表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女の居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/656

22話 進撃乱戦あいつはどこに.4


 2026/06/28 改稿



 色々と予想外の事が起きたが、何はともあれ砦の中に侵入成功。五感に優れたミルンを先頭に、薄暗い通路を進んでいる。


「すんすんっ……」


「誰もぉ、居ませんねぇ?」


「せやな。兵一人も居らんなんて、変な話やで」


 そう、砦に侵入してからというもの、誰にも遭遇する事がなく、先頭を歩くミルンの尻尾が、つまらなさそうに垂れているんだ。


「なあミルン。知らない匂いのする場所って、分かったりはしないのか?」


「難しいの。ここまで臭いと、近くまでしか嗅げないし、鼻が捥げちゃうっ」


「そんなに臭いか?」


 ニアノールさんを見てみるが、首を横に振っており、どうやら嗅覚は、ミルンの方が優れているっぽい。犬耳だからかねぇ。


「どこから臭ってるんだ?」


「分かんないっ」


 ミルンが臭いと言う程の臭いか。


「気になるな……おっ、初扉発見だ」


「調べますねぇ」


 ニアノールさんは扉へと近付き、その扉に猫耳を当てて、中の音を聞いているようだ。ミルンは嗅覚で、ニアノールさんは聴覚か。


「素晴らしきかな、ケモ特性っ……」


「流にーちゃん。緊張すんの、誤魔化したいのは分かるけど、気ぃ抜けるから止めや」


「っ……リティナに言われるなんてなぁっ」


 俺は基本的に、小心者だからな。争いとは無縁の国で産まれて、育ってきた身としては、緊張するなってのには無理があるだろう。


「開きましたよぉ」


「ニアノールさんって、鍵開けも出来るのか」


「色々とぉ、仕込まれましたのでぇ」


 そこは敢えて聞かぬが吉だな。誰に何を仕込まれただなんて、知らない方が良い。

 

