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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
七章 異世界とは魔人達の居る世界

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14話 オーバリアヌの異変.2


 そんなこんなで、こうしてお城の一室で、まったりお茶を飲みなら、この国の大臣が来るのを待っています。


「……いや警備ざる過ぎだって」


 城に到着しました。

 地の精霊ミユンが、『ちょっとお邪魔するの』と言うだけで、門番が通してくれました。

 貴賓室に案内されました。


「この国、精霊に乗っ取られてないよね?」


 そのミユンはと言うと、大臣を呼んでくるからと言ってそのまま、肩から飛び降りて走って行った。この国の大臣は数名居る筈だけど、誰を呼んで来るのだろうか。


「僕の力じゃ殺せないし、かと言ってレッツァマーダには連れて行けないから、こうして届けに来た訳だけど……大臣はどう反応するのか」


 事情が事情だけに、結構面倒だ。

 当初円堂さんは、任務に成功したとの連絡を寄越して来た。イコール、エルララルラを暴走させる事に、成功したという事だ。

 しかし実際には、暴走しているどころか、逆に円堂さんを捕らえてしまう程の、思考する化物となっていて、アンジィすら敵わなかった。

 近接特化の僕でも、殺せない存在だ。


「そんな存在が居るのに、どうしてこの国の人達は、あんなにも穏やかだったのか……」


 それが一番の問題だ。


「すぅ……すぅ……うるちゃぁ……」


 この布切れを被って、すやすやと寝息を立てている女は、この国の"女帝"であり、民達からも恐れられる、暴力の化身。

 そう、これでもこの国のトップ。

 そんな存在が不在にも関わらず、この国は流という異世界人の支援を受け、着々と食料問題の解決に向かっている。


「訳が分からないなぁ……頭が痛いよぅ」


 お茶をズズッ──とぉっ!?


「何このお茶っ! 本物の緑茶なんですけど!」


 これはアレかな、他大陸からの支援物資。こんなお茶が飲めるなんて……もう二度と、飲めないと思っていた味だぁ。


「なんか、泣けてきちゃう」


 そんな感じでしみじみと、お茶を飲んでいたら、コンコンッ──『入るの』と、こちらがどうぞと言う前に、ミユンが部屋に入って来た。


「なんで涙目なの?」


「いやぁ、お茶が美味し過ぎてさ」


「ふーん。ダブレス大臣を呼んだから、少し待ってれば来るの。その間にお昼をどうぞ」


 そう言ってテーブルの上に置かれたのは、まごう事なきカツサンド。どこからどう見てもカツサンド。異世界初のカツサンド。

 ゴクッ──と唾を飲み込む。

 

「ほっ、本当に食べて良いの?」


「良いよ? その為に持って来たの」


「それじゃあ……えっ、遠慮なく」


 僕の顔の半分程もある、大きなカツサンドを手に取り、恐る恐る口に入れると──サクッとしたカツから、ジュワァっと脂が溢れ出し、若干癖のあるソースと混ざり合って、旨味が濁流の如く押し寄せて来る。


「……ハッ! もうなくなった!?」


「むふふっ、凄い食べっぷり! 頑張って作った甲斐があるの……お皿は舐めちゃ駄目だよ?」


「舐めませんよ?」


「それなら、お皿から手を放すの」


 お皿を取られてしまいました。まだソースが付いているから、舐めようとしてたのに……良いなぁ、こんな美味しい物があるなんて。


「ご馳走様でした」


「お粗末さま。トンカツサンドでそこまで喜ぶなんて、お米を前にしたパパみたいなの」


「……米もあるのっ!?」


「パパの領地で育ててるよ。まだ外に出せる程の量はないから、持って来てないの」


 領地で育てている? その流っていう異世界人は、自分の領地を持っているって事? 他大陸の権力者? 魔神で領主で精霊のパパって、暴力と権力のダブルコンボだよね。


「円堂さんやアンジィ、カリアゲや凛宮司さんが知ったら、発狂するだろうなぁ……米」


 コンコンッ──『ミユン様、儂だ』


「あっ、ダブレス大臣が来た。入って良いの」


 ダブレス大臣って確か、大国ノブストンの古参の大臣で、相当な権力者だって話だよね。


「失礼する……儂に用があるとの事だが、なんですかな? こう見えて忙しい身なのだが」


「ミユンは呼んだだけっ。用があるのは、そっちの女の子だよ?」


 ダブレス大臣のギョロっとした目が、僕の方を向いて来た。デカい蛙みたいなキモさだ。


「お初にお目にかかります。レッツァマーダ魔導国にて、代表補佐をしております、古奈月ささらと申します」


「ほぅ、レッツァマーダの者であったか。使いの者を出そうと思っておったのだが、まさかそちらから来てくれるとはな」


「使いの者を? 一体何の話ですか?」


 ノブストンがレッツァマーダに使いを出す? そんな事は今までなかったし、面倒事の臭いがするんだけど。


「少し前にはなるが、女帝、エルララルラ・ポーノグリトス・ノブストンが、崩御なされた。その為、貴国にて保護されておるあのお方に、戻って来て頂きたい」


「……んっ?」


 チラッと背後を振り返り、顔を布で覆われたエルララルラが、すやすやと寝ているのを確認して、再度ダブレス大臣の顔を見る。


「崩御って、死んだって事ですよね?」


「うむ。正確には、そこに居られるミユン様の主人、流殿に討たれたのだ。あのまま放置しておったら、国が滅んでいたやも知れん」


「んんっ?」


 地の精霊であるミユンを見ると、『ミユンは関係ないの』と言って来たので、どうやらこの件には関与していないようだ。

 女帝エルララルラは、死んだ。

 しかし実際には、生きている。

 円堂さんの任務は、成功していた。エルララルラは暴走して、あとは時間の問題だった。それを止めたのが──流という異世界人。

 結果として、生きていたエルララルラに、円堂さんが襲われて、こんな事態になった訳だ。


「っ……(元凶発見しちゃったよぉっ)」


 要は、公には死んだ事になっている。どうりでこの国の人達が、穏やかに暮らしている訳だよ。これが理由の一つだったのか。


「どうされたのですかな? そういえば、なぜ貴女は、ノブストンに来られたのか?」


「えっとですねぇ……むぅぅぅっ」


 この大臣は気付いていない。今大臣が発した言葉によって、レッツァマーダ魔導国が敵になる可能性に、気付いていないのだ。

 同盟国への不義理を、口にしたのだから。

 女帝が死んだと、偽ったのだから。

 "もち様を寄越せ"と、言って来たのだから。


「古奈月殿?」


「どうしたの?」


 ゆっくりと席を立ち、後ろに寝かせていた荷物の布を外して、ドンッとテーブルの上に置くと、「んなっ!?」とダブレス大臣の口から、驚きの声が上がった。


「こちらっ、ただのエルララルラになります。顔をしっかりと確認して貰ったら、もう一度最初から、お話しましょうか?」


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