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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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14話 オーバリアヌの異変.3


 ダブレス大臣は口をパクパクとさせ、顎下の贅肉をたぷたぷと揺らしながら、エルララルラと僕を交互に見てくる。

 

「ほらほら、ご自身の国の女帝様ですよ。多少関節が外れてますけど、ちゃんと生きてます」


「ぐっ……なっ、なぜ古奈月殿がっ」


「いやぁ、抑えるのは大変でしたよ」


 さて、なぜエルララルラが、公に死んだ事になっているのかの理由を、聞き出さないとだ。


「レッツァマーダから出向していた、我が国所属の円堂・兎留美を、拉致、監禁、暴行、拷問と、色々やってくれましたね」


「なっ、まさかっ……あの時突然居なくなったのは、円堂殿を追って行ったのかっ」


「貴国は戦をお望みか?」


 この慌てようだと、こっちの事情は知られていないかな? だとすれば、ノブストン側の落ち度を突きまくって、旨い汁だけ吸おう。


「待って下され! 我らは戦なぞ望んでおりませぬ! あのエルフが居るレッツァマーダと争うなぞっ、有り得ぬでしょうぞ!」


 流石お師様、良い抑止力だよね。


「では、この女帝である筈のエルララルラが、なぜ死んだ事になっているのかの説明を、今ここで求めます」


 エルララルラが生きているのに、もち様を寄越せだとか、図々しいにも程がある。


「そっ、それは……っ」


 ダブレス大臣は、ゆっくりと喋り始める。


 エルララルラは、城内で狂った様に暴れた。


「(それはこちらの予定通り)」


 流という男と、黒姫という魔龍、ワンブルの幼子の三名が、暴れているエルララルラと対峙し、それを抑え込んだ。


「(討たれていなかったという訳だ)」


 その最中、女帝エルララルラは、首の肉を抉り取り、自ら命を断とうとしたと──んっ? あのエルララルラが、自殺しようとした?

 

「流殿のお陰で、一命は取り留めたものの、死んだ様に眠って居られたのです」


「えっ、いやいやっ、ちょっと待って!」


「どうされたので?」


「いいからっ、ちょっとだけ待って!」


 お師様は隣国の付き合いとして、幼き日のエルララルラに、会った事があるらしい。


 一度目は赤子の時。

 その時はまだ、普通の赤ちゃんだった。


 二度目は皇帝との会談の時。

 可愛らしい笑顔の、女の子だった。


 三度目は皇帝崩御の時。

 皇帝を縦に斬り殺したのは、"リシュエルの称号"に侵されて狂った、幼き日のエルララルラ。その称号は、人格に影響を及ぼすのだ。

 だからこそ、自死なんて有り得ない。

 称号がそれを、許さない筈だ。

 

「考えられるとしたら……っ、まさかこのエルララルラが、リシュエルの称号を打ち破った?」


「古奈月……殿? リシュエルとは?」


「っ──こっちの話だから、気にしないで」


 危ないっ、口に出しちゃったよ。幸いダブレス大臣は、首を傾げているし、リシュエルなんて言われても、知っている訳がないよね?


「リシュエルが、どうかしたの?」


「えっ……」


「今さっき、リシュエルって言ったよね?」


 うん、ここにもう一人、地の精霊なんていう人外が居た事を、すっかり忘れてました。そうだよね、流っていう人の仲間だから、知っていても可笑しくはないよね。


「きっ、気にしなくても良いよ?」


「それは無茶な相談なの」


「いやぁ……えっとぉ」


 そういえば──流という人も、リシュエルの称号を持っていると、レッツァマーダに来た黒姫という魔龍は、言っていた。

 その称号に侵される心配もない程に、人という種を超越した存在──魔神・流。どこからどう聞いても、ラスボス感が半端ない。


「くっ、黒姫さんに聞いたんだぁ……」


「黒姫に? 何で黒姫知ってるの?」


「散歩だとか言って、レッツァマーダ魔導国に来てたのさ。代表がその黒姫さんの、昔馴染みらしくて、今もまだ居ると思うよ」


「ふーん、黒姫の昔馴染み……誰だろ」


 誤魔化せた? 上手く行った? 嘘を吐かずに誤魔化すのって、相当しんどいなぁ。


「それで、貴女は何を隠してるの? ミユンをずっと警戒してるのは、何で?」


 誤魔化せていませんでしたあっ! これってアレかな? 人生で幾度目かになる、最大のピンチってやつなのかなぁ?


「何でってぇ、言われてもですねぇ……精霊なんて初めて見ましたしぃ、こう、直感というのが働いてぇ、怖いなぁって……」


「ミユンは怖くない精霊なのに、とても失礼な人なの。怖い精霊なんて、ファンガーデンに帰れば沢山居るの」


「……そこって地獄ですか?」


「賊にとっては地獄だけど、普通に暮らす分には楽園なの。お仕事沢山! お金も沢山!」


 あっ、上手く誤魔化せた。どうやらこの精霊は、観察力は異常だけど、心を見抜けるって感じじゃあなさそうだ。


「えっと、話を戻しましょうかって、どこまで聞きましたっけ?」


「このエルララルラ様が、死んだ様に眠っておったところまでですな。と言ってもその後は、知らぬ間にいなくなっていたとしか……」


「成程ねぇ」


 眠ったままだから、公には死んだという事にして、表舞台から存在を消し去った訳か。そして、いつの間にか起きて、行方を眩ませたエルララルラが、円堂さんを襲った。

 

「……(なんとも、複雑だなぁ)」


 リシュエルの称号持ちを殺したい、お師様。

 その指令を受けたのは、円堂さん。

 リシュエルの称号を持つ、エルララルラ。それを暴走させて、狂わせる事には成功した。

 抑え込んだのは、流、黒姫、ワンブル。

 エルララルラは自死。

 それを治したのは、流。

 エルララルラは意識を取り戻し、円堂さんを追い駆けて襲い、アンジィが救出に向かった。んで、今に至る訳ですか。

 

「駄目だ……頭が爆発しそう」


「頭が爆発するの? お薬要る?」


「ふぁぁぁふ、うるちゃんはどこですかぁ」


「陛……いや、エルララルラお嬢様。ここはノブストンですので、円堂殿は居りませぬぞ」


 うん、混沌とした感じになってるんだけど、僕の脳内キャパがオーバーですともっ!


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