダブレス大臣に預け、城下町をぶらぶら散策している風を装いならが、お師様への連絡を行う。


「ふんふんふーん、う◯ち発見!」


 その筈だったのに、何でこの地の精霊は、僕にくっ付いているのだろうか。邪魔だから、どこかに行って欲しいなぁ。


「あのぉ、ミユンさん。僕は一人で、この首都を散策したいんだけど……」


「まあまあ、気にしないで良いの」


「気にしますって」


 そして何故っ、素手で汚物を掴み取り、袋詰めしているのだろうか。絶対に汚い筈なのに、なんの躊躇もなく掴んでんの。

 

「その汚物……どうする気なんですか?」


「汚物じゃなくて、立派な肥料だよ?」


「人糞が肥料とか……」


「魔物のう◯ちだろうと、人のう◯ちだろうと、ミユンからしたら同じなの。みんなお尻から出て来る、立派な肥料っ」


 汚物を掴んで、踏ん反り返ってるよ。

 とてもシュールな光景です。

 周りを良く見たら、トングの様な物を持ち、汚物拾いをしている人達も居るし、美化にも力を入れ始めたのだろうか。


「食べ物に困らないから、余裕が生まれた?」


「のんのん。う◯ち拾いは、パパがこの国の人達にお願いした、立派なお仕事なの」


「汚物拾いが……仕事?」


「そうなの。パパ曰く、『石の都風で綺麗な建物なのに、何で掃除しないんだよ』って、プチ怒になりながら、人を集めてたの」


 せいそういんって──清掃員かな? 流って異世界人……現代の知識を余す所なく、実用的に使ってるなぁ。

 

「そのパパって人は今、南のアッジスノードに居るんだっけ? ミユンさんは行かないのか」


「ミユンは別働隊! このウサ鞄を持ってるから、二手に別れて食料支援をしてるの」


「二手にねぇ……っとそうだ、それ、その鞄。湯呑みとか入れてたけど、何なのそれ?」


 湯呑みとか何個も出してたけど、どう見ても入りそうにないサイズだし、物凄く気になっていた。その兎の模様も、とても可愛いしね。


「これ? ミユンの鞄なの」


「それは分かってますって。そうじゃなくて、湯呑みを何個も出してたじゃないですか。その大きさだと、入らないですよね?」


「入るよ? "マジックバック"だもん」


「マジックバック? ……はっ?」


 この異世界に来て二年。何処に行くにも水、食料、布等々、巨大リュックを背負いながらの移動が当たり前なのに、ここに来て突然の、チートアイテム発見。


「それって、物が沢山入るやつだよね!」


「そうだけど……あげないよ?」


「なっ、ぐっ、どこで見付けたの!」


「ミユンの住んでる大陸の、北の迷宮なの。貴女が行っても、力不足で死んじゃうよ?」


 地の精霊なんていう化物からの、突然の死の宣告。僕の力を見透かされている様で、とても気持ちが悪い。


「そっ、そんなに危ない迷宮なのかな?」


「ミユン一人だと、踏破は難しいの」


「精霊でも無理とか……」


 わざわざ他大陸に死にに行かなくても、もしかしたら、このヴォイド大陸の迷宮にもあるかも知れないし、探してみようかなぁ。


「あっ、ドールが来たの」


「ドール?」


 大通りの先から、変な人が歩いて来る。

 黒子の様な頭巾を被り、顔が見えない。

 足首まで隠れた、本物のメイド服。

 そしてなにより、この精霊のミユンと同じく、一切の気配を発さずに歩くその異常さに、背筋がゾクっとした。


「あの人も……ミユンさんの仲間?」


「そうなの」


「(流って人の仲間って、化物だらけだぁっ)」


 お師様の昔馴染みである、魔龍の黒姫。地の精霊ミユンに、歩いて来る不気味メイド。ワンブルも居るんだっけ? なーんかワンブルだけ、浮いた存在だなぁ。


「えっ、エルララルラを抑えた時に居たっていう、ワンブルは居ないのかな?」


「わんぶる? ミルンお姉ちゃんの事?」


「そういえば、何で精霊のミユンさんが、ワンブルをお姉ちゃん呼びなのさ。そのミルンって人も、もしかして精霊なのかな?」


「違うの。ミルンお姉ちゃんは、犬人族だよ? パパの娘だから、ミユンのお姉ちゃんなの」


 余計に分からなくなりました。ミユンのパパは、流っていう異世界人で、その娘がワンブルのミルンって人……頭が混乱するんですけど。


「ミユン御嬢様、お待たせ致しました」


「待ってたのドール。燃料は大丈夫?」


「肯定。充填率九十二パーセントにて、問題御座いません。そちらの方はどなたでしょうか」


 黒子頭巾のメイドさんから、視線を感じる。顔が見えない筈なのに、見られている感が凄いんですけど、冷汗が出て来るよぉ。


「はっ、初めまして。レッツァマーダ魔導国から来た、古奈月と言います」


「了。ドールと申します。計測……脅威度判定A。敵対の意思なしと判断致します」


「……えっ?」


 この人何言ってんの? 計測? 脅威度判定って何? 精霊とはまた違う意味で怖いんですけど、どう反応すれば良いのさ。


「駄目なのドール。勝手にそんな事をしたら、パパに言い付けるよ? 一日ご飯抜きなの」


「不服。"当機"が動かなければ、移動手段が制限されますが、宜しいのでしょうか」


「黒姫が居るの。お空でビュンが出来るから、ドールの居る意味がなくなるよ?」


 このドールっていう人の声、何処かで聞いた事があるような……どこだったかなぁ。どことなく機械音声に聞こえるし、気持ち悪い。


「了。古奈月様」


「うぇっ!? はっ、はい……なんですか?」


「本人の了承もなく計測しました事、心より謝罪させて頂きます。申し訳御座いません」


「はぁ……?」


 理由も分からないままに、謝られたんですけど? 僕はどう答えれば良いのかな? 誰か教えて下さーいと言うか、助けて下さい。


「謝罪完了」


「それで良いの。それじゃあ一度、アッジスノードまで戻るとするの。貴女も来る?」


「えっ? ぼっ、僕は行かないですよ。国に戻って色々としなきゃだし……」


 この異常な存在を纏めている、流っていう人が今居る国に、わざわざ行く訳がない。それこそ、死にに行くようなモノだろう。


「残念なの。まあ、ここの支援が進んだら、そっちの国にも遊びに行くから、その時は宜しくお願いします」


「……分かりました」


 それはアレかな? 攻めに来るのかな?


「それじゃあ、ミユンは行くの。ばいばい!」


「失礼致します」


「あっ、はい、さようならぁ」


 ミユンという精霊が、ようやく側から居なくなり、やっとの事で緊張から解放され、ゆっくりと地面に座り込んだ。


「これ……お師様になんて報告すればっ」


 お師様。お師様の昔馴染みである、魔龍の仲間ってね、皆んなが皆んな、化物なんです。もうね、疲れちゃいました。


「さっさとエルララルラの件を片付けて、もう今日は寝よ……報告は、明日で良いや」

 


 次回は凛宮司、もち、黒姫回です!

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