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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
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14話 黒幕さんと煮豚野郎.1



 「なぜだっ! なぜ私がこのように逃げねばならぬっ! くそっディムニ大司教めっ」


 月夜輝く夜、男は焦りながらも大きな皮袋に金貨や宝石類、書物を詰め込んでいく。

 時間の猶予は少ないものの、ここで不審に思われ捕まるよりかは、平然と過ごし、機を見てからゆっくりと去る方が確実だと思っているからだ。


「それに何だあの魔法わっ…あのような魔法、今迄に見た事がない」


 大聖堂を跡形も無く消し去り、その威力に反して周囲への被害がほぼ無い。

 せいぜいが民間や城が揺れたのみ。

 大聖堂程の大きさの建造物を破壊したとなると周囲へ甚大な被害を及ぼす筈が、被害の報告が一つも来ない。


「まさかっ…古の魔法…」

 そんな馬鹿な話があるかと頭を振り、皮袋を肩にかけ周囲を伺い、ゆっくりと、自然体で歩き出す。


 すれ違う者達には、いつも通り雑談をして、巡回中の衛兵に会うと指示をだし、ゆっくりと目的の場所へ向かう。

 

 大きな物置小屋。

 その角に置いている木箱を退かし、音がでないよう床板を剥ぎ、そこには地下へと続く扉があった。


「はぁっはぁっ、良し。ここからスラムを経由してっ馬を盗み、王都の外へと逃げれば追って来れまいて」

 扉を開き、松明を着け、薄暗い階段を降りていき、その階段が終わる所で一度休憩する。


「あとは、ここから真っ直ぐか…」

「どこへ行かれるのですか大臣」


 耳元で急に声が聞こえンヒュッと喉から空気が吐き出されながらも前へ転がる様にして倒れ、声がした方へ振り向く。

 そこには…。


「逃げる事は叶いませんよ大臣」

「逃すと思いますか大臣」

「逃げても直ぐ捕まえますよ大臣」

「逃げた先にもおりますよ大臣」

「逃げようとすれば脚を斬りますよ大臣」


 黒外套を着て顔を隠し、王家に古くから仕えるジアストールの暗部、影達が闇より現れ、それを見て直ぐに、大臣と呼ばれた男の意識は闇の中へ落ちていった。


「さて、皆さん。撤収いたしましょう。影に連絡をして下さい」

「わかりました影」

「行きましょう影」

「全く、影使いのあらい影ですね」

「早く帰って女王陛下で遊びましょう影」


 そう言って大臣の両足を持ち、階段を走って上りそのまま城の中へと消えて行った。



【14話 黒幕さんと煮豚野郎】



 ジアストール城の地下、牢獄よりも深き場所にある処刑場にて、ルルシアヌ・ジィル・ジアストールが傍聴者へ告げる。


「是より、アルテラ教大司教オーグドディムニ及び、ジアストール国大臣、トネリオスドーズの裁判をとりおこなう」


 声は透き通り、巷では泣き虫女王と言われている事を微塵も感じさせない。


「二人を此処へ」

 そう告げると、目隠しをされ、荷車に手足を括り付けられ、四つん這いになりながら一人一人影によって運ばれてきた…全裸となって。


 大司教オーグドディムニは口枷をはめられたまま、股間は潰されて色々漏れ出ており、お尻は酷い火傷で爛れ、水脹れや膿ができており、まともに座る事すら出来ない有様。


 逆に大臣のトネリオスドーズは、口枷をされているものの、頭にこぶができている程度でフゴォフゴォと鳴くほど元気である。


そんな二人を冷めた目で見ながら、罪状を読み上げていく。

「大臣、トネリオスドーズ。貴様はそこの大司教と共謀し、ラクレル村を手に入れるべく一般人を魔王と認定させ、それだけでは無く刺客を放つ事を黙認し、儂に意図して報告をせず、結果として大聖堂を失った。これに相違ないか?」


「フゴォ! ムームーモモッ!」

 口枷を付けられている為何を言っているのか分からないが、影が応えてくれた。 


「陛下、間違いございません。だそうです」

 ムモォッ!? と大臣が何か言いたそうではあるが誰も何も言わずに裁判は進行する。


「次に、大司教オーグドディムニ。一般人を魔王と流布し、神官達を使いそれを亡き者とし、ラクレル村を手に入れようと画策。又、それが失敗と見るや神官ザルブに、スラムごと消し去る様命じ、その結果として大聖堂は消失、貴様もその怪我を負った事、相違ないか?」


「フゴォ…フゴォ…ピギャッ…」

 口枷を付けていなくても、心神喪失により何を言っているのか分からないが、影が応えてくれた。


「陛下、プギィ…間違いございません。と応えております」

 若干、影に豚語がうつってしまった様だ。


「二人共自らの罪を認めた事、儂がしかと聞き届けた。…それでは、判決を言い渡す。両名ともに手足を切断後、絞首刑に処す! 異論のあるものはおらんか?」


「ムゴォオオオオオムムムモッ!?」

「プギィ…プギィ…」 

 悲しいかな二人の罪人以外誰も声を上げない。


 いや、一人だけゆっくりと傍聴席から立ち上がり、そのまま二人の罪人の元へと歩いて行く男。そしてそのまま口を開き、その声が処刑場に響き渡る。


「異議あり!!」


 大臣は安堵した。

 目隠しのせいで誰かは分からないが刑罰に異議を唱えてくれている人がいる事に。

 但し、次の言葉でそれは恐怖へと変わる。


「裁判長! 刑罰が優し過ぎます!」


 何を言っているのか分からないまま、裁判は進行して行く。

「ほう、其方はこれが優しい罰と申すか…ならば問おう。こやつらに与える刑罰は何が妥当と考える?」


 その男はゆっくりと大臣へ近づき目隠しを取り、大臣の目を見ながらこう告げた。

「そこの煮豚の汚い尻と、大臣様の臭い口をキッスの刑が妥当かと思われます! なんならそのまま顔を突っ込みましょう!」


 大臣はその顔を見て、その内容を聴き、今の自分の体勢がどのようになっているのかを見て、全てを理解した。してしまった。


 目の前には大司教の汚い臭い尻があり、あとは乗っている荷車を押されればそのままその尻へ…。


「さあ黒幕さん。刑の執行の時間だよ?」


 魔王が、大臣に微笑みかける。


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