「さてっ、中には何が──って、金庫かここ? 金製品のオンパレードじゃん」


「ぴかぴかっ!」


「流石教会ですぅ、儲けてますねぇ」


「どう見ても、大司教の物やろ。迷惑料代わりに、根刮ぎ貰ったろーや」


 そういうとリティナは、端に置いてあった小箱を漁り始め、ニアノールさんは棚の上、ミルンは金の皿目掛けて動き始めた。


「……ほい"空間収納"っと」


 三人が触っている物以外の、金製品を根刮ぎ有り難く、頂戴致しました。細かい確認は追々するとしよう。


「狡いですよぅ、それぇ」


「ほんまそのスキル、泥棒向きやなぁ」


「泥棒向きとか言うなっての。んな事とっくに自覚しるって。ほれ、さっさと行くぞ」


 取れる物は取ったし、さっさと大司教を見付けて、証拠やらも探さなきゃだし。


「お父さん、これなあに?」


「どうしたミルン。何拾って──木の枝? 結構太いから、香木ってやつか」


「こうぼく? それってなあに」


 金製品だらけの部屋に、異様に目立つな。香木とかって確か、凄い値打ち物の筈……この異世界ではどうか知らんけど。


「香木って言うのは、香料……じゃあ分からないな。熱してその香りを、楽しむ物だ」


「ふーん。余り興味が湧かないの」


「そうだろうな。一応回収しておくか」


 空間収納に入れておいて、後々金製品と一緒に、どんな物なのかを確認してみよう。ステータスの備考欄を見れば、何の枝なのかは判明するだろうしな。

 そうして部屋から出て、ぐるぐると砦内を散策するが、書斎、食堂、厨房、寝室らしき部屋はあれど、大司教の姿が見当たらない。


「この部屋にも居ないか……」


「そうみたいですねぇ」


「チッ、流にーちゃん、これ見てみい」


 暖炉らしき所を見ているリティナが、俺を呼んだので、行ってみると──大司教の奴が、やってくれちゃったようだ。


「まだ温かいな。何かの書類を燃やしたのか」


「なに燃やしたかは知らへんけど。ウチらに見られたら、ヤバいもんとかやろな」


「証拠隠滅か……結構部屋を回ったのに、姿が見えないのはなんなんだ? 隠し部屋でもあるのか……既に逃げたあとか」


 手掛かりはないかと部屋を見回すと、ミルンがジッと床を睨んで、手で鼻を押さえている。そんなにもあの床が、臭いのだろうか。


「おいミルン、どうした?」


「……ゔゔゔっ」


 尻尾が膨らんだり、縮んだりを繰り返し、呻き声を出しているという事は、ミルンの嫌がるナニカが、あの床にありそうだな。


「ほれミルン、こっち来なさいな」


「むぅぅぅ、あの床臭いっ」


「あの床だな。分かった」


 ミルンを抱っこして、ニアノールさんに目線を送ると、頷いて直ぐ、この部屋の床に耳を当てて調べ始めた。


「えっとぉ、床下に空間がありますねぇ。それにこの臭いは──"駄目"なモノですよぅ」


「ニア、そこん床に凹みがあるわ」


「ここですねぇ、よいしょっとぉ」


 本来ならば、何某らの仕掛けで、開くモノなのだろうが、ニアノールさんの意味不明な腕力で、床の一部がベコっと剥がされ──地下に続く階段を発見した。


「うっ……これって、何の臭いだ」


 床が臭いを堰き止めていたのか、吐き気を催す臭いに、思わず顔を顰めてしまう。


「鼻が曲るのっ! 臭いっ!」


「ちょい待ちミルンっ……えっと、布をこうして千切ってと。ミルンの鼻に突っ込めばっ!」


「ふがっ……ぐるぢいのっ」


 布の切れ端を、簡易的な鼻栓にして、ミルンの可愛いお鼻に栓をしました。


「この下からぁ、声が聞こえますよぅ……四名程でしょうかぁ。隠し通路のようですねぇ」


「ニア、こん臭いって……」


「そうですよぉ、リティナ様。貧民街でぇ、よく嗅ぐ臭いですねぇ……」


 リティナのニアノールさんは、この臭いに一切動じず、よく分からない事を言って、そのまま階段を下りて行く。

 

「ちょっ、二人とも待てっての。ミルン、臭いは我慢出来そうか?」


「大丈夫っ。んしょっ、ミルンも行くの!」


 二人の後を追いかけるように、斧を持つミルンが先に下り、俺は注意深く、背後を警戒しながら下りて行く。


「ゔゔゔぅ……ふんっ! ふんっ!」


 ミルンは臭いを我慢しているのか、斧をブゥンッブゥン──と振り回し、その臭いを散らそうとしているが、ここまで充満していたら、流石に無理があるだろう。


「ほい、到着っと。一本道の地下通路か」


「リティナとニアノールが、何か見てるの」


「なんだあれ……」


 松明の明かりが照らす、薄暗い一本道の両端に、小さめの牢屋のような物が並んでおり、それに目を向けながら、二人へ近付いて行った。


「なあ二人共、何見て────」


 二人の目線を追い──それを見た。

 すかさずミルンを抱きかかえ、「ぬわっ! なにするのっ!」その目を隠し、俺は再度、ゆっくりとソレを見た。


「なあっ、リティナ、ニアノールさんっ」


「言わんでええっ。口にすなっ……」


「リティナ様。直ぐにぃ、供養の準備をしてもぉ、宜しいでしょうかぁ」


「許可せえへん訳がないやん」


 大量の──骨。大量の──亡骸。ソレらが小さな牢屋の中に、まるでモノのように敷き詰められ、その全てには特徴があった。

 俺は──甘かった。

 情報戦を仕掛け、扇動し、追い詰める。

 そんな事をしている暇があったなら、さっさと攻めていたならば、この子達を、一人でも多く救えたかも知れない。

 それを俺は、やらなかった。

 魔王と噂される程の力を、持ちながら、俺が日和った所為で、自身の安全を優先した所為で、この子は助からなかった。


「ミルン、絶対にこれを取るな」


 空間収納から布を取り出し、ミルンの顔を覆い、ゆっくりと、抱っこしているミルンを下ろして、リティナに抱きつかせる。


「リティナ……ミルンを頼む」


「お父さん?」


「あんた、何する気や」


 俺はゆっくりと、通路の先を見た。恐らくこの先に、大司教が居るのだろう。逃げようとしているのだろう。


「────殺してやる」


 俺は──全力で駆け出した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